おどろおどろしい展開が続いていく中で、唯一我々視聴者の心を和らげてくれるのが渓徳だった。渓徳は家族が狩られていく事件に結局最終回まで直接的に関与しなかった。伊藤淳史さん演じる巣藤俊介の元教え子として、俊介の周りにひょこっと現れて、さり気なく助言をしたり、俊介を元気付けたりして帰っていく。彼も家族に対する悩みを抱えていながらも、それは他の登場人物たちのように深い闇として表現されるのでなく、とても軽やかに画面を横切っていった。
北山さん本人はこの役を「正直、アイドルである僕が演じる必要もまったくない役なんですよ」と雑誌withのインタビューで語っている。じゃぁ自分には何を求められているのか、北山さんの中で出した答えは「箸休め」だった。シリアスなドラマの中で視聴者に突っ込んでもらえるような役を目指し、撮影はアドリブだらけで挑んだという。北山さんの出演シーンは全10話分合わせても30分程度だ。けれどもある意味で潤滑油としての働きも見せた渓徳の出演シーンを、ジャニヲタとして振り返っておきたいと思う。
1話
- 渓徳の台詞一言目は「先生、おはざーっす!」チャラい。北山さんが「キスマイBUSAIKU!?」で培ってきたチャラいキャラがそのまま反映されている。一瞬にしてこの生徒が在校時に優秀な生徒ではなかったことまで想像出来る。
- 「先生、これ、良いDVD見つけたんで」と先生に紙袋を渡す渓徳。中身は裏DVD。先生と渓徳の間で秘密が共有されていることを表し、この二人の親密な関係性が読み取れる。
- 「そうだ、俺んち、ベイビー生まれたんすよ」とiPhoneの待ち受け画面を嬉しそうに差し出す渓徳。この「ベイビー」の発音が何とも鼻につく。チャラい。
- 「俺の情報網舐めないで下さいよ」電気屋のくせに何故か人脈がすごい渓徳。この人脈が9話で大いに発揮されることになるとはこの時はまだ知る由もない。
- 「IT革命ガチヤバっすね」その割にやっぱり言うことはチャラい。
- 「私、産むからァアアアッ…!」先生の彼女の真似をする渓徳ベリーキュート。
- 「でもこのご時世、こいつも俺の子かって言われたら、分かんないですけどね」自分の子が自分の遺伝子を継いでない可能性については何故か冷静で、そこが渓徳を単純なヤンキー馬鹿に落とし込むことが出来ない部分。
- と思いきや、俊介の子供の名前に「A吉」を提案し「超クールじゃないっすか」とドヤ顔になるので、やっぱり訂正する。渓徳はお馬鹿ちゃんだ。
2話
3話
4話
- 入院している俊介の病院にお見舞いに来る渓徳。そこにもポータブルDVDプレイヤーとまたしても裏DVDを持って来る渓徳。渓徳と裏DVDはいつだってセットでやって来る。
- 「先生襲った奴、LINE回して探したんですけど、見つからなかったっす、すいません」渓徳の正義感ラブ。
- 「私、産むからァアアアッ…!」俊介に彼女を思い出させる為に、何度でも本気の物真似をしてみせる渓徳。チャーミング。
- 渓徳に色目を使うナース登場。俊介に可愛いねと言われ「だしょーっ、まぁ俺も色んな可能性があったって訳っすよ」と答える渓徳。嫁に対する愛情どうした。
- 「でもベイビーが出来たら、自分がどうであれ、腹括って親っつーキャラを受け止めなきゃいけないんすよ。命ってやっぱひとつの人生じゃないっすか、受け止める側も半端なことする訳にはいかねぇっす」こういう台詞が馬鹿なのに何処か達観したものの見方をする渓徳のキャラクターをよく表してる。
- 事件に巻き込まれ記憶喪失になった俊介に対して説教する渓徳「厳しい現実から逃げて、楽してるだけっすからね」ジャニヲタ何も言えねえ。
5話
- スーパーの前で拾った氷崎家の父と母を車で送り届ける優しい渓徳。
- 主婦にも休日が必要だと渓徳に子守りを任せる嫁、出てこい。渓徳は電気屋の制服来てるじゃないか。しかし嫁が渓徳に子守を任せたおかげで、初登場子供を抱く渓徳。
- 俊介を帰してしまった遊子に対して、「あの女のこと知っちゃったんですかぁ~?」と楽しそうな渓徳だが、遊子に「うるさい」とぴしゃりと跳ね除けられ、意外と素直に黙り込む渓徳。
- 「女と男は何でもありなのよ」と略奪愛を唆す遊子母に「良い女っすねぇ~、俺っち今バイブス上がっちゃったっす」の渓徳。チャラい。
6話
- 俊介が遊子の家を訪ねて来たら中から子を抱く渓徳登場。
- 「あ~こいつ俊介じゃね?」渓徳の嫁初登場。「マジイメージ通り、ウケるんですけどぉ~!」渓徳の嫁、とても渓徳の嫁とは認めがたい非常識人で落ち込む。
- 休日に家族でお出かけし、荷物を持たされる渓徳。嫁の尻に敷かれている。
- とうもろこし食べるもぐもぐ渓徳、可愛い。
- 子供のミルクを作ってあげる渓徳。それを被ってしまった俊介の髪を洗ってあげる渓徳。渓徳の半分は優しさで出来ている。
7話
- 俊介のインターホンに変顔で映る渓徳。
- 自宅謹慎になった俊介のところにお酒を持って遊びに来る渓徳。今日は裏DVDを持ってない。
- ここで渓徳先生による「家族狩り」史上最大の名言誕生「男はね馬鹿な生き物なんすよ。いくら考えたって探ったって悶々とするだけで情けない生き物なんすよ。だから女には正面からぶつかるしかないんです。ぶつかって正面から相手のこと受け止めて全部信じる。くるっとまるっとぷりっと、全部信じる。男にはそうするしかないんすよ。」
- 月に向かって「ワァーーーーッ」と泣き叫ぶ渓徳と俊介。こいつら、可愛いな。
8話
- 俊介から依頼の電話を受けて、何故か水道管の修理をしている渓徳。いよいよ渓徳の職業不明である。
- 「先生、遊子さんと仲直りしたんですね、良かった良かった」とまるで小学生の様に俊介と遊子の仲をからかう渓徳。
9話
- 俊介に対して「キモイ」と発言した嫁を「すいません、酔っぱらいで」と謝る渓徳。やっぱり嫁が好かん。
- 「先生、動揺してるぅ~~~!!!」の顔が超楽しそうな渓徳。
- 「氷崎さんがいなくなったんだ、探してくれ」という俊介からの電話に対して「氷崎さんって、民子さん?清太郎さん?」と態とらしく聞き返し俊介から「遊子さんだよ!」と下の名前を引き出す渓徳。ここから俊介が遊子のことを下の名前で呼ばないことに対してやけに厳しくなっていく渓徳。
10話
- 10話で本編の何もかもが落ち着いた後に、最後は氷崎家にお邪魔するシーンで登場する渓徳。買い物袋を提げた渓徳はすぐに居間でくつろごうとするも俊介に台所に追いやられる。
- 「孫って、先生頑張んなきゃっすね」「先生、肉食って孫いっちゃいますか」最後まで俊介を冷やかして遊ぶ渓徳。
以上、鈴木渓徳の活躍ダイジェストでした。どんなに本編が暗くて痛々しくても渓徳が登場するシーンにはいつも絶えず笑いがあった。渓徳が画面に映ると安心し、締め付けられた胸が一瞬にして緩んでいく。重々しいテーマを取り上げる社会派ドラマの中で唯一直接的にその事件に関わらない渓徳は視聴者の希望であり、それは痛ましい事件が起こる今日において希望を届け続けるアイドルの役割と似ていた。北山さんは「アイドルである自分が演じる必要がない役」と自己分析していたが、渓徳はアイドルである北山さんこそが演じるべき役割だったのではないかと私は感じた。3ヶ月間、お疲れ様でした。