ジャニヲタ人生初の京セラドーム“ビスタ席”体験記

それは京セラドーム公演の3日前。デジタルチケットのQRコードで入口を確認した同行者から、一本の連絡が入った。「ビスタ席での当選でした」。えっ。遂に、遂に、噂のビスタ席来ちゃいました?!ジャニヲタ人生17年、現場に通い始めて10年、今まで一度も当たったことのない、京セラドームビスタ席。遂に来ちゃいました?!(両手を広げて)ジャニヲタ人生で新しいことに出会う機会もかなり少なくなって来ていたけれど、「ジャニヲタ人生初体験」こんなところにまだ残ってたわーー!!ということで、ビスタ席体験してきた。せっかくなのでその記録をここに残しておこうと思う。いつかみなさまもビスタ席が当たったその時に参考にして頂ければ。

まず私が一番にしたことは「双眼鏡の新調」だった。これまで使用していた双眼鏡は、2013年NEWSの秩父宮公演で雨に降られて使えなくなってしまった翌日に、4500円くらいで急遽調達した10倍の双眼鏡だった。当時今後のことを考えてもう少し値の張る良い双眼鏡を買えば良かったのだが、翌日の公演に間に合わせるため時間もお金もかける余裕もなく買ったものでこの5年間を過ごしてきた。とは言え、ドームの天井席が当たったとしても、10倍でそれとなく見え満足していたので、いつか時が来たら新調しようと思っていた。そして、今回その時が来たのである。私が戦う相手は今回「ビスタ席」だ。スタンド上段よりも更に上、視力の悪い私では下から見ても人間がいることを認識できない、あの席だ。

仕事終わりに近くの家電量販店に走り、双眼鏡コーナーで小一時間悩んだ。コンサート・スポーツ観戦用というコーナーに置かれた双眼鏡はほとんどが8倍か10倍で、それであれば今の双眼鏡で十分間に合ってしまうので新調する意味が見出せない。何せ相手は「ビスタ席」だ。きっともっと見えないといけないはず。そんな私の目に飛び込んできたのは、8倍~24倍まで自由自在に操ることが出来るというNikonのこちらの商品。

24倍ってヤバくない?!と思いながらその場で双眼鏡を覗いて見るも、店内ではその凄さが全く分からない。Amazonのレビューをザっと確認してそれなりに評価されていたので、購入を決意した。ちなみにもう1万円くらい上乗せしたら防振双眼鏡に手を出せたのだが、如何せん私、コンサート中手振れにストレスをほとんど感じたことがない。一度友人の防振双眼鏡を借りて見せてもらったこともあるが、これは自分が1万円というお金を乗せてまで解消する程のストレスではないと判断したため、防振にまでは手を伸ばさなかった。きっとこれからも手を伸ばさないと思う。集中すると三脚張りの固定力を発揮する自分の逞しい腕に今後も期待。新しい武器を手に入れた私は、もうビスタ席ドンと来いという気分だった。

そもそも当選した席がビスタ席だということが判明した時、「マジかーーー!!」という反応になると思うのだが、「マジかーーー!!(歓喜)」よりも「マジかーーー!!(残念)」になる人の方が多いと思う。私も例に倣って「マジかーーー!!(残念)」という感情になりかけたが、ちょっと立ち止まって考えてみた。そもそも私はコンサート中、何を重視していて何がストレスに成り得るか。コンサートで重視しているものが「距離」である場合、できるだけ近くアイドルを見たいという気持ちから、ビスタ席に対して「マジかーーー!!(残念)」となるのは正解である。しかし近年の私は「距離」を重視しているかと言われると、そうでもない。どんな時にストレスを感じるかと言うと、自担である北山宏光さんが見えなくなってしまう時である。それはスタンド席の前の人の揺れる頭で隠れてしまった時だったり、アリーナ席で遠くのステージに行ってしまって姿を捉えられない時である。私が重視しているのは「距離」ではなく「時間」だ。一秒でも多く北山宏光さんを目に焼き付けたい。そう思いながら普段双眼鏡を覗き込んでいる。そんな私がビスタ席に対して抱く感情はもしかして「マジかーーー!!(残念)」ではないのかもしれない、と行く前に気づいた。


当日、京セラドーム2階にあるビスタ席専用ロビーに私たちはいた。係員より「飲み物を買うところはない」「一度出たら再入場できない」等の簡単な注意事項の説明を受けて、ガラス張りのロビーに進んだ。ビスタ席だからと言って、本人確認等は特にない。ガラスの外には、これからビスタ席以外の指定席に入るであろう人たちが、各々の入場口に向かっており、まるで私たちのことを動物園の檻の中を覗くように見ている。ガラスの中にいる私たちがビスタ席だと勘付き哀れみの目を向ける人、一般客なのにVIP待遇を受けていることを不思議そうに見ている人、みんなそれぞれの好奇な目でこちらを見ている(気がした)。そう、サラッと書いたが、基本的に十分過ぎる程のスタッフが配置されていて、私たちは京セラドームの中では一番のVIP待遇を受けていた。丁寧な言葉でエレベーターへ誘導され、8階まで一気に昇れるエレベーターに乗り込む。一緒に入った玉森担が「めちゃくちゃVIP待遇やん~~♡♡」と自分たちの境遇を肯定するポジティブな言葉を発したら、一緒に乗り込んでいたお姉さんが「上から下々の人間を見下ろしましょう!!」と力強く話しかけてくれて、「楽しみましょうね!!」とお互いを鼓舞した。何だこの一体感。ビスタ席だというだけで異常に芽生える仲間意識。これをビスタハイと呼んでいきたい。

エレベーターで昇ると、またもや何人ものスタッフが待ち構えており、「各部屋は電気が消えている」「部屋にあるものには触らない」「部屋も含め写真撮影は一切禁止」等の注意事項を受けた。そこからはホテルのような廊下を抜けてそれぞれの個室へ。部屋の中にはテレビやソファ等のくつろげるスペースがあり、その先に私たちが座るべき座席があった。席に着いた瞬間の一言目の感想としては「思っていたより見やすそう」だった。距離は遠いかもしれないが、前に私たちとアイドルを遮るものは手摺りしかなく、これは私にとってはストレスフリーな環境ではと思った。椅子もふかふかで隣の人と共有できる十分な広さの肘掛けもある。隣の人と肩が触れる心配のない広いスペースがそこにあって、ビスタに対する気持ちが高まってきた。スタンド上段の天井席のことを「お星さま席」と言ったりするが、そのお星さまよりも上に君臨する私たちはもはや神なのでは、これは「神席」なのでは。エレベーターで会ったお姉さんの「下々の人間」発言を思い出し、アリーナ席を眺めてみたけれど、私たちはアリーナ席よりも数の少ない席を引き当てているのである。ラッキーなのでは。と、自分たちの境遇を肯定する才能だけが磨かれていった。

いざ公演が始まってみると、スタンディングは禁止されていないにも関わらず、ビスタ席のほとんどのお客さんが着席したまま見ていた。立ってしまうと高所恐怖症の方にとってはかなり恐怖心を煽られる高さになることと、前のめりになる内に下に物を落としたりしないか心配で、私も着席した状態で見ることにした。メインステに彼らが登場した時、新調してきた24倍の双眼鏡は、北山宏光さんの全体像を捉え明るくはっきりと映し出してくれていて、これは本当に良い買い物をしたと確信した。ビスタ席でこれだけ綺麗に見えていたら、普通のスタンド席ならきっともっと見えるはず。しかも今、私と北山宏光さんを遮るものは、手摺りのみ。最高。最高。前の人の頭の揺れに悩まされることもなく、何処に行ったか分からなくなることもなく、ずっとずっと北山宏光さんの姿が見えている。最高。最高。バクステに来てパフォーマンスをする時は、今までに見たことのない角度で北山宏光さんの頭が見えたが、上から見る北山宏光さんもまた麗しかった。

ビスタ席の特権として、角度的に他の席からは見えないものが見えてしまうというのがあり、『Break The Chains』という曲で本人たちが登場したステージの下でスタッフ3人が真剣にそのパフォーマンスを最後まで見届けている姿や、フロートの床に「↑」という矢印を確認して何だろうと思っていたら、フロートから降りる時の出口の目印だった等、まぁそれが見えたところで何なんだという話ではあるが、普段見えてないものが見えてる!という興奮もあった。

あとは今後の当落対策としてみなさんにお伝えできることがあるとすれば、ビスタ席の多くは3席ごとで用意されていて(もちろんそれ以上の連席もある)、私が確認した限りではその3席に座る人たちは3連ばかりだった。2席と1席に分かれて座ることはなかった。つまり3連で申し込むとビスタ席が当選する確率が上がってしまうという一説がここに出来上がる。あくまで私が確認した限りでの話にはなるがご参考までに。

トイレはそのフロアに用意されていて、他のフロアに比べると混んでなくてスムーズに入れる。しかし終演後に行こうとすると列ができる程混み合う。また規制退場は無いけれども、エレベーターで順番に降りていくため、エレベーター待ちの時間が出来る。けれどもスタッフが要領よく捌いてくれるので、それも何十分も待たされることなく降りることが出来る。


そんなこんなで、コンサートを見る時何を重視しているか、ということを考えさせられる良いきっかけだった。もちろん「距離」を求める人たちにビスタ席は全然向いてない。アイドルとのコミュニケーションをはかりに行ってる人たちや、より近くで生のアイドルに触れたいと考えている人には、ビスタはきっと大外れくじ。こちらは双眼鏡を使ったとしても、アイドル側は双眼鏡を使えないので、双方のコミュニケーションを求めるのは難易度が高い。けれども、「時間」を求める人にとって、「距離」の問題が双眼鏡で解決さえしてしまえば、ビスタ席はより長くストレスなくアイドルを見られるという意味で、快適な席ではないかと思う。もちろん「距離」も「時間」も両方求める人が圧倒的に多いだろうけれども。

また一つジャニヲタ経験値を積むことが出来た。ビスタ席、Thank youじゃん!