アイドルの魅力的なエイジング 『Kis-My-Ft2 LIVE TOUR 2025 MAGFACT』


Kis-My-Ft2がまた最高なライブを更新している。2023-2024年のアリーナツアー、2024年のドームツアーと、Kis-My-Ft2のライブが良いぞという感想は以下の2つの記事で語っていた。

そして2025年はアリーナツアーの開催ということで、初日のららアリーナのライブを観てきたのが、これがまた悔しいくらいに良かった。私は北山宏光さんのファンだったので、推しのいないKis-My-Ft2を追い続けるのかという問いを北山さんが卒業して以降、何度か人に問われた。何をもって「追う」とするかは人それぞれだと思うが、正直なところメディアのグループ活動についてはもう熱心に追えていない。けれども彼らが北山さん卒業直後に行ったライブが良かったし、Kis-My-Ft2を通して知り合った友だちとの関係は続けていきたい、Kis-My-Ft2も北山さんもそれぞれが幸せになって欲しいという想いもあり、ファンクラブは継続していた。10年以上前から追い続けてきたものを、推しがいなくなったからと言って、そんなにきっぱりと離れられる訳もない。とは言え、普段から他のグループのライブや舞台も観にいくことの多い私にとって、Kis-My-Ft2の現場に何公演も時間とお金を注ぎ込むことは現実的ではなくなってきたこともあり、今回のツアーからは1ツアー1公演行けたら良いという考えで申し込みをした。玉森担の友人がもう1公演一緒にどうかと誘ってくれたが、私はきっぱり1公演に割り切る気持ちで申し込んだ。ライブ後に大後悔することになるとは知らずに。

開幕した「MAGFACT」ツアーは、彼らがSTARTO ENTERTAINMENTの中堅アイドルとして、大人の円熟したアイドルとして、その年次に相応しい魅力とセンスを解放したライブだった。去年のツアーからダンサーを導入して、メンバー+ダンサーで行われる群舞を今年も魅力的に魅せていたこと、また『Half Baked』ではゆったりした曲調でダンサーたちと一人一人がしっかりダンスを魅せていたこと、『お疲れ様です!』や二階堂さんの『ニカゲーム』ではバラエティ育ちであるキスマイの強みを活かして会場全体で楽しめる賑やかな企画が盛り込まれていたこと、新しいキスマイを見せながらも過去の人気楽曲をたくさん復活させて会場を沸かせていたこと、そして何と言っても本編最後に行われた『CHEAT』のパフォーマンスが格別に良かった。
youtu.be
世界観はこのYouTubeを見ていただければと思うが、彼らがパリコレモデルのようになってランウェイを歩いていく。その様はただアイドルがモデルに擬態して歩いているという偽物感は感じられず、彼らはその瞬間に海外モデルのような神秘さを纏っていた。呪文のように唱えられる「チート」の言葉に合わせて、ムービングステージの上を丁寧に歩いていく玉森さんと千賀さんの姿が脳裏に焼き付いている。ここはもうライブ会場ではなく、ファッションショーになったのだと錯覚させられる。そして一人ずつランウェイを歩いたかと思えば、モデルがするのと同じように舞台裏へ捌けていく。そうして夢中になっている間に、最後の一人のランウェイが終わり、気がつけばライブの本編の幕が降りているのである。これが、これが、年を重ねたアイドルの所業か。経験を積んだ先にある想像以上の世界を魅せてもらえたことで、私は胸がいっぱいになった。手元のメモには「誰だこれを考えたのは、最高だろうが」と書き込んでいたが、主犯は二階堂高嗣先生なのだろうか。なぜ私は、玉森担でも藤ヶ谷担でも宮田担でも千賀担でも二階堂担でも横尾担でもないのだろうと思ったし、こんな素晴らしいステージを推しが演っていることの喜びはいかほどのものだろうと他担を羨んだりもした。悔しくて嬉しい。北山さんがいなくて悔しいということではなくて、北山さんがいなくなったKis-My-Ft2が素晴らしさを更新していることが悔しくて嬉しい。1公演行けたら良いなんて考えていた自分が悔やまれることが嬉しい。2025年もKis-My-Ft2を見続けたいと思えること、幸せだ。

Kis-My-Ft2と私は大まかに同世代なのだけど、年をとることはアイドルにとって損かと思いきや、年齢や経験を重ねているからこそのパフォーマンスのアップデートが彼らのライブで見られることがとても嬉しい。どうしても若い世代と同じことをやっても上手くいかなかったり、諦めなければいけないことも出てくる中で、逆に年を経たからこそできるようになった表現力や企画力で魅せるエンターテイメントを提供してくれているようで嬉しい。それは同世代の私たちの仕事や生活においても同じことが言えて、若い人と単純な体力や記憶力を比較しても勝てる訳がなく、だけど経験を積んだことで得られた知識や技術で戦うことはできる。アイドルのエイジングは決して悪いものではない、ということをKis-My-Ft2から感じさせてもらえるライブだった。私はまだまだこれから彼らがどんなものを生み出し表現してくれるのか知りたいと思った。でもひとまずは今回のツアーの余韻に浸るべく、サブスク解禁された楽曲たちをセトリ順にまとめたプレイリストを、この夏は回し続けるだろうと思う。