その日私はライブ遠征のために大阪のホテルに泊まっていた。自宅のベッドよりやや固いマットレスだったが、遠征+2公演参戦で体力が限界を迎えていたこともあり熟睡だった。翌朝は早く起きて大阪のモーニングを食べに行こうと思っていたけれど、遮光の効いたカーテンのおかげで朝になっていることに気づかず、毎日保険のようにかけている8時のアラームで飛び起きた。この瞼の重さはきっと顔が浮腫んでいるだろうなと思いながら、寝転んだままスマホを開くと「Perfume 活動休止」の文字が目に入った。あぁ、なにかお知らせがあるというのをXのタイムラインで見ていたけれど、活動休止のことだったのか。そうか、そうなってしまったのか。「コールドスリープ」という聞き慣れない言葉を検索したりしていると、タイムライン上に翌日・翌々日のライブの当日引換券の話をしている人がチラホラいた。公式HPを見に行くと配信もあるし映画館でのディレイビューイングもあるらしい。何かしらの形で最後のライブ姿を見ることはできそうなことに安心し、5年前一緒に東京ドームのライブを観に行った相手にLINEした。
自分が過去にPerfume関連のどの現場に行ったのかブログで検索をかけると4つヒットした。番組観覧2回とライブに2回行っている。しかも5年前の東京ドーム公演は、翌日の千秋楽公演がコロナの影響で直前で中止になったのでよく記憶している。
2008.09.25「Perfumeの気になる子ちゃん」観覧@日本テレビ
2009.01.29「Perfumeの気になる子ちゃん」観覧@日本テレビ
2016.06.04「Perfume 6th Tour 20116 COSMIC EXPLORER」@アスティとくしま
2020.02.25「Perfume 8th Tour 2020 "P Cubed" in Dome」@東京ドーム
そして2015年にはドキュメンタリー映画の感想をブログに記していた。
moarh.hatenablog.jp
この記事の中で私はこのように書いていた。
私は彼女たちと同じ歳である。広島という地で、SPEEDに憧れてダンススクールでレッスンを積み、ユニットを組み、そしてデビューをしていった彼女たちを見ると、まるで自分のパラレルワールドを見ているような気分になる。私も小学生の頃、SPEEDに憧れてダンススクールに通っていた。同世代の女の子であの当時ダンススクールに通っていた人たちのほとんどが、沖縄アクターズスクール出身者への憧れを持っていたと思う。例え私がそれからずっとダンスを続けていたとしても、決してPerfumeと同じ道を歩めなかっただろうけれど、私が選択しなかった道の先にPerfumeのような未来があったのかもしれないと思うとそれだけで幸せな気持ちになれる。自分のパラレルワールドが実像として存在するような気持ちで、いつも彼女たちのことを見てしまう。
この気持ちは今も変わっていない。小学生の頃SPEEDに憧れてダンスを習っていた私の、選択しなかった道の先にある未来だと思ってPerfumeのことを見てきた。女性の歌って踊るアーティストの平均寿命は短い。それは女性のライフイベントに起因する問題もあるだろうし、世間の需要の問題もある。けれども彼女たちは、私が大学生をしていた時も、就職をして社会人になった時も、初めて異動をした時も、東京へ転勤した時も、そして今も、ずっとずっとPerfumeでいてくれたのである。その容姿やコンセプトや真摯さという人間性すらも変わらず、ずっとずっとPerfumeでい続けてくれたのである。私のパラレルワールドはがっかりさせられることも裏切られることもなく、ずっとそこにあり続けてくれた。こんなに嬉しいことはない。

結局、私はフォロワーさんに背中を押されたこともあって、翌日の当日引換券チケットを押さえて東京ドームへ向かっていた。開演5分前からファンのPerfumeを呼ぶ声と拍手の音が会場いっぱいに鳴り響いていて、それは定刻に始まらなかったこともあって実際に開演するまで10分以上続いていた。Perfumeが姿を現すと東京ドームの天井が更に膨らんだのではないかと思うほど熱気が高まった。この景色を目に焼き付けておくんだという5万人の気概を感じた。
Perfumeの曲を聴くと色々な思い出が蘇る。私の周りでPerfumeが好きというのは女友達より男友達の方が圧倒的に多かった。大学時代バイト先の男友達とカラオケで『ポリリズム』を歌ったし、車を運転しながら車内でひたすらPerfumeをかけてくれた男友達もいた。徳島のライブを見に行った時はチケットを譲ってくれた人が同世代の男の人で、帰り道雨に打たれながら駅まで一緒に走って帰った。5年前の東京ドームはコロナが迫り不安もあったが半年以上前から約束していた男友達と心待ちにして行った。そういう青春の欠片みたいな記憶が一気に押し寄せてきて、Perfume好きの男友達に悪い奴はいなかったなと振り返ったりした。
最後の挨拶をする時、あ〜ちゃんがかしゆかとのっちとの出会いを語っていた。スクールのオーディションやレッスンで出てきた楽曲が、宇多田ヒカルの『Automatic』、SPEEDの『Go! Go! Heaven』『White Love』でどれもこれも私もあの頃に憧れて聴いて踊っていた曲ばかりだった。彼女たちの楽曲はそのどれとも雰囲気が異なるけれど、原点にあるものが1988年生まれが小学生の時に憧れていたものの数々であることを再認識できてやっぱり嬉しかった。そして自分の根源にある音楽と自分たちの進む音楽が異なっていても、彼女たちはずっと進み続けてきたんだということを改めて理解した。誰かのマネではない前例のない道を長時間かけて作ってきた強さを実感するほかなかった。
彼女たちは決してこれで最後だという寂しい顔はしていなかった。むしろ絶対にまたステージに立つつもりで、私たちに健康でいるように約束を持ちかけてくれた。パラレルワールドはまだ終わらないのだ。むしろもっともっと彼女たちらしい生き方を見せてくれるのではないかと期待すらしてしまう。センチメンタルな気持ちになるつもりで東京ドームに行ったのに、また人生のどこかで交わることができるとしたら、その時は私も胸を張っていられるようにしておかないとと、どちらかと言うと晴れやかな気持ちになって東京ドームをあとにした。
Perfume行って来ました…!はぁ〜〜まだ言葉にするには自分の中で明確な感情になっていない。悲しいも寂しいも今日の感情には似合わなくて一番近い感情をあてるとしたら「誇らしい」なのかもしれない。自分と同い年のPerfumeが継続してきたことと新しい選択をしたことが。#prfm#ネビュラロマンス後篇 pic.twitter.com/w7BT9Oc1Az
— あやや@垢引っ越しました (@hraom2) September 22, 2025