DVD「Kis-My-Ft2 SNOW DOMEの約束 in TOKYO DOME 2013.11.16」

キスマイファンの幼なじみ*1からキスマイのDVDを借りて見た。まだ本人は忙しくて見てないっていうのに私が先に借りて見た。キスマイについては客観的な視点で何故人は今突然キスマイでジャニヲタに目覚めるのかという記事を以前に書いていたが、自分自身は傍観者としてその現象を観察しているくらいの距離感が丁度よくそれ以上踏み込む気は更々なかった。しかしDVDを見てしまったら後の祭り。た、た、た、楽しい。自分自身がキスマイに骨抜きにされていく過程で感じたものを今回は主観で記録しておきたい。

  • 洗練されたエイベックスサウンドがもたらす高揚感

“キスマイはとにかく曲が良い”ということが彼らのライブを観る上で最もこちらの感性を刺激しているように感じる。デビューから順調にリリースを続けている彼らだが、基本的にあまり楽曲にハズレがない。これだけ日数を詰めたリリースが続くと、リリースすることが目的となって楽曲の質が下がってもおかしくないのに、彼らについている音楽プロデューサーの徹底されたこだわりがあるのか妥協のない楽曲が常に提供されている。原曲そのものの良さもさる事ながら、そこに乗せられるキスマイの歌声もまたその楽曲に付加価値を生み出している。北山さん、藤ヶ谷さん、玉森さんの3人が主にサビまでのパートを担当し、サビは全員で歌う、というのが基本型となっているが、北山さん、藤ヶ谷さんの二人が、男性アイドルにしては珍しく高音域を得意としている。腹式呼吸で声を出すプロ歌手の様な歌唱力があるというよりかは、どちらかと言えばこの二人は「アイドル歌唱」が上手い。女子アイドルの楽曲でもすぐに歌いこなすことが出来そうな魔法の喉を持っている。その上独特の癖やムラもなく、生歌の場合でもCD音源とさほど変わらない歌声を聴かせてくれる安心感がある。歌唱力の善し悪しに気を取られることなく、楽曲をノンストレスで受け入れることが出来るのが、まず彼らのコンサートを観る上で重要な点となっていた様に感じる。

  • 全員がローラースケートを操れる身体能力の高さ

キスマイがローラースケートを履いてパフォーマンスすることがテンプレートになり過ぎて、しかも彼らがローラースケートを履いてパフォーマンスすることを安易にこなしている様に見えるからか、観客側も違和感を持たず当たり前の様に吸収してしまう。けれど足にローラーを付けて移動したりリズムを刻んだりすることの難しさは、一度ローラースケートを履いたことがある人間なら分かる。音楽に合わせて移動するならまだしも彼らはローラースケートを履いたまま坂道を滑り降りたり、ジャンプしながら回転して見せたりと、高い身体能力を持っていないとこなせない数々の技に挑戦している。またローラースケートに限らず、360度自由自在に動き回る板の上で寝転がり、足に一本の紐を施しただけの状態で身体ごと一回転してみたり、一歩間違えば大怪我になり兼ねない技も全員でこなす。このキスマイの全体的な身体能力の高さは、ダンスをする上でも生かされ、彼らに特別「ダンスが得意」というイメージがついていないにせよ、常に振り付けは揃っていてもうそこには敢えて評価する必要がない程度の高い基準が設定されている。歌もダンスも、こちらに突っ込ませる隙を与えない高水準を保ち、それでいて自分たちのレベルの高さを押し付けてこない自然体の姿を彼らは見せてくれる。

  • Luv Sick」で破壊するオープニング

今回のコンサートはコンサートタイトルにもなっている「SNOW DOMEの約束」という両A面シングルのもう一方の楽曲「Luv Sick」からスタートする。重厚で軽快な二面性を持つダンスナンバーであるが、東京ドームのメインステージのセットの上に登場し、振り付けを踊ることはなく立ったまま会場全体を見渡しながら歌う。この楽曲の歌詞に「解放せよ第六感、解放せよ第六感、愛の構造的欠陥に立ち向かう」という呪文の様なフレーズがあるが、5万5千人の大観衆を前にして「解放せよ第六感」と唱えるキスマイの姿はとても神々しく、自分の中にあるのかどうかすら分からないシックスセンスでこれから始まる3時間を感じ取らなければならないという使命感を帯びる。目の前に現れたアイドルから特殊な感性の扉をこじ開けろ、と言われるこのオープニングを私はひどく気に入ってしまった。

  • 「SNOW DOMEの約束」美しいペンライトの演出で閉じるエンディング

本編(アンコール前)の最後を飾ったのはコンサートタイトルの「SNOW DOMEの約束」。そこで繰り広げられたファンのペンライトの海が異様に綺麗だった。グッズとして販売されていた今回のペンライトは白、赤、緑の3色に光る。それまでは思い思いに観客が好きな色を付けて振っていた為、客席の色に統一性はなかったが、この楽曲の時だけ見事にペンライトの色が揃っていた。最近では演者側が色を操作してペンライトの色の移り変わりも演出の一部とすることが出来るシステムが出来ているという話は聞いていたが、それがジャニーズのコンサート、しかも東京ドームで実施されたという話は聞いていなかった。では実際にどうやってこの移り変わっていく色をファンが合わせることが出来たのか、その現場に居合わせなかった人間にとっては不思議極まりない現象だったため、調べてみたところ、前のステージで踊るJr.やセットに付いてる電飾の色に合わせて観客がペンライトを切り替えていたということだった。演者側が何の指示も出していないのに、一斉に色が切り替わっていく様は魔法の様でとても綺麗だった。口に出してお願いしなくても、一体感を作り上げる方法があるのだと、演出の巧さに唸ってしまった。

  • 青年と少年の狭間を行き来する北山宏光さん

デビュー当時、これまでのジャニーズのデビュー年齢の最年長記録を更新した北山さんだが、彼の周りだけ時間が逆戻りしているのではないかという程、時が経てば経つ程若返っている様に感じる。今年29歳になり来年には三十路という大台に乗っかることがまるで嘘の様に、少年の儚さが詰まっている。背丈はメンバーの中で一番小柄ながらその分ダンスは誰よりも大きく、曲の要所要所でカメラに抜かれた時の表情のレパートリーがとても多い。睨みつける様な鋭い眼差しを見せたかと思えば、にっこりと悪戯っ子の様な笑顔を向けることもあり、表現力の高さに圧倒される。童顔を武器に少年性を開放したかと思えば、最後の挨拶ではとても落ち着いた大人の喋りを展開し、先輩中居正広さんから学んだ年長者としてのトークのバランス感覚も抜群に良い。安心と信頼の最年長である。

キスマイに明確なコンセプトがあるかどうかは分からないが、もしコンセプトがあるとすればそのイメージを最も背負っているのは藤ヶ谷さんではないかと思う。爽やかな好青年という印象も勿論控えているが、カリスマ性を帯びた風貌で俺様な視線をくれるのは藤ヶ谷さんの得意技である。彼がキスマイの顔として世間に与えているイメージは大きい。藤ヶ谷さんはソロ曲が毎度凝っていて、徹底したスタイリッシュさで藤ヶ谷ワールドを展開している。今回のソロ楽曲も衣装が凝っていた。タキシードの様なフォーマルな衣装を着こなし腰から下には花嫁のウェディングベールが足元まで伸びている。藤ヶ谷さんが踊る度にそのベールが揺れ、足に絡みついたり引き離したりして舞っている様は、衣装によって男女の関係性を語っているようで、そのアイディアセンスに感動してしまった。

  • キスマイの鋭さを可愛さで中和する玉森裕太さん

デビュー前まではキスマイの前列という器ではなかった玉森さんが、デビューを機にフロントに置かれそのポジションで今ではキスマイの入口として一番機能しているのではないかと思えるので、アイドルのポジション配置は本当に運命を左右するなと思う。北山さんと藤ヶ谷さんは、自分に付加価値を付ける魅せる能力に長けているのに対して、玉森さんはそもそもの素材で勝負出来る生まれ持った才能がある。二人が鋭い棘を持った薔薇だとすれば、玉森さんはその横で柔らかく微笑んでいるチューリップの様で、二人とは異なる性質の主役となっている。ジャニーズは背が低いと言われる中で、玉森さんは高身長でありながら仔犬の様な愛らしさも備えていて、汗びっしょりになりながら会場を駆け抜けている姿を見ると、玉森さんに母性を刺激されているファンも多いのではないかと思う。

キスマイの分かりやすい組み分けは、これまで誰も突っ込むことが出来ない触れられない事項とされていたが、昨年「舞祭組」として注目を浴びることになった。先輩中居正広さんの優しさから持ち上がった企画で、“後ろの”4人が一躍人気者となったことは記憶に新しい。年末のカウントダウンコンサートではこの舞祭組の楽曲が一番の盛り上がりを見せた。元々のダンス能力の高さと平均値をクリアした歌唱力を持った万能とも思える千賀健永さん、ヲタクであることを隠すことなくキャラクターとして確立している宮田俊哉さん、グイグイと前に出ることが出来て愛嬌のある二階堂高嗣さん、歌もダンスも劣等生でありながら空気を和ませることが出来る横尾渉さん、個性溢れる4人を掬い上げた「舞祭組」というプロジェクトの巧さにもまた唸るしかなかったので、彼らがこれを機に次どう開花していくのかも楽しみだ。


特別に誰かひとりが私の好みのタイプだ、という訳ではけしてない。だからこそこれまで傍観者として見て来た訳だが、誰かひとりに入れ込まなくてもグループ全体またそこに仕掛けられたプロデュースの技を含めて面白いと思えるのがキスマイである。現にたった1枚3時間弱のDVDを見て4000字以上の文字を並べてしまったことで、キスマイが誰かの語られる対象として巧妙に機能していることを実感した。ここ数ヶ月で元々ジャニーズにさほど興味がなかったけれど、キスマイにハマったという報告を友人何人かから受けた。リア充の巣窟と思っていたフェイスブックで躊躇なくキスマイの話を日常会話の一部として書き連ねている女子がいる。キスマイが好きだということを公開することが、とてもカジュアルに行われていてびっくりする。我々ジャニヲタが気を遣いながら日常会話を繰り広げている横で、キスマイは人目を気にせず好きだと主張してもよい対象とされている現象を何度か目撃してきた。その度にまたキスマイの面白さが深くなっていく気がする。ファンの裾野をどんどん拡大していくキスマイのこれからをまた私も楽しく追っていきたい。