『NEWS LIVE TOUR 2022 音楽』(※この記事はネタバレを含みます)

先週の土曜日、私は埼玉にいた。きっかけは大学時代からの友人である加藤担からの「9/11、NEWS行かない?」だった。古くからこのブログや私のTwitterを見てくださっている方はご存知の通り、私は元NEWS担である。元手越担として認識されている方が多いと思うが、正確に言うと2003年に草野担としてNEWS担をスタートさせ、かくかくしかじかで2011年に手越担になり、その後別のグループの担当になったことで、NEWSから徐々に距離が離れていったという経緯がある。別に私の経歴の話はどうでも良いのだが、ちょっと距離を置いている間に、NEWSはまた形を変えることになってしまい、何となくまた遠くなった気がしていた。私自身もコロナを経てジャニーズへの熱量が弱まっていたというのもある。

そんな情弱オタ化していた私に「NEWS行かない?」と声をかけてくれた加藤担の勇気に感謝。「久々に行ってみようかな」と言いながら誘いを受けた当時の私は仕事が忙しくてコンサートのための予習も十分に出来ておらず、加藤担が貸してくれたCDも前日まで聴くことができず、埼玉スーパーアリーナまでの電車の中で初めて聴きだす(もちろん半分も聴けない)程の余裕の無さだった。加藤担が「ちなみに夜公演のチケットもあるけど、どう?」と事前に声かけてくれたのだが、「1公演で良いかな」と呑気に返していた。(後にめちゃくちゃ後悔することも知らずに)けれど埼玉スーパーアリーナまでの電車の中で聴いたアルバム『音楽』、あれ、これ良いアルバムだな…と率直に思ったので、加藤担と合流するや否やその感想を伝えていた。

“NEWSが3人になった”という事実は、私にも多少なりとも衝撃的な出来事として届いていたけれど、もう外野になってしまった自分が言及できることはないと思ってこれまでも言及して来なかった。どうしてもこれまでの歴史も相まって悲観的な目を向けられることの方が多いだろうけど、そういう歴史的背景を敢えて除外してもっとニュートラルに3人を見たいと思った。何にも知らないことには残念ながら出来ないけれど、わざと文脈を読まないことはできると思った。

それが、見事に、今回の『音楽』はそういう文脈を必要としないライブとして成り立っていた。アイドルが『音楽』というタイトルを掲げてライブをするなんて、プロの音楽家もいる世界で自らハードルを上げに行く行為ではないかと思ったが、その自ら上げたハードルを綺麗に飛び越えていくライブだった。生バンドの演奏は音楽のリアリティを私たちに届け、そこに乗せるNEWSの歌声はけしてその演奏に負けていなかった。歌の上手い増田さんが生バンドの演奏に声を乗せることは容易に想像がついたが、加藤さんと小山さんはどうだろうと思っていた。しかし二人ともそんな心配をよそに堂々と歌いきっていた。時折歌声を出すのが苦しそうな局面もあるのだが、全員が真剣でかつ気持ちよさそうなのである。それを見て、私たちも気持ちよくなっている。アルバムを1周聴いてこなかった私は、もちろん初めて聴く曲もあったのだが、どれもこれも耳に優しくて楽しい。

またライブの演出も一曲一曲が丁寧で細やか。ファンが持つライトは自動制御されていて、会場を真っ暗にすることもできれば、ピカピカと光らせることもできる。静寂を作り出したかと思えばパレードのような煌びやかさを作り出すことも出来て、ただ生バンドでしっとりしているだけではない。NEWSはロックバンドのボーカルになったかと思えば、バラードを聴かせる歌手になったり、歌って踊る正真正銘のアイドルになったり、カジュアルなお兄さんになったり。でもそのどれもに唐突感は無く全てがこれから20年目に突入するベテランアイドルだからこそ成せる業でチープじゃない。デビュー10年を過ぎるとどのグループもこれまでのフレッシュさだけではライブが成立しなくなることを目の当たりにして、他グループとの差別化をしていかないといけない。20周年の一歩手前に、「音楽」をテーマに選んだのはとてもNEWSらしく、改めて3人の優等生らしさみたいなものを感じた。

ブログ記事のタイトルに「※ネタバレを含みます」と入れておいて、全然曲名とか出さないじゃん、と思われているかもしれないが、どの曲が、この流れが、というよりもこのライブの全体の雰囲気が私は好きだったのだなぁと書きながら思った。終盤で彼らは『weeeek』を歌う。『weeeek』には「大人になるってどういう事?外面よくして35歳を過ぎた頃オレたちどんな顔?かっこいい大人になれてるの?」という歌詞があるが、最年少の加藤さんが今年35歳になり、全員があの歌詞の35歳を超えた大人になったのである。それを本人たちも感慨深いと言っていたが、きっと15年前この歌詞を見たときには想像もつかなかったであろう酸いも甘いも経験して成熟した大人になったのではないかと思った。そして我々も昔は『weeeek』で「飛べ―!」と煽られて元気よくジャンプしていたが、今はミリ単位の屈伸程度で限界なのは、大人になってしまった証拠だ。(カムバック体力)

埼玉スーパーアリーナの公演が終わったあと、夜公演に向かう加藤担に手を振り、帰りの電車の中で聴けてなかったアルバムの残りを聴きながら帰った。終わった直後から「これはいいぞ!」と思っていた訳ではなく、実はあとからじわじわと「このライブ、もしかしてめちゃめちゃ良いのでは…?」と思い始めた。行く前は「1公演で十分かな」とか言っていたくせに。そんなこと、見る前に言うもんじゃない。今から見に行く公演がとっても素晴らしいものかもしれない可能性をすっかり無きものにして決断を下すもんじゃない。オタク何十年目にしてもまだ正しい選択ができないことはある。

埼玉から6日後、私は加藤担と名古屋にいた。我ながらハイスピードでのおかわりだった。そして名古屋公演が終わった直後の私の一言「このライブ、無限におかわりできる」。こわい。もうここまで来たら自分の欲の深さがこわい。そして今日、3週間後の静岡のチケットも手に入れてしまった。もうこれを最後のおかわりにしたい。

人生は予測不可能なことが起こったときが一番わくわくする。数ヶ月前までもう今後私はNEWSのライブに行くことは無いんだろうなと思っていたのに、繰り返し同じ公演を見に行く対象にまたNEWSが入り込んで来るとは。今日は人生何度目か分からないNEWSのファンクラブに入会した。ご無沙汰しております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。