良い曲歌ってるなぁ、ジャニーズWEST。昨年夏頃シングル『証拠』リリースのタイミングで、タイムラインに何度か広告として動画があがって来ていたときに感じていた。メッセージ性が強く、映像も何だかエモい。良曲の匂いがするものの、その再生ボタンの先には強烈な吸引力がありそうで、夏の私は見て見ない振りをしていた。その後も何度か歌っている姿を見かけたけれど、遂に年越しのジャニーズカウントダウンで正面衝突してしまい、やっぱり良い曲だなと体感し、そのままネットでCDをポチった。衝動でCDを買うのが久々で、こういう時にジャニーズが音楽配信に乗り出していないことを呪う。私はたった今、この曲を良いと思った瞬間に、繰り返し曲を聴きたいのに、届くのは数日後だ。
ジャニーズWESTのことは、デビュー直後にCDを買ったりDVDを買ったりライブに行ったりして、注目して見ていた時期がある。このブログにも当時の感想を書いた記事がいくつかある。最後に書いた記事は2015年だったので約5年振りくらいに記事を書いている。当時のジャニーズWESTに対するイメージは、まだまだ関西出身であることをアピールしないといけないフェーズだったために、楽曲も明るくてポップなものが多く、元気で面白くて楽しい、という印象だった。それがいつの間に「証拠」のような力強くてメッセージ性のある楽曲を背負えるようになったのか。「証拠」を初めて聴いたときNEWSの「フルスイング」に似ていると思った。NEWSの「フルスイング」は彼らのグループとしての物語とリンクしているからこそのエモさがあったが、ジャニーズWESTの「証拠」には楽曲の裏側にそういった物語性を感じて惹かれている訳ではない。もしかしたらグループの物語とリンクさせている人もいるかもしれないが、私はただただこの楽曲を歌い上げるジャニーズWESTに率直にパワーを感じてしまったのだった。
『証拠』を購入したことをツイートすると、瞬く間にフォロワーさんや周りのジャニーズWESTファンの友人たちから、あらゆる媒体を勧められ、今日有給を使って一気に見た。
『ジャニーズ WEST LIVE TOUR 2019 WESTV!』、『証拠』(初回盤B)、『週刊うまくいく曜日』(初回盤A)(初回盤B)、これらを見て、重岡大毅さんの主人公性がすべてだと思った。例えるならば、5年前私が見ていたジャニーズWESTは“全員キャラが立っているギャグ漫画”だったが、今のジャニーズWESTは“重岡大毅さん主人公の冒険少年漫画”になっている。重岡大毅さんはルフィだ。重岡さんがセンターにいることが多いけれど、センターにいない時でも彼の言動にはパワーがあって、それが他のメンバーやスタッフや客席に伝動していく場面を何度も見た。正直、何を言い出すのか何をし始めるのか読めないところがあるけれど、それすらも究極に自分に視線を集める天性の技。それでいてハートが熱くて、ライブの終盤には大声で今感じていることを叫ぶ。たった今、重岡さんの心から生み出されたばかりの感情を、ありのままの言葉で伝える。アイドルだからと言って変に飾ったりありきたりの言葉で喋ろうとするのではなく、本当にたった今重岡さんが感じたばかりの感情を言葉にしてくれているのだと受け取ることができる。圧倒的なライブ感がある。
「間違っちゃいない」という重岡さんが作詞作曲した楽曲がある。それを披露する際に、重岡さんは客席に向かってこんなことを喋る。
今から歌う曲は、ぶっちゃけすごい落ち込んでるときに書いた曲なんですけど、まあ誰しもそんなことあるじゃないですか。あるよね?落ち込むときあるよね?普段楽しいことは良いことやけど、たまにほら、悔しくて寂しくてたまらんときとか、みんなと一緒におんねんけど上手く馴染まれへんくて上手く笑えないみたいな。家族とか友達とか大好きな人いるよ?いるけど、なんか一人ぼっちに感じてしまうときとか。そういうのって誰にでもあると思うんですよ。そんなときにこの曲があればいいなと思って、僕らこの曲を歌ってます。届けばいいなと思って歌ってます。
(『ジャニーズ WEST LIVE TOUR 2019 WESTV!』より)
文字起こしするときにはカットしたけれど、重岡さんはこれを喋るときに「あのー」とか「なんか」とか「えとー」を繰り返し使っている。このDVDに収録されている公演は初回公演ではない。通常ならば、何度も何度も繰り返し話していて台詞的に覚えていてもおかしくない内容だが、重岡さんの口からはまるで今考えて喋っているかのように言葉が出てくる。拙いその話し方に人は耳を傾けたくなる。本心で語っているのだろうと信じたくなる。これが重岡さんの主人公力だ。正直、アイドルがファンを元気づけるために曲を作るなんて機会は結構ある。アイドルとはそうあるべき、と感じてそうしているアイドルもいると思う。しかし重岡さんからは、アイドルだからそうしているのではなく、例え重岡さんがアイドルという立ち位置にいなくても、こうやって何かしらの形にして人を救おうとしていたのではないかという正義感を感じる。それがたまたまアイドルというフィルターを通して行われただけのように感じてしまう。
ツアーの最終日、メンバーとスタッフを含めた大人数で大きな円陣を組む。その中心で重岡さんは最終公演を迎えるための気合いの言葉を叫ぶのだが、感極まって途中で泣きそうになる場面があった。メソメソと泣くのではなく、感情がパーンと溢れたように泣くその姿は、また主人公として十分過ぎるストーリーをプラスしている。重岡さんの熱さは、いつも欲しい場面でしっかりと発揮される。そして重岡さんはきちんと意識的にジャニーズWESTの主人公をやっているように見える。誰かに背負わされているのではなく、自らの意思で物語の中心を担っているように見える。そこには圧倒的な安心感がある。それが今日1日ジャニーズWESTの作品を見て感じたことだ。