舞台「台風n Dreamer」

ブログを更新するペースより現場に足を運ぶペースの方が上回ってしまい、現場の感想が書けてない状態が続いている。先日自分が数年前にmixiに書き込んでいた日記を読み返したら、我ながら面白かった。自分が見たものが最も自分のツボを押さえている人(=自分)によって書かれているので当たり前だけど自分の文章を読み返すのは楽しい。それならば未来の自分の為にやっぱり出来る限り自分が見てきたものは文字にして記録しておきたいと思った。

という訳で8/24に観劇したジャニーズWESTの舞台「台風n Dreamer」の感想を書く。そもそもこの舞台、当初は観劇する気は更々無く、チケットも取っていなかった。8月は福岡遠征を予定していたので、大阪で行われるこの舞台に足を運ぶことは不可能だと思っていた。しかし8月に発売された彼らのファーストアルバム「go WEST よーいドン!」を購入したら居ても立っても居られなくなった。(「go WEST よーいドン!」の感想は以下の記事で書いた。)

このアルバムの中に収録されている「Criminal」という楽曲パフォーマンスを是非生で見たいと思ったのが、今回の動機だった。舞台を行った後のショータイムでこの曲が歌われているということは知っていたので、センターの重岡大毅さん不在は残念であるが、勢いで行ってしまうことにした。福岡から高知へ帰る際に大阪に寄ったってことにすればいい。大幅な寄り道。

今回の「台風n Dreamer」も例に漏れず、「企画・構成・演出 ジャニー喜多川」の舞台である。ジャニーさんの作る舞台は意味の分からない点が多い、とジャニヲタの中では読み取られがちだが、私はジャニーさんの舞台はジャニーさんが一番やりたいことをわくわくしながら作っている感じが好きだ。ジャニーズというとテレビ等で活躍するアイドルがイメージされやすいが、ジャニーさんが本当に育てたかったのは舞台スターなのではないかと思われる。ジャニーさんは、アイドルソングの作曲や作詞をしない、テレビ番組の企画構成演出をしない、けれども舞台となると自分の名前を出して、社長としての存在感を放つ。ジャニーさんが一番こだわりを持っているのが舞台であり、年を重ねた現在も尚、自分が監修している舞台を観劇する姿が目撃されている。

私はこれまでにジャニーズWESTが出演していた舞台では「少年たち 格子無き牢獄」「ANOTHER」等を見たことがあるが、今回は後者の「ANOTHER」に近かった。無人島に眠る宝を探し出すというテレビの企画に参加した青年たちのドキュメンタリー、という提でスタートするが、その企画には「因縁ある2人が島で再会」という中間淳太さん演じる番組プロデューサー黄川田が仕込んだもう一つの物語がある。桐山照史さん演じるトウタと、小瀧望さん演じるタクトは、島で久々の再会を果たすも相容れない様子で、やがてその二人が実は兄弟だったということが明らかになる。少年院から出てきたばかりの弟タクトと、母を献身的に支えてきた兄トウタは、舞台上でこの物語の軸となるライバル関係を見せつける。演技力に定評のある桐山さんのトウタは熱くけれども優しく構える兄の姿を映し出し、「ANOTHER」でも輪に溶け込まない一匹狼な青年を演じていた小瀧さんのタクトは今回も素直になれない不器用さが滲み出ていた。台風が来て無人島での宝探しは中止となるのだが、母の為に賞金を持ち帰りたい一心で宝を探しに行く兄、その兄の思いを知り追いかける弟、最後は兄弟の愛が修復していく様が描かれている。

ジャニーズWESTのメンバーは、これまでにも松竹座で数々の舞台をこなしてきただけあって、アドリブ力に長けている。1度しか見ていなくてもこの部分がアドリブであるということが分かるのは、彼ら自身にとっても「予期せぬ出来事」として会話がやり取りされている場合が多いからかもしれない。そのアドリブ回しの中心にいるのは桐山さんであり、本人もアドリブでのやり取りに笑いが堪えきれず、大きな笑顔で自ら楽しんでいる様子を見る機会が舞台中に何度もあった。彼がいればハプニングが起きても何とかしてくれる、という絶対的安心感があって、観客がヒヤヒヤさせられることがない。1グループに1人桐山さんが欲しいと思った。

アドリブ繋がりで残しておきたいことと言えば、神山智洋さん演じるロクスケが夢を語るシーンにおいて、プロデューサーの中間さんとアドリブで会話するシーンがあった。そこで中間さんが神山さんに対して、「NMB48のさや姉(山本彩さん)に似てるって言われるやろ?」と切り込み「せっかくやからモノマネしてみいや」と神山さんに女子アイドルの物真似を促すというとんでもないアドリブをふっかけた。「たまに似てるって言われる」と答えた神山さんは、「これ大丈夫かな」と心配しながらも、NMB48のデビューシングル「絶滅黒髪少女」のサビを歌いながら踊って見せてくれた。その姿が何とも愛らしく、そこから一気に神山さんに対する興味が芽生えた。

今回最も楽しみにしていたショータイムで念願の「Criminal」を堪能出来たが、ショータイムを実際に見てみると、アルバムに収録されていた「Summer Dreamer」や「粉もん」も名曲であることに気づくことが出来て、帰って来てからもしばらくアルバムを聴き続けていた。舞台の上で輝く彼らの姿は充分目に焼き付けることが出来たので、このショータイムでの楽しさをもう少し大きな箱へ移して彼らの作るコンサートを見てみたいと思った。アドリブの得意な彼らが作り出す「予定調和でないもの」が見たい。

とても有意義な寄り道だった。