THE MUSIC DAY 史上最大!10組総勢51名が大シャッフル!ジャニーズスーパーヒットメドレー感想

あけましておめでとうございます!!!!今年もどうぞよろしくお願いします!!!!何を言ってるんだこいつは、とお思いの皆様、待って、帰らないで。まだ話したい事が山ほどあるから長くなると思うけど聞いてくれ。いよいよ2015年明けたんだ、本当は2014年12月「FNS歌謡祭」の日に、ジャニヲタ暦でいうところの2015年はとっくに明けてたんだけど、また明けたんだ。2回目の2015年幕開け。前回はフジテレビが明けてくれたけど、今回は日本テレビが明けてくれた。何回でも明けちゃう。あけおめことよろっちゃう。

という訳で、夏の正月こと「THE MUSIC DAY ジャニーズスーパーヒットメドレー」が今年もやって来た。昨年は7組40名だったのが、今年はKinKi Kidsタッキー&翼ジャニーズWESTが合流し、10組51名へ拡大。数日前にZIP!でメンバーの割り振りと曲目が発表されたが、それだけで結構なお祭り騒ぎだった。これまでメンバーの枠を超えた絡みが見られるのは年末に行われるカウントダウンコンサートのみとされていたが、紅白組が出なくなったり、マッチさんのソロコンに取って代わってしまったりで、先輩後輩が入り乱れる機会は少なくなっていた。そこに来る、「THE MUSIC DAY ジャニーズスーパーヒットメドレー」な訳だから、もうわくわくが止まらない。新学期、クラス替えが発表されて誰と誰が同じクラスだと騒ぎ立てる女子の様に、今回のメンバーの割り振りと曲目だけでもTLは大いに盛り上がった。

そして遂に本日、夏のカウコンが開催されたのである。せっかくなので順番に感想を書き留めておきたい。

①硝子の少年(長瀬智也渋谷すばる滝沢秀明亀梨和也手越祐也

5人が並んだ姿を見て「ちょっ、えっ、まっ、聞いてないですけど!!」と叫びそうになった。ZIP!のクラス替え表をあまりよく見ていなかった私に問題があるが、こんなエース勢揃い組があるなんて聞いてなかった。長瀬智也(エース)、渋谷すばる(エース)、滝沢秀明(エース)、亀梨和也(エース)、手越祐也(エース)、見渡す限りのエースに卒倒しそうになる。しかもセンター奥に長瀬智也という重鎮を置き、0番を二分するのは、滝沢秀明様と亀梨和也様という歴代ドリボ組。美しき二人に二分される0番になりたい。初めて0番になりたい等と思ってしまった。そしてその外側に居るのが、別ベクトルではあるものの「己の歌」をそれぞれに持っている渋谷さんと手越さん。全体的にオーラが強すぎて「硝子の少年」どころかその強過ぎるオーラで硝子なんて一瞬にして木っ端微塵にしてやるぜ感が出ている。ジャニーズスーパーヒットメドレーとはこういうものであるからなと1曲目の洗礼を受けたようだった。思い出した、そうだ。これぐらいの破壊力で我々を襲ってくるのがこのジャニーズスーパーヒットメドレーなのだ。

②MADE IN JAPAN(櫻井翔村上信五小山慶一郎、伊野尾慧、有岡大貴、小瀧望

こちらは打って変わって、日テレでキャスターとしてレギュラー番組を持つ櫻井翔さんと小山慶一郎さんのツーショットが映し出された事で、一気にこれが日テレの番組であった事を思い出す。例え豪華な衣装を着ていても、この二人が並んでしまうと一気にキャスター濃度が上がる。この二人のツーショット場面においてはキャスター濃度100%だ。そのあとに続いて映し出された伊野尾さんも高学歴である為、この組の平均偏差値は如何程であるか等と考えてしまったが、その背後でがむしゃらに踊る村上信五さんが見え始めた時に、一気にそんな雑念は吹っ飛ばされてしまった。そして引きで映された時に、スタイルの良い小山さんと小瀧さんがどちらもピンクを身につけているのがやたらと可愛らしくて、「小山と小瀧」という新しい萌えの組み合わせを発見してしまった自分にしめしめと思ったりした。

チャンカパーナ松岡昌宏大野智横山裕上田竜也重岡大毅、知念侑李)

チャンカパーナの振付をもう何度もコンサートでNEWSと一緒に踊っている身としては、さほど難しい振付ではないと思っているのだが、意外とこういう簡単で単純な振付ほど個性が光るのが面白く、上田竜也さんをこの組に入れようと思った人マジグッドジョブ。完璧に踊りきってもはや持ち歌ではないかと思わせるほどの弾けっぷりの重岡さん、アイドルとしてきっちり振付を踊り歌う大野さんと知念様と横山さん、ちょっと振付を間違えてはいたものの独特のエロさが滲み出ちゃってる松岡さん、そして、そして、KAT-TUNではおおよそした事のないであろう振付に一生懸命ついていきながらも、自分流にアレンジして恥ずかしさを軽減しちゃってる上田竜也さんの愛しさったら!!!最高。上田さんをこの組に入れようと考えた人にはボーナス倍出しといてくれ。

④Venus(坂本昌行堂本光一大倉忠義中間淳太、山田涼介)

こちらも「Venus」という曲をやるに相応しい皇帝選抜。センターに立つ光一さんがみんなよりワンテンポ遅れて振付に乗っかっているところも、間に合わなくても大丈夫な余裕の空気を纏っていて凄い。去年このジャニーズメドレーで嵐の「Love so sweet」をやった大倉さんが、自分が本来やりたかったアイドルはこれだと思ったという話をしていたと記憶しているが、今回も大倉さんにとって理想のアイドルになれる瞬間だったのだろうか。隣で誰よりもキレキレで踊っている中間さんのフレッシュさが目立つと思ったが、実際のところ大倉さんと歳は2学年しか変わらないのだからジャニーズって面白い。

⑤BIRTH(山口達也森田剛相葉雅紀錦戸亮八乙女光

組み分け表を見た時に「森田剛さんのBIRTHはヤバい」とただならぬ妄想を開始してしまっていたが、やはりセンターに森田さん君臨のBIRTHは何だかゾクゾクしてしまった。しかしながらそれ以上にゾクゾクしてしまったのが山口さんであり、振付もばっちり踊り表情まで決めて来た山口さんの普段とのギャップに殺られた女子は少なくないのではないか。そういう面ではTOKIOはどこのグループよりも普段とのギャップが大きいので、こういった機会に新たな一面を見つけてしまう恐れがあると震えながら見た。あと「BIRTH」という曲自体が元々のKAT-TUNの雰囲気が存分に詰め込まれた曲なので、誰が歌っても同じような雰囲気を纏えるのではないかと思っていたけれど、別の人が歌うとまた別のBIRTHが生まれるのだなと思った(BIRTHと生まれる、を掛けた訳ではない)。

無責任ヒーロー国分太一三宅健松本潤、中丸雄一、桐山照史、薮宏太)

「グループ内で一番無責任なメンバーが集まりました」と太一くんが歌前に叫んだのだが、その隣には責任感の塊でしかない松本潤さんがいらっしゃったのが最大のオチだった。ジャニヲタの誰もが「松本潤は無責任じゃない!!」と突っ込んだと思うのだが、太一くんのその発言こそが一番無責任だった。しかしながら太一くんからそんな紹介をされながらも、無責任ヒーローぶる他のメンバーの様子が可愛く、その設定を守る責任感、という矛盾の迷路にハマった振る舞いがとても良かった。

⑦ええじゃないか(城島茂、井ノ原快彦、加藤シゲアキ田口淳之介高木雄也岡本圭人

誰の提案か分からないけど、城島さんと井ノ原さん、田口さんと加藤さん、高木さんと岡本さん、という二人組で互いのマイクを相手に向けて腕を交差させる状態で始まったのがとにかく可愛かった。そしてそのあとみんなでハイタッチしている様が可愛らしく、ジャニーズWESTの「ええじゃないか」ではなく新曲「バリハピ」の方が雰囲気が合っていたのではないかと思うほどの仲良しっぷりだった。こういう時の雰囲気づくりは恐らく井ノ原さんがしていると思うのだが、最後に高木さんとハイタッチしている時に、お互いの呼吸が上手いこと合わず何度か掠っていたのが妙に可愛かった。そして階段を降りたりする移動がメインだったので振付を覚える必要は恐らくなかったと思われるが、階段を降りながらもきっちり元の振付を踊っている加藤さんがベリーキュート。

ウィークエンダー長野博二宮和也安田章大、増田貴久、濱田崇裕、神山智洋

これはもう他の人には申し訳ないけど、長野博さんの優勝でしょう!!!!というよりこのメドレー全体において優勝でしょう!!!!なんて可愛いの長野さん!!!!安田・増田・神山というアクの強いビジュアル御三家はさすがの身のこなし、そして二宮さんは元祖Hey!Say!JUMPをも超える少年感を放ちながらさらりと踊り、濱田さんも独特のノリ方ではあるものの華麗にこなしていく中、長野博さん42歳の可愛さがひどい。長野さんは去年もHey!Say!JUMPの楽曲に割り振られていたのだが、もうこれは毎年恒例行事にして欲しい。普段はV6でバリバリに踊っている長野さんが、不意にHey!Say!JUMPを踊る事になり、短時間で練習しました感が出ているのがたまらないので、どうか来年も長野さんにはHey!Say!JUMP楽曲を。「Chau#」とか「キラキラ光れ」で想像するだけでも絶対可愛い事間違いなし。

⑨One Love(堂本剛岡田准一今井翼丸山隆平、中島裕翔、藤井流星

はい、来ました。お待ちかね、私の大本命。ZIP!で組み分けが発表された時点で岡田さんの三大可愛い後輩に中島裕翔くんがリーチを掛けちゃうんじゃないかと先読みして大盛り上がりした「One Love」選抜。ところがどっこい実際のパフォーマンスは2人1組に分かれてスタンドマイクで歌うのみのシンプルなものだった。そうそう「One Love」ってそういう曲だったよね。そして岡田さんと対になったのが堂本剛さん。この二人、合宿所を出た後ルームメイトだったという話を聞いてから、ときめきがとまらない訳だが、そんな二人が一緒に並んで歌う機会が設けられた事にまず大興奮。しかも三大可愛い後輩候補の中島裕翔くんが二人が歌う前に、二人に注目が集まるように指差してたりするもんだからたまらない。

⑩LOVE YOU ONLY(全員)

去年は最後の曲でみんな思い思いに散らばってたので、自由時間に何処で誰が誰とどうしてるかを見るのが楽しかった気がするが、今年は見事にグループごとに分かれてしまったので、フリーになった時の様子が分からなくてちょっとばかし残念だったが、それにしても全員がステージ上に一同に会した瞬間はやはり圧巻で、「今からでも遅くないから飯島班も来ちゃいなよ!!」って私がジャニーさんだったら漏れなく言う。日テレの段取りの事とか関係なく言う。最後に誰かHAPPY NEW YEARって言ってない?ジャニヲタと考える事一緒じゃない?と思ったけど、言っていたのは「増田HAPPY BIRTHDAY」だった。増田さんお誕生日おめでとう。公共の電波を使ってジャニーズが一同に会す瞬間を見せてくれる機会は、こうして年に1~2回程度で良いのでずっと続いてくれたらいいなと、願い続けていきたい。

たぶんきっと明日も何回も見ちゃうんだろうけど、そしてまた色んな発見があるのだろうけど、最高の夜だったって事を一旦ここに書き記しておくぜ!!今年もどうぞよろしくお願いします!!

「タイプライターズ 物書きの世界」 又吉直樹×加藤シゲアキ×朝井リョウ対談感想


というツイートを投稿したのが6月2日。朝井リョウさんがアイドルを題材にした「武道館」という小説を書いたこのタイミングで、アイドル兼小説家であり自身のデビュー作も芸能界を舞台にした「ピンクとグレー」という作品だった加藤シゲアキさんを対談させないなんて、テレビも雑誌もwebも何をやってるんだという思いを込めて何気なくツイートしたら、まんまとその2日後には夢が叶い、朝日新聞に二人の対談記事の一部が掲載され、webにも全文が掲載された。(http://www.kadokawa.co.jp/sp/ks/talk.php)「関係者の方よろしくお願いします」と書いたが、私のツイートとは全く無関係にとっくに事が進んでいたという事が嬉しい。そして、この1回のみで終わらず、6月26日に放送された加藤さんと又吉直樹さんがMCの単発番組「タイプライターズ 物書きの世界」において、ゲストとして朝井リョウさんを迎える形でもう1度私の夢が叶う形となった。言霊。これからも積極的に夢を言葉にしていこうと思う。朝日新聞の対談は、加藤さんの新刊「傘をもたない蟻たちは」について語る内容で、「タイプライターズ 物書きの世界」は朝井さんの新刊「武道館」について語る内容で、こちらの方が内容も濃く厚かった為、今回は後者の感想を書き記しておきたい。感想を書き記しておきたいというより、それぞれの発言を記録しておきたいと言った方が正しい。

朝井「アイドル=地球外生命体」

加藤:まず、どうして「武道館」っていう小説を書こうと思ったんですか。
朝井:今、現代人を象徴してるものって何だろうって考えた時に出てきたのがアイドルだったんですよ。色んな映画とかでたまに、地球外生命体みたいなのが地球に降りて来て、その周りの反応を描く事によって、その時代を描くっていう作品があると思うんですよね。今の時代でいうその地球外生命体的なものって、僕はアイドルなんじゃないかと思っていて。
加藤:ほお。
朝井:目の前にして申し訳ないんですけど。
加藤:いやいやいや。
朝井:何しても起こる人も居るじゃないですか。アイドルが何しても起こる人も居るし、アイドルが何してもギューンとなる人も居るし、かと思ったら、今社会学者の方々がアイドルを論じていたりだとか、アイドルに関する社会学の本とかも凄い出てたりするし、研究対象にもなってたりだとかする、って事は、色んな現代人の何かを反映してる怪物みたいなもののような気がしたんですよね。可愛くなきゃいけない、若くなきゃいけない、でも恋愛しちゃいけないとか。自撮りで映ったサンダルが凄い高かったら、それはそれで駄目とか。応援してるんだけど良い生活はして欲しくないとか。
加藤:ここでそんな裏話出てくるとは、僕としては営業妨害なんですけど(笑)。
朝井:そういう両立出来ない欲望みたいなものを、とにかく叶えなきゃいけない存在として、凄い地球外生命体感がやっぱりあったんですよね。本来成り立たない欲望を、アイドルだけは成り立たせてる。
加藤:宇宙人がアイドルとして、その周辺を描くとしたら、アイドルファンが主人公なのかなって思うんですけど、これでいうと主人公がもうアイドルになってってところから始まるじゃないですか。
又吉:仰る通りなんですけど、アイドルの物語。アイドルが徐々に成功していく物語なんかなって予備知識なく読み始めた時に、家族ぐるみの子供の会話とかが出てきた時に、もうちょっと泣きそうになるんですよ。そうやんなって。
朝井:それはそうなんです。
又吉:この子が多分アイドルになるんやなって読み始めて思うじゃないですか。その時に、あっそうやんって、子供で、
朝井:前後があるんですよね。
又吉:あんねや、その瞬間しか見てないけど、そうやそうやっていう風に、なるのが物語の凄いとこやなって思って。僕も自由でいいやんとは思うけど、確かにどっかで自分の好きなアイドルが、熱愛発覚ってなった時に、ちょっとあるじゃないですか。

アイドルを地球外生命体に例えるくだりは、実際に「武道館」の登場人物の台詞の中にもあって、「地球外生命体」という言葉自体は少し乱暴にも聞こえるけれど、だけどそれぐらい特別な位置でこの世界に存在しているものだって意識させる為には絶妙なワードだなと思っていた。この話の中で一番好きだったのは、又吉さんの「家族ぐるみの子供の会話とかが出てきた時に、もうちょっと泣きそうになるんですよ」という言葉だった。又吉さんはアイドルではないものの、それでも芸能界で生きている人でありながら、この物語を芸能界側の人間の視点ではなく、朝井さんが用意した読者の視点で読んでいた事が分かる感想だなと思った。主人公の女の子が「アイドルになる以前」の出来事も描かれている「武道館」を読んだ時に、私も誰しも「普通の女の子だった時代」を経ている事が思い出されたし、「その瞬間しか見ていない」という又吉さんの言葉には改めてハッとさせられた。私たちは「その瞬間しか見ていない」し、何なら「その瞬間」の中でも「公表されているその瞬間」しか見ていない。「その瞬間」以外の瞬間、がある事を忘れがちだ。

朝井「アイドルが欲の塊だって事は自明の事、大前提」

加藤:いいんですか、例えば好きなアイドルが恋愛スキャンダルとか出ても。それとは別だって事ですか。
朝井:全然良くて。オーディションを受けに来る人って、自分は絶対有名になりたいって、自分は絶対表に出る人間なんだっていうのを、凄い剥き出しにして来てるんですよね。何かその人間的な部分の方が印象が強くて、あの人たちが欲の塊だって事は自明の事というか、大前提なんですよね。だから恋愛とかそういう人間的な欲望に司られる行動をいくらしていたとしても、そこに驚く事はないっていうか、そうだよねっていう感じに思う。
加藤:そうなっていくといいなって、当事者からすると。でも何年もアイドル文化っていうのはあるのに、変わらないって事は何か普遍的性がそこにあるのかなって僕は思っちゃうんですけど。

これは加藤さんの質問がとても良かった。朝井リョウさんは「武道館」という小説を書き、自身もアイドル好きでありながら、実際のところ「アイドルの恋愛」に関してどういう風に捉えるのだろうと私も感じていた。小説内である程度のメッセージは発信しているものの、それが直接著者自身のスタンスとは異なる場合もあるし、必ずしも著者の意向が物語に反映されているとも限らない中で、朝井さんはどう考えているのだろうと思ったが、「アイドルが欲の塊だって事は自明の事」という表現には、鋭すぎる潔さを感じながらも、意外性もあった。アイドルを好きな人間である以上、「アイドルの恋愛」に対する違和感をゼロにするのは誰しも難しいのではないかと私は思っていて、自分自身も表ではこんな風に潔く割り切った事を言えたとしても、心の何処かでどういうベクトルかはその時それぞれだけど、この問題について綺麗さっぱり整理する事が出来ない鬱憤を抱えていると思っている。他の出来事に対しては割と寛容なファンが、恋愛に対しては途端に怒りを露わにし、またその怒りを露わにする事が正当な行為として成立しているファン文化に対しても、同時に煮え切らない何かを感じていたりする。朝井さんの回答を聞いて、改めて自分は「アイドルの恋愛」に対してどう感じているのか、整理してみたいと思った。

又吉「怒りの感情が沸くって事は、どっかでみんな分かってる」

朝井:やっぱり読んで下さった方の反応も凄い割れてて、議論が起きた事が凄い嬉しいんですよね。自分がどういう考えの人間なんだろうって、本を読んで考えている時凄い幸せなんですよ。自分ってあんまりこういうの考えた事なかったな、自分はどういう考えの人間なんだろうって、凄い立ち止まらせてくれるというか、未知のものに出会うっていうか、自分の頭の中に無かったものに出会う瞬間って楽しいので、この本を読んで怒りの感情が沸く人も多いと思うんですけど、そういう人が増えた方が、この本を書いた意味があるのかなって凄い思いますね。
又吉:怒りの感情が沸くって事は、どっかでみんな分かってるんだよね。えっ、そうだったのって人はまぁいないでしょ。あんまり。
朝井:恐らくその加藤さんみたいに、実際に本当にアイドルやられてる人からすると、そういう事を言わないようにしてきたんだけどって、そこは凄い申し訳ないなと思うんですけど。
加藤:すげえ分析されてるなって、詳しいなぁって思いましたけど。
又吉:でもね、サンダルが高価やったらアカンとか、それって女性アイドルの方が大きくないですか。男性アイドルってむちゃくちゃかっこよくて、全部出来る万能な人とかも未だに凄く人気やし。
加藤:だから男性よりも、男性は歳とる程かっこいいって言われがちですけど、女性は「劣化」って言葉を使われやすいですよ。酷い言葉だなぁと思いますけど。だからこそ、そこには誰も手に入れられない何か魅力が。
朝井:濃度の違いは確かにちょっとあるかも。
加藤:あるとは思いますね。でも男性も完璧過ぎるから良いってのは比例しないですね。僕が見てきた経験ですけど。隙がある方が可愛いし、完璧なものを見るんだったら日本じゃなくて良いんですよ多分。それこそ韓国の人とか技術が凄いって言われたりとか、マイケルジャクソンでいいとか。日本人のアイドルを応援するって事は、やっぱり。こんなに言っていいのかな俺(笑)。
朝井:後から全部誰か書き起こしますよ。
加藤:絶対メモんないで欲しいわ(笑)。

加藤さんごめんなさい、がっつり書きおこしました。このくだりの中で一番良かったのは、やっぱり加藤さんが「こんなに言っていいのかな俺」と自分の発言を振り返って後悔し始めたところである。我々からしてみれば、けして暴露し過ぎた発言は見当たらないが(もしかしたらOAにあたってカットされている部分があるのかもしれないが)、男性アイドルでも完璧である事と人気がある事は比例しないという話は、確かにジャニーズ事務所のアイドルが個人で発言している機会はあまり見かけないかもしれない。そもそもそういった事に思い悩んでいるのは、選抜総選挙や握手会などで人気の昇順がダイレクトに本人たちに伝わってしまうAKBグループを始めとする女子アイドルのイメージが強い。けれども発言していないだけで、男性アイドルの中にも常に人気を意識する気持ちはあって、言わない事がかっこいいとされている中で今回の対談で言ってしまったから加藤さんは心配していたのかもしれないと思った。


他にも興味深い話が1時間に渡って繰り広げられていて、私はこの番組の音声だけを抽出して常に持ち歩きたいと思ったくらい今回の対談を気に入っているのだが、朝井さんの「武道館」について加藤さんや又吉さんの話が聞けたのが何よりの収穫だった。加藤さんは、小説家としてデビューした頃にラジオで「朝井リョウさんに会ってみたい」という話をしていたので、年齢も近い二人、また同じ芸能界を舞台にした小説を書いた者同士としてまさに今が出会うべきタイミングだったのではないかと感じる。そこに芸人として小説を書いた又吉さんも加わって、芸能界に生きる側と描く側の両方の視点を持つ者が集ったこの対談は、芸能界を見る側の人間にとってとても興味深い内容だった。「タイプライターズ 物書きの世界」は第2回があるかどうかは未定らしいが、本好きとしてもアイドル好きとしても楽しめる充実した番組だったと声を大にして言っておきたい。