松田迅さんはINIの宝物 『2025 INI 3RD ARENA LIVE TOUR XQUARE』


サバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』(2021年)で結成されたINIをゆるっと追い続けている。本当にゆるっとなので彼らが所属する事務所LAPONEの祭典「LAPOSTA」は今年スルーしているし、ツアーも1回しか行かないのだけれど、だからと言って無関心にはなりきれず、自分の中で小さく燃えている火を大切に大切に灯し続けている。とっても勝手なこじつけだけれど彼らがデビューしたのは2021年11月、私が高知から東京に転勤したのも2021年11月。彼らの活動期間は、自分が東京に来てからの期間と同等なのだということを思い、彼らの成長率に対して自分は東京で何を成し遂げたかを年1回振り返るようにしている。超絶勝手な同期ヅラ。若い彼らの方が当たり前に圧倒的な成長を遂げている。オーディションの時から推している尾崎匠海くんは、去年は『アンメット ある脳外科医の日記』と『ライオンの隠れ家』の2クールドラマに出演しており、追おうとして追っていなくても自然と目に入ってくるくらい活躍の場を広げているから凄い。

INIは去年初めてファンコン『2024 INI FAN-CON TOUR [FLIP THE CIRCLE]』を開催し、それがとても楽しかった。私はご存知の通りSTARTO ENTERTAINMENTの現場に行き慣れたオタクなので「ファンコン」という韓国アイドルから輸入された文化に疎く、これまでのライブとファンコンとでここまでの違いがあると思っていなかった。ライブはパフォーマンス披露に重点が置かれており、ファンコンはファンとの交流に重点が置かれ、トロッコでの会場の周遊やファンサタイムも多く用意されていた。「ファンコン」で検索すると「ファンとアイドルの絆を深めるもの」とAIが回答してくれたが、では普段のライブは誰に向けて行われているのか?ということをそれ以来常々疑問に思っている。STARTO ENTERTAINMENTは、パフォーマンスを魅せることと、ファンと交流することを同じライブの時間の中で包括的に行うので、ライブとファンコンを分ける必要とは?と思っていたりする。そんなことを同じSTARTO ENTERTAINMENTオタク出身の同行者と話しながら幕が開けるのを待っていたので、彼らが登場した瞬間に何の濁りも感じない黄色い歓声がKアリーナいっぱいに鳴り響き「熱狂だ!」と思った。どのライブ会場でもそうあるべきだと思うのだが、たまに行き慣れたオタクが大半を占めていて歓声がさほど大きくないライブというのが残念ながらある。それがINIのライブ会場では、全員が彼らに会うことを本当に待ち望んでいたような熱っぽくてピュアな歓声が会場を埋め尽くし、その雰囲気に押されて私もゴクっと唾を飲み込んだ。メインステージとセンターステージのみで、バックステージ、外周なし。パフォーマンスを魅せることに特化したステージ構成で、STARTOオタクとしては無いものに目が向いてしまうけれど、彼らの迫力のあるダンスやボーカルを見に来たファンたちにとってはライブにおける需要と供給は意外とマッチしているかもしれない。

私はINIのパフォーマンスの力強さとトークの柔らかさのコントラストが好きだ。楽曲は攻めててかっこいい曲を歌って踊っていてもトークになると突然綿あめくらいのふわふわ感を纏い出す。20代の男性が11人も集まると時に刺激的なコミュニケーションが行われてもおかしくないと思うが、交戦的なシーンはほとんどなくいつも彼らには「令和」を感じる。国民プロデューサー(オーディション番組の視聴者)投票で選ばれた所以なのかと考えたりもするが、それにしても今っぽい。唯一、藤牧京介さんがその中では毒舌チックに振る舞うこともあるが、それも彼の頭の中で計算された振る舞いに見えるので、根っからの性質ではなさそうに感じる。INIの令和感を一番象徴しているのは、最年少の松田迅さんで、私は彼のことを「INIの宝物」だと思っている。真面目なメンバーが多い中で伸び伸びと最年少ポジションを楽しんでいて、私が入った回では=LOVEの『とくべチュ、して』の2番の歌詞「好きなところ、優しいとこ。嫌いなとこも、優しいとこ。」のメロディーに合わせて、メンバーの好きなところと嫌いなところを歌ってくれた。5人中3人くらいの好きなところが「優しいとこ」だったが、誰も突っ込めないくらい無邪気で可愛いのである。松田迅さんのことを世の中の人が知ってしまったらすぐに好きになってしまうと思うので、大切に大切にINIの秘密兵器として守られていて欲しいと思う。

最後の挨拶もINIはいつも軽やかだなと思う。11人もいるので一人一人のコメントに時間をかけられないということもあり、風のように軽やかにコメントがリレーしていく。そんな中で中盤にいた匠海くんのコメントは相対的に見るとヘビーだった。「みなさん今日まで生きてくれてありがとう。生きてるだけで偉い」匠海くんのために生きてきたわけでは無いけれど感謝されてしまった。そして褒められてしまった。ライブの最後にこういうコメントをするアイドルは今までにも見たことがあるけれど、その度に「アイドルはなぜ私たちが苦しい毎日を過ごしている前提なのか」と言っていた友人の言葉を思い出す。アイドルと会うときのコンディションは人それぞれだが、私もたまに思うのである。アイドルを見にいく理由は、日常の苦しみを晴らすためだけではないぞ、と。元気なときだって、いつだって、オタクはアイドルを見にいくんだぞ、と。ここ数年はそう考えていたのだが、直近で心的負荷がかかる出来事があったので、その匠海くんの言葉がジーーーーーーンと来てしまい、やっぱりそう言ってくれるアイドルに救われることもあるのだということを改めて感思い出す。最大公約数で届く言葉ではなく、必ずいるであろう今日ここに希望を見出してやって来た人に対して匠海くんは言葉を向けたのだろうと思うと、そんな匠海くんを推しと呼べることを誇らしく思う。

次にINIを見にいくのはいつだろうと遠い未来を思っていたが、友人に誘われて来月ウマチュンを見にいくことになったので、また近々見れそうだ。勝手な同期ヅラをしてまだもう少し彼らを追い続けたいと思う。