『YOASOBI ZEPP TOUR 2024 “POP OUT”』に行ってきた。去年の『YOASOBI ARENA TOUR 2023 “電光石火”』は埼玉スーパーアリーナとぴあアリーナの2公演参戦したので今回が3回目になる。基本的に私が行くライブはアイドルのライブが多い中、何で急にYOASOBIと思われるかもしれないが、小説を楽曲化するというコンセプトと、Ayaseとikura両者の天才性に凄まじい吸引力を感じて数年前から惹かれ続けている。そんなYOASOBIがアリーナツアー終了から約半年でZeppツアーをやるというので申し込んだ。しかも3rd EP『THE BOOK 3』を購入したら封入されているシリアル・ナンバーを使った最速先行で申し込むほど気合い十分だった。そして当たった。
Zepp Hanedaに行くのは初めてで、というかそもそもライブハウスの現場が久しぶりで、どこに陣取るのが良いのか迷ったが、整理番号もそこまで早くなかったので、後方の高台に昇ってもたれかかれるポールがあるところでゆったり見た。YOASOBIを見に来る人は「20代男性」とかそういった属性でカテゴライズできないところが良い。もちろん若い世代が多いことは確かだが、親子で来ている人もいれば、友達同士で来ている人もいるし、カップルや夫婦で来ている人もいる。客の性別や年代が幅広く、また何かを猛烈に信仰してなさそうなところが凄く良い。アイドルのライブに行くと、特定の性別や年齢の層が厚く、またそのアイドルを信仰していることが雰囲気から感じ取れてしまい、終演後街に放たれた後もそこでライブが行われていたことが瞬間的に街の人にバレてしまうけれど、YOASOBIのライブに来ている人たちは、そのまま瞬時に街に溶け込んでしまいそうなほど、“世間”という感じがする。誰でも混じり合えるそんな空間だからこそ、YOASOBIのオタクじゃなくても許される、そんな空気感が感じられて好きだ。
開演してYOASOBIが登場すると、後ろにいた女の子二人組がAyaseとikuraを見て「でかっ」と溢していたが、私もまさに同じことを思っていた。想定していたサイズのAyaseとikuraの3倍くらい大きかった。つまりそれくらいZeppの箱が小さく客席からの距離が近いのだ。YOASOBIのライブは終始スマートフォンでの写真撮影がOKとされており(動画はNG)、会場の最後方にいたにも関わらずiPhone15Proで15倍にして撮影すると、それなりに近くにいるような写真が撮影できた。後方から見ていたからより感じられたが、みんなが思い思いにスマートフォーンで撮影しているそのスマホの画面すらも煌びやかな会場を演出しているようだった。ikuraちゃんの天使のような歌声が会場いっぱいに響いて身も心も浄化されるようだった。
アリーナツアーのときから意外に思っていることの一つが、曲が終わりトークコーナーに入るときに会場から聞こえてくる男性のAyaseを呼ぶ声。一人や二人ではなく複数の男性陣がAyaseの名前を呼ぶ。もちろんikuraちゃんを呼ぶ声もあるが、男性の野太い声で呼ぶ「Ayase~!」には信仰を感じる。さっきはYOASOBIのライブに来る人は何かを猛烈に信仰してなさそうなところが凄く良い、と言ったばかりなのに、この瞬間だけは、Ayaseに傾倒する男性たちの存在をビシビシと感じられる。この話を美容院に行ったときに男性美容師にしたことがあるけれど、彼も「気持ち分かるわ~」と頷いていた。でも私も自分が男だったらAyaseに傾倒していたかもしれないなと思う。ライブ中にAyaseが声を発する時間はそう長くないけれど、話すときに語られる熱いメッセージや常人離れした(それでいてJ-POPの王道をいく)楽曲を創れる天才性には、神々しさを感じずにはいられないと思う。
2023年に大流行した楽曲『アイドル』はライブの中盤に披露され(昨年のアリーナツアーはアンコールで披露されそれはとても盛り上がったが)、イントロが流れただけで会場がこれまでになく湧き立ち、客席の期待値が上がり始めているのを感じられた。かくいう私もこの曲は大好きで、けして大盛り上がりしているとは言えなくなってきたアイドル業界に、アイドルではないYOASOBIが楽曲を通して一石投じてくれたような気がして、色んなアイドルがこの楽曲をTiktokで踊る姿を見たり、紅白歌合戦の演出が生まれたり、「アイドル」という言葉や概念がまた一つアップデートされて嬉しかった。この曲のサビでは客も「アイドル!」と一緒に叫んだりするが、これまでアイドルの名前を叫んだことはあったが、アイドルという概念について叫んだことはなかったので、それもまた不思議ながら貴重な体験になっていた。
YOASOBIの中で一番好きな楽曲は?と聴かれたら選ぶのが難しいのだが、『アドベンチャー』を一つに挙げるかもしれない。元はテーマパークのテーマソングとして書き下ろされた曲だけど、テーマパークに向かう高揚感はアイドルの現場に行く高揚感と通じるものがあり、曲を聴くだけでわくわくさせられる。そんな風に聴いていた曲がライブで聴けるというのもまた不思議な感覚で、ikuraちゃんの歌声に何度も幸せを演出してもらって感謝しかなかった。
youtu.be
Zeppツアーの参戦はこの公演限りだけれど、秋にドーム公演が決まったみたいなので、ライブハウスとはまた違う場所でYOASOBIの楽曲を体感できる予定があることはうれしい。当初はYOASOBIは短期間で終わってしまうプロジェクトだと思っていたので、二人が続ける選択をしてくれていることがファンとしてはとてもありがたい。時代を象徴する歌を今後も創り続けて欲しい。