10年目に起こる奇跡もある、Leadが体現する物語

例えば女子アイドルの世界ではAKBグループがどれだけ勢力を拡大しようとも、ももいろクローバーZやモーニング娘。等その他のアイドルが肩身を狭くすることはない。むしろ女子アイドル界全体が活気づいて相乗効果をもたらしているような風潮にある。互いに競い合わせることでそれぞれの良さが浮き彫りになってくる。しかしその一方で男子アイドルの世界はジャニーズの独裁政権に近い。彼らは内部に沢山のグループが存在するため外部との相乗効果を狙う必要がない。ジャニーズ以外の男子アイドルグループにとっては生きづらい世界となっている。今回はその「ジャニーズ以外」のアイドルグループについて話をしようと思う。

2012年7月31日、Leadがデビュー10周年を迎えた。「Lead 10th Annibersary Live ~感今導祭~」と名付けられた10周年ライブがその年末DVDとして発売された。RISINGPRODUCTION Online Shopでの限定販売で既に販売は終了している為、世間一般に向けて販売されていないのが何とも悔しい。私はこのDVDを年末に手にしていたけれども、最近になってようやくじっくり見た。Leadというのは、2002年にデビューしたVISION FACTORYの4人組ダンスヴォーカルグループ。DA PUMP安室奈美恵、最近で言えばFairies等が所属する事務所である。彼らがデビューした2002年頃は、この男性ダンスヴォーカルグループに最も力を入れられていた時期だった。w-inds.、FLAME、に続いて最後にデビューしたのがLeadである。当時はまだジャニーズ事務所の操作的な圧力は感じられず今思い返すとメディアにも驚く程出ていた。分かりやすく言えば現在のFairiesと同じくらい宣伝費をかけられていたと思う。そんな彼らは「真夏のMagic」でデビューし、2ndシングルでは早速オリコントップ10入り、その後9thシングル「ベイビーランニングワイルド」で11位まで順位を落とすまでは安定した売上を刻んでいた。しかしその2006年以降10位以内に入ることはほぼ無くなり、やがて2008年にリリースした15thシングル「Sunny day」ではオリコン最高34位という苦しい結果が残っている。その翌年からCDシングルのリリースは年1枚ペースとなり、彼らがどんな活動をしているのかそれまでは何となく把握出来ていた私もほとんど分からなくなった。少しでも気にかけていた人間が分からなくなったのだから、恐らくお茶の間には悔しくも忘れられた存在になりかけていたと思う。

そんな彼らが2012年3月、10周年を前に仕上げて来たぞという朗報が耳に入った。19thシングルとしてリリースされた「Wanna Be With You」のパフォーマンスで彼らは生まれ変わっていた。

【PV】Wanna Be With You / Lead
これまでのLeadの楽曲はキャッチーさを狙ったポップなものが多かったが、本人たちの決意を載せた歌詞と共に迫ってくるような迫力がある。また振り付けもこれまではファンと一緒に覚えられるもの、印象に残るものをシングルでは重視する傾向にあったが、本来の彼らが持っているダンススキルを最大限に魅せつける本格的な“踊れる人”用の振り付けになっている。目まぐるしい程に変わるフォーメーション、大サビ前の「絶望からの立ち上がり」を想起させるミュージカル風の動き、長い冬を越えてようやく彼らが土の中から出て来たような生命力を感じる。
実際にこのシングルは大成功に終わり、宣伝費を多くかけていたデビュー当時にも叶わなかった、オリコン3位という記録を叩き出している。オリコン3位をとったことが分かった時のリーダー中土居さんのブログがこちらである。

この結果は目標を飛び越えた夢でした。
数年前までの僕たちは口にすることもできなかった夢。
でも、諦めないでいてくれたLeadersが、
ぼくたちにこの日を迎えさせてくれました。
10年目で最高という現実について話すたびに、
Leadメンバー全員の目はウルウルしてしまいます。
全国のLeaders、本当にありがとうございました!!
そしてスタッフさん、関係者の皆さん、本当にありがとうございました!!
苦しい時期に味方でいてくれた全ての方に、
心からありがとうを伝えさせて下さい。
2012年03月のブログ|Leadオフィシャルブログ「Leadship」Powered by Ameba -4ページ目

これをきっかけに私は再度Leadを観察していくことに決めた。10年目に起こる奇跡もある、ということを体現している彼らの物語は間違いなく面白い。10周年ライブでリーダーの中土居さんはファンを目の前にして「僕たちを選んでくれてありがとう」という言葉を残している。それは彼がかっこつけて言おうとした訳でもなく、謙虚な姿勢を見せている訳でもなく、限りなく本音に聞こえた。強調するならば「僕たちを(敢えて)選んでくれてありがとう」という風に聞こえる。他に分かりやすく応援出来るアイドルがこの世界には沢山いる中で、自分たちに寄り添うと決断しているファンに向かっての最高の謝辞だった。
10周年を迎えたとは言えデビューが若かったので、まだ年齢的には24~27歳である。アーティストとして何度も皮が剥ける可能性はある。リリースされるシングルは必ず自分たちの意志を乗せるようになり、楽曲は彼らにとってメッセージを届けるための重要な道具となった。2012年末にリリースされた20thシングル「Still」では「甘い期待も、語り尽くされた失意も、かき分け羽ばたく」と表現されている。自分たちに向かってどんな評価が飛んでこようが、前を向くと覚悟を決めたLeadの決意は固い。