非ファンタスティック

今回の件について書くかどうか迷っていたのだけれど、時間が経ってしまえば今の気持ちはきっと隅々まで思い出せなくなるだろうし、今感じていることを書くことで自分の中で整理できるような気がしているので、読み返す機会は訪れないかもしれないけれど、自分のために書いておこうと思う。

昨日仕事から帰って来て、レコーダーの電源を入れたら、キーワード録画で『ビビット』が録画されていて、ご丁寧にその他のワイドショーもいくつか録画されていた。私のレコーダーには「小山慶一郎」も「加藤シゲアキ」もおまかせ録画のキーワードとして登録されている。『ビビット』番組内でことの経緯が細やかに説明され、その間ワイプには加藤さんの顔が映っていた。その後、本人の口から謝罪する様子が映り、共演する方々から厳しい言葉をかけられていた。またその一日前には小山さんの『every.』での謝罪、活動自粛を告げる様も見ている。それらの様子を見ても、悲しみも怒りも激的な感情として沸いて来なかった。今の自分の気持ちに一番近い言葉をあてるとしたら「呆れ」になるかもしれない。悲しみだとか怒りだとかに自分のエネルギーを使うのも勿体無いと思い、呆然とその様子を見ていた。

「呆れ」という感情にたどり着いたのには、今回の件が一言では片付けられないくらい複雑に失望させられているからだ。失望ポイントがあり過ぎる。

①未成年女性の同席
これは未成年女性のことを本人たちが20歳と認識していたことに落ち度があった訳だが、それなら仕方がないかと思える程単純な話ではない。そもそも30歳を超えた大人が、仕事で知り合った訳でもない成年か未成年かのボーダーライン上にいる女の子と飲む機会が作られていること自体が不自然な話である。

②飲酒の強要
飲酒を強要することはどんなやり口であったとしてもやるべきではないことだが、今回の「コールで煽る」という方法が何より理解しがたい。大学生の飲み会ならまだしも、小山さんはもう34歳だ。①も②も共に、彼らがアイドルであるということを抜きにしても、「30代前半男性」の身に起こった出来事として受け入れ難い。

③NEWSの歴史
私は彼らが4人でNEWSを続けることを決めた2012年頃の物語を愛していたので、今回の件で何より失望しているのはあの時彼らが見せてくれた決意や意志が随分と薄っぺらくなってしまったことかもしれない。過去に未成年飲酒でメンバーを失い、その歴史を背負っても尚NEWSを続けて来たのに、今度は自分たちが未成年に飲酒をさせてしまう。一番近いところにあったはずの過ちを、自らの手で繰り返してしまった浅はかさにはもうかける言葉もない。

④彼らの立ち位置
両者とも報道番組・情報番組でコメントをする立場にあり、時には過ちを犯した先輩にも厳しい言葉をかけてきた。その行為は常にブーメランとなって自分に返って来て、自分の行動にも緊張感を持たざるを得ないと思うのだが、そうした自覚が薄かったという点も残念だ。また今後もその立場を続けられたとしても、きっと視聴者からは厳しい目を向けられ続けることになる。コメントをしても全く説得力を持たなくなる。

⑤交友関係
今回の件が明るみに出た要因は、音声の流出にある。これが店の人が勝手に録音したものであればまだしも、自分たちが一緒に飲んでいた女性から流出している。つまりそこに信頼関係は成立していなかった訳で、人を見る目の無さまで露呈してしまったことになる。プライベートで誰と付き合うのか、そこまでファンは首を突っ込まなくていいにせよ、一社会人として自分の仕事に支障をきたすような相手でないかどうかは見極めて欲しいと願う。


慣れないことをしてしまった。人の好きな点を挙げていく作業は楽しいが、人に失望した点を挙げていく作業は思っていたよりしんどい。コンサートでアイドルを見る時、私たちは沢山のエネルギーを貰うのでアイドルのことを聖人のように感じている節がある。そのまま彼らのことを聖人だと思って死ぬのが本望だが、こういった事件が起こると急に「知らない人」になる感覚がある。あんなに様々彼らの言葉を拾い、それらを大切に宝箱にしまって信じて来たのに、急にその宝箱がガラクタになってしまう(宝箱にしまって信じていたのはこちらの勝手かもしれないが)。ガラクタになってしまった宝箱がまた蘇るにはきっと時間がかかる。今まであんなに簡単に出来ていた「信じる」が突然凄く難しい行為になる。どれくらいの誠実さを見せられたら、次の感情に進めるのか今はまだ分からないけれど、彼らが「やっぱ僕らファンタスティック!」という歌詞を次に歌う時には、リアリティが歌詞に追いついててくれと切に願う。