DVD「KAT-TUN LIVE 2015 “quarter” in TOKYO DOME」

常に自分のために書いてきたブログだけど今回だけは人のために書く。大切な友人のために書く。KAT-TUNのことを15年一途に応援していた友人が、先日天国へ旅立った。彼女は私にとってKAT-TUN博士のような存在で、KAT-TUNについて分からないことは丁寧に教えてくれて、また私がKAT-TUNについて呟くと「あややが呟いてくれたら沢山の人にKAT-TUNのことを知ってもらえるから嬉しい」と本気で喜んでくれる優しい人だった。彼女が絶対的味方でいてくれるからこそ、私はKAT-TUNをより好きになれていた。

昨年発売されたKAT-TUNのDVDを私はまだ見ていなかった。「あややの感想楽しみにしてるね」と彼女は言ってくれていたのに、私は購入したきり一度も見ないまま年を越してしまっていた。もっと早く見て彼女と感想を共有しておくべきだった。今更遅いかもしれないけれど、彼女が空の上から読んでくれているかもしれない可能性に懸けて、彼女のためにKAT-TUNのDVDの感想を記しておきたい。

「宇宙で一番KAT-TUNのコンサートが好き」そう宣言して来たことを覆されることもなく、むしろまた他を引き離して独走状態に入ったと思わされるコンサートだった。KAT-TUNはいつも安定して、観客のニーズを掴むのが上手い。ステージの上で自分たちがどうあるべきか、何を求められているか、東京ドームの最後列から見える景色までもを熟知しているかのような魅せ方をする。いつだかのコンサートで「私は神だ」という心持ちで登場しているという話をメンバー間で笑いながらしていたが、まさにその神格化される自分に対して迷いがない。観客のキャーという歓声、圧倒的大多数の好意を浴びると、人間は本能的に口角が上がってしまいそうなものだが、彼らは背筋を正して仮面の奥でひっそり微笑む程度である。その様が美しいから、また観客はキャーと叫んでしまう。そんな観客の指には大きなダイヤモンドが光る。全員に平等に同じ指輪が嵌められている。これはこのライブのために作られたグッズだったが、これまでに見たどんなグッズよりも「アイドルとファン」の関係性を美しく表現したグッズだと思った。そんな細かなところまでこだわり抜かれたのがKAT-TUNのライブだったと思い出した。

私がKAT-TUNのライブで一番好きな点は、序と結に統一性が持たされているところである。基本的にライブの初めに登場した場所と、ライブの最後に帰っていく場所が、同じ場所に設定されている。来た場所から帰っていく、小さなことではあるが、これだけでずっと物語性が強くなる。観客は彼らの帰っていく姿を見る時に、あぁ数時間前はあそこに立っていた彼にひどくわくわくさせられていたのに、今同じ場所に立っている彼に切なさしか感じられない、景色は同じなのに逆転してしまった感情を実感することで、この数時間の出来事に厚みが増してくるのである。今回のDVDでも、四方に散らばって登場したKAT-TUNは、本編最後には散らばって去っていく。ステージを降りて歩いていく後ろ姿がDVDにも収録されているが、KAT-TUNの美学を感じる場面である。

そして今回のステージパフォーマンスは、「~Japanesque~」「~Rock~」「~Digital~」「~Shuffle~」といくつかのブロックに分かれていたが、それぞれを一つのコンサートとして堪能したいくらい、どのブロックにおいても、KAT-TUNの魅せ方の上手さに降参するしかなかった。「~Japanesque~」「~Rock~」「~Digital~」の中で、KAT-TUNが世間一般的に一番得意そうだと思われているのは「~Rock~」だろうか。そして最も遠いと思われているのは和の世界「~Japanesque~」だろうか。そんな偏見で見てしまうと、あっという間に先入観を覆される。「~Japanesque~」におけるKAT-TUNの和装の美しさ、またパフォーマンスにおいては、日本の美しい文化が彼らにはとても良く似合う。KAT-TUNがまとってきた色気が、日本らしさと綺麗にシンクロしていることに気付くまでに時間はかからない。そんな歴史を感じるパフォーマンスの一方で「~Digital~」では近未来的なものとの相性の良さも見せつけてくれる。この「~Digital~」と「~Japanesque~」はちょうど、一昨年、昨年と、嵐がコンサートのメインテーマにしていたことも思い出される。同じテーマを持っても、グループによって何をどう魅せるかが異なってくる、ジャニーズの本当の面白さがここにある気がした。

そして、今回のライブはステージ構成にもとても工夫が凝らされていた。前作の「Come Here」ツアーでは、アリーナクラスの会場で行われていたため、ほとんどのパフォーマンスをメインステージで行っていたが、KAT-TUNの真価はドームクラスでこそ発揮される。円を4つに分けたムービングステージが、中央に集まってくるのだが、その形は少しだけ歪で、なぜか真ん中に長方形の小さなステージが陣取っている。鈍感な私がそれが何を意味するのか、DVDの最後まで気付いていなかったが、これはKAT-TUNのファンの名称「‐(ハイフン)」を意味していたのである。4つの欠片が集まって円になる時、その中心にはファンがいる、ストレートに説明されるとちょっと気恥ずかしい工夫を、彼らは最後の最後まで秘密にして、最後にようやく映像で明かした。そんなファンを喜ばせるサプライズもKAT-TUNの得意分野である。

私は都合が合わず、このコンサートには足を運べなかったが、DVDで見てもやっぱりこの世界で一番好きなコンサートをつくる人たちなんだと実感する。生ものには場所と時間を共有しているという高揚感が付き物で、それがあるからファンは現場に通うのだが、KAT-TUNのコンサートは生ものでなくとも、それらより断然面白く感じられるから不思議だ。潔いほどの非日常。絶対的に普段体験することの出来ない非日常が、そこにあるからだろうか。ここにまだ結論はつけられない。これからも進化していくKAT-TUNのコンサートを、ここで定義付けるにはまだ早い。きっともっと楽しい世界を作り上げるだろうから。



DVD「KAT-TUN LIVE 2015 “quarter” in TOKYO DOME」の感想、大変遅くなりました。彼女に届くことを願って。