映画「Born in the EXILE ~三代目J Soul Brothersの奇跡~」

三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE初のドキュメンタリー映画「Born in the EXILE」公式サイト
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「ドキュメンタリー」というものがつくづく好きだなと思う。

【ドキュメンタリー】
実在の出来事を、虚飾を交えることなく記録/再構成した、映像・写真・文章。
「フィクション」の反意語ともいえるが、実際には両者の裾野は複雑に入り乱れている。
フィクションの中にドキュメンタリーの要素が入ってしまうこともあるし、逆もある。
「演出」と「事実」のどこに一線を引くかは、制作者の意識ひとつに任されている。
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最近はアイドルやアーティストのドキュメンタリー映画が増え始めている。テレビで密着ドキュメンタリーが放送されますと言われるよりも、ドキュメンタリー映画が公開されると言われた方が、見てみようかなという気になるのは何故だろうと考えていた。理由は二つある気がする。まず「映画」という形を選択するからには、それはただの記録としてではなく、一つの作品として美しく収められている場合が多い。「実在の出来事」でありながら、正しくクライマックスがやってくる、丁寧に物語が生み出されている場合が多いからかもしれない。もう一つの理由としては、見る場所が「映画館」という公共の場になることである。大きなスクリーンに映し出される映像を見ると、自然と集中力が発揮され、また自分一人だけでなく、その対象のファンと一緒に見ることで、同じ空間からファンの反応も伺うことが出来るからかもしれない。そんな理由から、私はドキュメンタリー映画が公開されると知ると、途端にフットワークが軽くなり、映画館へ足を運んでしまう。

今回見たドキュメンタリー映画は、「三代目J Soul Brothers」のドキュメンタリー映画。しかし正直なところ、昨年夏に三代目J Soul Brothersのライブビューイングを見に行ったくらいで(結局私はジャニーズの何に惹かれていたのか?三代目J Soul Brothersライブビューイング体験記)、その後特に三代目JSBについての知識が増えた訳ではない。EXILEファミリーの仕組みも文化も未だに分かっていないところだらけだ。そんな状態で見に行っても、ドキュメンタリー映画には多大な情報が詰まっているので、きっと見た後には全てがストンと落ちていくものだと勝手に思っていた。不勉強のくせに無敵になれるつもりでいた。しかし、このドキュメンタリー映画は、三代目J Soul Brothersの初ドームツアーに密着したものでしかなく、このグループの歴史や背景については、知識があることを前提に進んでいく内容だった。

映画の主軸は、この映画で初公開される新曲「Born in the EXILE」にある。ヴォーカルの今市さんと登坂さんが作詞を手掛ける、ファンへの気持ちが込められた新曲。これが出来上がるまでに、彼らがツアー中どんな気持ちでファンと向き合っていたかを時系列で追っていくことになる。私はアイドルやアーティストが、ファンのために作詞した楽曲が、いつもシンプルな言葉に集約されていくのが好きだった。例えば今回の「Born in the EXILE」であれば、サビに「愛をありがとう、夢をありがとう、この想いを死ぬまでずっと、胸に架けて離さないよ」という言葉が紡がれている。ファンがアイドルに対してこんなことを書くと、ポエミーだと揶揄されることもしばしばあるが、いざアイドル側がファンに対して言葉を紡ぐと、さほど変わらないダイレクト具合で、こちらに飛んで来る。けれどもこのピュアさを私たちは揶揄することは出来ない。本当に伝えたいことがある時は、これぐらいシンプルな言葉になってしまうものなのかもしれない。

今市さんが作詞している時の映像がとても印象的だった。作詞の方向性をスタッフと一緒に詰めている時に、彼は「良い人にしか会ったことがないんですよね」と言った。それを受けてスタッフは、「今市隆二性善説」とまとめていた。また「それって、ステージに上がった人にしか味わえない感覚だよね。ステージから客席を見てみたら、みんな笑顔な訳でしょ?その光景を見た人にしかない感覚だと思うよ」というようなニュアンスの話を彼にしていた。私は「良い人にしか会ったことがない」という今市さんのことを、作りこんだピュアなのではないかと、心の何処かで疑っていた。芸能界の中で生きていて、また今はその中でも特別な場所に位置づけている、絶対どこかで悪意を持った人に出くわしているであろうに、「良い人にしか会ったことがない」と言う彼のピュアさはあまりに眩しかった。天使かよって、そんなことを疑っている自分の心の汚さを反省するしかなかった。

しかし三代目J Soul Brothersで天使なのは、今市さんだけではなかった。ある曲の終わりに今市さんがお客さんに対して「みんなの夢が叶いますように!」と叫ぶ場面がある。その場面で「本当に叶えー!って思う」と言っていたのは、リーダーのNAOKIさんである。グループの中でも特に身体が大きくて見た目も険しい彼の口から、「みんなの夢が叶えー!」なんて言葉が出てくるのは反則。ズルい。どうしてそんなに客の夢が叶うことを願ってくれるんだ。そしてこの観客の夢が叶うことを願っている天使は、今市さん・NAOKIさん以外にも登場する。登坂さんである。最後の挨拶で観客に向かって「次に会う時までに、お互いひとつ夢を叶えてくることを、約束しませんか?」と問いかける。三代目J Soul Brtohersから出される宿題は、なかなかハードルが高い。凄まじい自己啓発力。でもやっぱり人間、そんなことを言われると嬉しいもので、きっと私もその場に居たら「明日から頑張ろう」というピュアさを発揮することになるのだと思う。彼らがこれほどまでに「他人の夢が叶うこと」を願うのは、本人たちの夢が叶っていく主因をファンのおかげと信じて疑わないからかもしれないと思った。それが「Born in the EXILE」の「愛をありがとう、夢をありがとう」に繋がっている。

ドキュメンタリーでは、“挫折”を経験した人間がフューチャーされることが多い。“挫折”は分かりやすく誰でも感情移入しやすい。全てが上手くいくように努力している人間よりも、何処かで一旦悩み足が止まってしまったけれどもそこを乗り越えた人間の方が、評価される場合なんかもある。今回の三代目JSBのドキュメンタリーでは、そういったあからさまな“挫折物語”はなかったものの、最もそういう物語性を強く感じたのは、ELLYのインタビューだった。自分は元々ストリートでやってきて、見た目もみんなと違う中で、みんなに合わせようとして迷っていた時期があった、「R.Y.U.S.E.I.」あたりからようやく本来の自分の姿で居られるようになったと話していた。映画が終わった後、女子高生2人組が「ELLYは個性強過ぎだよね」と話しながら映画館を出て行ったのを見たが、私が今回の映画の中で個人単位で最も興味を惹かれたのはELLYだった。

以前に見たPerfumeドキュメンタリー映画映画「We are Perfume WORLD TOUR 3rd DOCUMENTARY」)がライブパフォーマンス映像の盛り込み方が綺麗で、思わずPerfumeのライブに行きたいと思ってしまったので、今回もライブパフォーマンス映像が綺麗に盛り込まれることを期待していたのだけど、そこはあまりメインとして取り扱われてなくて、代わりに観客の表情がとても綺麗に切り取られていた。以前にE-girlsのライブDVDを見た時にも、同様のことを感じたが、ジャニーズのDVDでは考えられない程、観客の顔が映し出される。NEWSの「NEWS LIVE TOUR 2012~美しい恋にするよ~」は、オープニングに観客の表情がよく映し出されるライブDVDだが、それと同じくらい観客の反応をライブの一部として捉えられている。“熱狂”を表す時、会場全体を引きで撮るよりも、観客一人一人をピックアップして、びっくりして口を押さえている表情や、今にも泣き出しそうな表情を撮った方が、感動が大きくなる場合もある。中でもライブの最後に銀テープが降って来る様子をスローモーションにして、小さな女の子がそれを見上げて笑顔で手を伸ばしている様子を撮った部分は格別綺麗だった。銀テープは時に会場を戦場にしてしまう、ということなど忘れてしまう美しい画だった。

ドキュメンタリー映画”がやっぱり好きだと思った。次はもう少し対象を勉強してから見に行くことにする。