先日、高校の友人と遊んだ際、「Amazonプライム会員だったりする?」と聞かれた。半年くらい前に、AKB48関連のライブDVD見たさに、私はAmazonプライム会員になっていた。何故そんなことを聞くのだろうと思ったら、彼女は少し興奮気味に「『バチェラー』っていうのが面白いから見て欲しい!」と勧めて来た。Amazonプライム会員は一部の映画が無料で見れることは知っていたし、私も実際に『八日目の蝉』や『ルームメイト』等邦画をちょこちょこ時間のある時に見ていた。なので『バチェラー』というのは、洋画か何かだと思っていた。しかし詳しく聞けば、Amazonプライム会員向けに配信されている番組で、25人の女たちが1人の理想の男を奪い合う番組だというではないですか。彼女は私に分かりやすく「あいのりみたいな感じ」と説明してくれた。あいのり世代の私たちが、そんな番組に興味を示さない訳がなく、私は時間が出来次第『バチェラー』の視聴に取り掛かった。
2002年の放送開始から、瞬く間に全米で最も愛される国民的人気番組に成長した「The Bachelor」。たった1人の男性が、多数の女性の中から最高のパートナーを選び、1人にプロポーズをするというまったく新しい仕組みが数々のドラマを生み、現在では全世界30か国でエピソードが製作されています。
「バチェラー(bachelor)」とは独身男性という意味であり、本シリーズでは、真の愛を見つけ出すチャンスを得た、ある一人の幸運な独身男性バチェラーが、25人の女性たちと様々なデートを繰り返しながら、運命の相手となる最後の1人の女性を選び出していくという恋愛サバイバルが繰り広げられます。
圧倒的にラグジュアリーで非日常な世界で繰り広げられる、他のどの恋愛番組よりもリアルで、時に残酷な現実をお伝えします。2017年2月17日より、プライム・ビデオで配信中。
Amazon.co.jp: プライム・ビデオで配信中「バチェラー・ジャパン」: Prime Video
あらすじを読んだ段階では、何だこの男女平等ではない設定は、と思わなくもなかったが、1人の男に対して圧倒的に多すぎる25人という女性が繰り広げる物語には興味しかなかった。そこには絶対に、羨望や嫉妬が混じり合う女特有の空気が存在する。予告を見た段階で“気を引くために泣く以外、泣く理由ってありますか?”と言っている女性がいて、もう、何というか、BINGO!という感じだった。これは、これは、これは、大変だぞ、と。もう既に苦しい。私参加してないのに苦しい。勧めてくれた友人も「1回分見るだけで凄い体力使う」と言っていた。けれども、止まらぬ胸騒ぎ。お、お邪魔しまーす!!という気持ちで『バチェラー』の世界へダイブを決めた。
エピソード1は、参加する女性たちによるバチェラーへの自己紹介から始まる。アイドルの顔と名前を覚えるのが得意でも、似たようなゴージャスなドレスを着た女性たちが何人も出てきても、さすがに覚え切ることは出来ず、印象に残るような自己紹介をするか、特別顔がタイプかじゃないと、バチェラー自身も絶対覚えられないだろうなと思った。私は、「常夏生まれ、常夏育ちの智夏です♡」というアイドルの様な自己紹介をした、沖縄出身の宮城智夏さんを最初の推しに決めた。別にアイドルグループではないので、推しを決める必要はないのだけれど、これだけ女性が出てくると、自分の中の主人公を見つけたくなるもので、私は智夏ちゃんの笑顔とキャッチフレーズにやられた。
その後のカクテルパーティーでは、バチェラーからお誘いを受けた女性がツーショットでバチェラーと話をすることが出来る。そこでバチェラーがファーストインプレッションで誰のことを気に入っているのか、選ばれなかった女性は目の前でその現実を思い知ることになる。初日のカクテルパーティーはまだ様子見、という印象だったけれど、これも回を重ねるごとに深刻になり、女同士の熾烈な戦いに耐え切れず、泣き出してしまう子も出てくる。予告編で流れた“気を引くために泣く以外、泣く理由ってありますか?”は、この苦しみに耐えられず泣いてしまった女性に向けて、他の女性が放ったコメントだった。ただただ彼女たちの様子を撮影するだけでなく、あの時実際どう思っていたのか、心の中を探るインタビューも要所要所に散りばめられており、“気を引くために泣く以外、泣く理由ってありますか?”という秀逸なコメントを残した松長ゆり子さんは、その他の場面でもグッと物語を面白くするコメントを残してくれる方で、私は彼女を二推しに決めていた。推しは増やすもの。
タレントの坂本くるみさんは、その美しさからか、バチェラーからは距離を置かれていて、その分バチェラーからデートの誘いが無い仲間に対してとても優しかった。泣いてトイレに閉じこもってしまった子にいち早く気付き、話を聞いてあげるその優しさに、当のバチェラーが気付くはずもなく、他の女と楽しく会話している。女友達に優しくしている間に、恋が遠ざかってしまう悔しさに、見ている私が地団駄を踏みたくなる。他にこの状況を見ている男性がいる訳でもなく、バチェラーにはバチェラーの目から見える世界しかなくて、坂本さんの優しさを誰もバチェラーに教えてあげることができないのがもどかしかった。
着付け師の岡田ゆり子さんも不思議なパワーを持った女性だった。初めから自信満々で堂々としていて、何でも出来そうな彼女は、実際に誰よりも先にとある行動に出た。私は彼女の堂々とした振る舞いに羨望の眼差しを向けるのみだったけれど、とある場面で彼女は自ら他の女性に積極的になるよう促し始めた。彼女が目を付けた女性は蒼川愛さん。蒼川さんは岡田さんとは正反対のタイプで、「似た者同士で戦ってもしょうがないから、自分とは違う魅力を持った愛ちゃんと戦ってみたい」という理由で、蒼川さんの背中を押し始めたのだった。21歳にして手越さんのようなマインドの持ち主だなと思った。自分から物語を盛り上げようとする姿勢、嫌いじゃない。最高。
実際、彼女たちは私が思っていた程、ドロドロにはならなかった。大声で喧嘩したり、掴みあったり、私のヤンキー心がそういうものを求めていたような気がするけれど、彼女たちは日に日に仲を深め、去っていく仲間たちとの別れに、素直に涙を流していた。場合によっては、あいのりの方がよほどドロドロしていたし、人間味に溢れていたような気がする、と思っていたら、最新話がこれがもう本当にドロっとしていた。以前から女同士の間で評判のよくなかった柏原歩さんが、バチェラーからのツーショットデートのお誘いを受け、それをみんなに隠してデートに出かけた。帰ってきた時に、バチェラーから貰った薔薇を見せつけながら嬉しそうに話す姿に、他の女たちは嫉妬に狂った。私も一視聴者として腸が煮えくり返るくらい怒った。ムカつく。最高。「ムカつく」という気持ちと、「最高」という気持ちが、交互に押し寄せてくる感情の不一致こそが、私がこの『バチェラー』に期待していたもので、遂にこの瞬間を見つけられた、と嬉しかった。
毎週金曜日配信で、まだ『バチェラー』はこの後も続いていく。どこまでがリアルで、どこからがリアルじゃない、そんな議論が飛び交いそうな番組ではあるけれど、私はこの『バチェラー』に全力で踊らされようと思う。バチェラーがどの女性を選ぼうが、私の人生に一ミリも関係ないけれど、まるで自分ごとのように全力で踊らされようと思う。金曜日、お願いだから早く来てくれ。
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