春、別れの季節です。学生たちは第二ボタン争奪戦に命を懸け、大人たちは送別会とかこつけて酒に溺れます。桜が蕾を膨らませ始めた頃、世間の仕来たりと同じ様にジャニヲタにも今年度の卒業式が催されます。これは2014年4月~2015年3月までの間に、文字通りジャニヲタを卒業した者を盛大に送り出す式です。毎年行われるこの式は、ジャニヲタという奈落の底から自力で脱出した卒業者の栄誉を称えることが目的で開催されます。去っていく仲間たちに寂しさを覚え、また残留した者の中には来年こそ私もこの脱出ゲームで勝利を手にしてみせるのだと意気込む者もいます。どちらかと言えば卒業した者たちよりも、卒業したい残留者たちの方が思い入れの強いイベントかもしれません。卒業式では、卒業者の担当していたグループ別人数が発表されます。「去年はあのグループのファンが一番減ったけど、今年のファンは堪えたわね」「だって今年一年は活動が充実してたじゃない」「逆にあのグループは例年安定してたのに今年は卒業者増えたね」「まぁ、フライデーとか色々あったからね」等と分析厨がひそひそ声で早速分析を開始します。去っていった人数と入ってきた人数を相殺しないことには全体数の増減は分かりませんが、これがグループの人気度をチェックする指標の一部になり得ます。
ジャニヲタ卒業式のプログラムとしては、以下の通りです。卒業者の入場、司会者による開式の辞、「勇気100%」斉唱、卒業証書授与、残留者送辞、卒業者答辞、卒業の歌「さくらガール」合唱、閉式の辞、卒業者退場。ここで今年の残留者送辞と卒業者答辞の一部をご紹介しましょう。
残留者代表送辞:(前略)卒業者の皆様、本日はご卒業おめでとうございます。この1年は様々な出来事がありました。TOKIOや嵐や関ジャニ∞の記念年があり全体的に大きな盛り上がりを見せ、また年末のFNS歌謡祭においては久しぶりに派閥問題が解決、そして年明けには文春のメリーさんインタビュー掲載等、話題に欠ける事のない1年だったと思います。そんな中でもご自身にて強い決意を固め、ジャニヲタをご卒業された皆様の事を、私たちは羨ましくもあり寂しくも感じています。進路は様々かと思われますが、もう郵便受けに青い封筒が届くこともなくなり、ATMに振込用紙を挿入することもなくなります。時間的にも金銭的にも余裕が生まれる毎日をぜひ有意義にお過ごし下さい。またやむを得ずこちら側に戻ってくる様なことがあれば、私たちは両手を広げて笑顔でお待ちしております。(後略)
卒業者代表答辞:(前略)5年前、私は嵐の二宮くんを介してジャニヲタになりました。テレビに映る二宮くんにときめく毎日はとても楽しく、嵐のコンサートにも初めて足を運びました。チケット戦争には随分苦しみましたが、それも今となっては良い思い出です。私は仕事が忙しくなって趣味の時間を持つ事が難しくなり、この度ジャニヲタを卒業する運びとなりましたが、卒業者にはそれぞれ様々な理由があります。結婚を機に足を洗う者、地方転勤によってコンサートに行けず気持ちが冷めてしまった者、他に夢中になれる趣味を見つけた者、最近キテるらしい三代目 J Soul Brothersのファンになった者、それぞれに理由はあれど、ジャニヲタとして過ごした時間はかけがえのない時間だったことと思います。私たちは旅立ってしまいますが、これからもジャニーズはみんなに夢を与えるエンターテイメントであり続けて欲しいです。(後略)
答辞の後は全員で「さくらガール」の合唱です。「さくらのような君でした、春のような恋でした、いつまでも続いてゆくとそんな気がしてた」という歌詞を歌う卒業者の目には涙が光ります。きっと応援していたタレントの事を思っていることでしょう。卒業者が退場していく時は、残留者によってペンライトのアーチが作られます。各グループのコンサートグッズであるペンライトは、それぞれの色に光り、卒業者を温かく照らします。東京ドームのコンサートで見るペンライトの海とはまた別の感慨があります。卒業式終了後、学生であれば卒業生の第二ボタンを求めて在校生が先輩に群がるところだと思いますが、ジャニヲタの場合はここでグッズの譲渡が行われます。卒業者がこれまでに集めてきたグッズ、及びDVD等を残留者に渡します。手に入れられなかった限定ものの商品や、録り逃した過去のテレビ番組等、希少なものを持っている卒業者の周りには沢山の人が集まります。それだけの歴史を支えて来たファンが去ってしまうという重みを感じながら残留者はそれを受け取るのです。
この1年ジャニヲタを卒業することが出来なかった私にとって、卒業者の皆様はとても眩しかったです。あと何回私はこの眩しさを目の当たりにするのでしょうか。
以上、「ジャニヲタ卒業したい」が口癖の私による全編妄想でお送りしました。暇か。