逆説としての「BYAKUYA」
念押しとしての「White」と先程書いたが、アルバムの中身は単純にこの「White」を強める為に集合した楽曲が並ぶ訳ではない。7曲目に突然「Black Jack -Inter-」という音楽を挟み込み、一旦そこで我々は夢の世界へと連れられる。先程まで聴いていた爽やかでリズミカルな楽曲から一転、朝が夜に変わる様に、太陽が月に変わる様に、明が暗に変わる様に、「BYAKUYA」という楽曲が始まる。「白夜」とは、「真夜中になっても薄明になっているか、または太陽が沈まない現象のこと」だが、「白」というキーワードを使いながらこれまでの世界観を一気に引っ繰り返すことに成功している。「BYAKUYA」が終わると次は「ONE -for the win-」という明るいシングル曲が始まり、そこで私たちは夢の世界から目が覚める。アルバムを聴いている内に別の世界に迷い込んでしまった様な不思議な雰囲気に誘い込まれるのがこのアルバムの最大の注目点だ。尚、歌詞カードでもこの7曲目~8曲目にかけてのページのみ黒いラインが使われていて、一旦物語が切り替わる合図になっている。
作家陣にヒロイズム氏不在
今作のクレジットを確認した際、NEWSファンにとってはお馴染みのヒロイズム氏の名前が無かった。2008年発売のアルバム「color」に収録されている「みんながいる世界をひとつに 愛をもっとGive & Takeしましょう」「FLY AGAIN」からスタートし、ベストアルバムを出す際にファン投票1位に輝いた「エンドレス・サマー」、4人での再始動楽曲「チャンカパーナ」、また「美しい恋にするよ」コンサートにおいてメンバーが涙を流しながら歌った「フルスイング」等、NEWSの代表曲と言える楽曲を手がけて来たのがヒロイズム氏だった。彼が描く“挑戦を続ける青年”の姿は、波乱万丈な運命に振り回されても尚立ち上がるNEWSの姿と絶妙にリンクし、彼の楽曲は高い人気を誇っていた。かくいう私も「エンドレス・サマー」をNEWSの楽曲の中で1番愛しているだけに、今回の作家陣にヒロイズム氏の名前がなかったことはとても残念だった。しかし4人での再始動から3年が経過した今、一旦これまでの“挑戦を続ける青年”のイメージから離れて新しい印象をつくっていく良い機会になったのかもしれない。
take4氏、TAKA3氏、他専属作家の投入
前作アルバム「NEWS」の「渚のお姉サマー」「HIGHER GROUND」を最後にNEWSの楽曲クレジットに名前を連ねることが無くなったヒロイズム氏に代わって、シングル「ONE -for the win-」以降よく目にする名前が出てきた。それが、take4氏とTAKA3氏。名前が似ているせいで最初こそ混乱したが、今作「White」はほぼこの2人が担当している。take4氏が一番最初に手がけたNEWSの楽曲は、シングル「WORLD QUEST/ポコポンペコーリャ」のカップリング曲「Hello」、TAKA3氏が一番最初に手がけたNEWSの楽曲は、シングル「ONE -for the win-」のカップリング「SEVEN COLORS」「FLYING BIRD 」。どちらもNEWSが4人になってから加わった作家である。この両氏は一体何者なのか、と思って調べたらヒロイズム氏が所属する「ever.y」の作家であり、ヒロイズム氏の弟子の様だった。ヒロイズム氏の想いを継承した二人がこれまでのNEWSからブレることのない音楽を創り上げるのは当然のことだったのだ。またこの他にもNEWS・テゴマスの常連作詞家であるkafka氏、Hacchin´Maya氏等、NEWSの音楽性を知り尽くした人々による完璧な布陣が出来上がっている。アルバムと言うとこれまでにない作家を迎えて新しい境地を開拓する場合も多いかと思うが、彼らは今一度自分たちのカラーを固めるつもりであることが分かる。
「フルスイング」や「HIGHER GROUND」等、これまでのNEWSに必ず付いて来た自分たちの境遇を鼓舞する様な楽曲が一旦消えてクリアになった。表題曲にあたる「MR.WHITE」では「ファンタスティックな未来へと誘おう」と最後に歌う。前作に収録されていた「4+FAN」の「やっぱ僕らファンタスティック!」とも通じる部分がある。「真っ白な世界からはじめよう」と彼らは何度でも自分たちをクリアにしていくつもりだ。これらの楽曲を持って彼らはどんな新しいスタートを見せてくれるのか。今月から始まるコンサートツアーで「BYAKUYA」をキーポイントとしながらどう「White」の世界を創り上げていくのか改めて楽しみだ。