2015年早々に新しい沼に落ちた。1月9日放送の「中居正広の金曜日のスマたちへ」がE-girls特集だった。何気なくテレビを付けていて見た訳ではなく意図的にこの時間にテレビの前に居る様にしていた。というのもこの日の「金スマ」は、E-girls特集の他にEXILEグループの説明や、LDH社長でもあるEXILE HIROさんの過去を辿るドキュメント映像も含まれていた。何故この「金スマ」を見ようと思ったのかと言えば、恥ずかしながら私、EXILEグループのことをほとんど理解していなかったからだった。EXILEのことは勿論知っていたが、弟分の「三代目J Soul Brothers」や「GENERATIONS」のこととなると全く分からず、妹分と呼ばれている「E-girls」のことも「Dream」「Happiness」「Flower」の3組が集まっているということも知らなかった。
昨年までは知らないものは知らないままで良いのではと思っていたのだが、いよいよ無視しておくことは出来ない程、勢力が強くなっていることを最近感じていた。「三代目J Soul Brothers」の「R.Y.U.S.E.I.」のダンスを非ヲタの友人から「あれいいよね」と話を振られたことがあっただが、私は彼女の指しているダンスのことをまるで知らなかった。彼女が特別「三代目J Soul Brothers」に詳しかっただけだろうと思っていたが、その「R.Y.U.S.E.I.」がレコード大賞を受賞したと聞いて、もしかして一般知識として押さえておくべきだったのではと思い始めた。またジャニーズと似たような男性アイドルグループが出て来ると、大抵が見えない圧力に押し潰されて表に出て来るのが難しくなるイメージが強かったが、EXILEグループはその狭間をすり抜けて順調に勢力を拡大していることも興味深かった。世の中の現象には必ず理由があると思いたがりの私は、「中居正広の金曜日のスマたちへ」を見ることで、その謎を解明しようと思っていた。
ところが、そんな研究姿勢で挑んでいた「金スマ」でうっかりE-girlsにハマることになる。そもそもE-girlsのことは、看板として活躍する金髪のAmiさんと、ジャニーズWEST藤井流星くんの妹である藤井萩花さん・夏恋さん姉妹、あとは自分と同じ名前だからという理由でAyaさんしか名前と顔を一致させていなかった。彼女たちに興味を持つことは今後まずないだろうと踏んでいた。そもそもEXILEにハマらなかった私が、同系列の妹グループにハマることはないだろうという安易なこじつけによる発想だった。またE-girlsの雰囲気も自分の好みとは遠かった。
数年前アイドル戦国時代と呼ばれていた時期に、女子アイドルを学校の雰囲気に例えるのが周りで流行った。例えばこのグループは「共学公立高校」だがこっちのグループは「私立の女子高」等と、彼女たちの持つ雰囲気から自分の青春時代を思い出してどんな校風の学校に通っていた女の子と似ているか擦り合わせていた。また女子アイドルを形容する時に「スクールカースト」という単語も頻繁に出て来る。E-girlsはその中でも「スクールカースト高め」「共学公立高校」の雰囲気に近いという意見をよく耳にしていた。E-girlsと今最も対局にあるグループを挙げるとすれば「乃木坂46」にあたるだろうか。しかしこの「スクールカースト高め」という表現に私はいまいちピンと来ていなかった。そもそも自分の青春時代を思い出しても、カースト上位層にもこんな女の子たちはいなかった。しっかりとしたアイメイクに、真っ赤な唇、髪の毛は明るく、キレキレのダンスをする女の子、近年減少傾向にありつつあるという「ギャル」の風貌をした女の子たちと、私は自分の青春時代に出会っていなかった為に、彼女たちに対するベクトルの向け方を知らなかった。
では何故今E-girlsにハマることが出来たのか。入口になる一人の女の子が居たからだった。E-girlsでボーカルを担当する鷲尾怜菜さんだった。E-girlsのことをまだよく知らない頃から一人気になる女の子がいた。先程も紹介したように私の青春時代からは遠い独特の雰囲気を放っている彼女たちの中に一人だけ異なる色を持った女の子がいて気になっていた。彼女だけ違う衣装を着せられているようで、群衆の中でポツンと光が当たっているように見えた。それが鷲尾怜菜さんだった。彼女は実際に「しゃべくり007」にE-girlsとして出演した際に、しゃべくりメンバーに「鷲尾さんだけ雰囲気が違う」「一人だけZIP!のお天気お姉さんみたい」等といじられていた。他の人から見ても実際にそういう風に見えていたのである。「金スマ」では彼女の歌手としての覚悟がピックアップされ、高校を中退して歌手になる夢を追いかけた鷲尾さんのストーリーが放送された。物語を持つアイドルが好きな私はそこで一気に掴まれ、鷲尾さんを入口としてE-girls入門を決めた。
「金スマ」放送終了後、その後に続けて見ようと思っていたテレビを消して、私は動画サイトでひたすらE-girlsの動画を漁った。鷲尾さんに密着取材した映像を見つけ、その映像を見ている内に鷲尾さんの喋り声に夢中になっていく。勿論ボーカルとして歌声も素敵なのだが、鷲尾さんは少し鼻にかかっているけれど歯と舌の間から心地よい高音の喋り声を発する。また歌っている時は、感情を込める為なのか、少し困っている様な表情をすることが多い気がしていたが、素の彼女はよく笑い、目尻がぷるんと垂れる笑顔が何とも可愛かった。女子アイドルの最強の武器である「守ってあげたくなるオーラ」を鷲尾さんは纏っている。AKB48の島崎遥香さんとも雰囲気が近いかもしれないと思った。
翌日にはiTunesカードを購入してきて「Follow Me」と「Mr.Snowman」をiPodに入れた。この2曲はどちらもサビで「Follow me」や「Snowman」という単語を何度も繰り返すことから、テレビで流れると一発で覚えられるキャッチーな楽曲だった。その2曲がiPodに入っただけで翌日から妙に楽しく、そして今日我慢出来ずに最近発売されたアルバムを購入して来たのだ。このアルバムには夏に行われた武道館でのライブDVDも付いていて、女子アイドルのライブDVDを買うことはなかなかない私にとって、久々の購入だった。
ライブDVDはとても楽しかった。E-girlsに興味を持つまで一つ誤解していたことがあった。本来であれば全員が歌もダンスも行うのが従来のアイドルの姿であり、E-grilsはそこにはっきりとした役割分担を決め、ダンスを踊る子たちはマイクすら持っていなかった。これまでの固定観念から私はそれを“残酷なこと”だと勝手に思い込んでいたのだが、歌を歌う人たちはそれに専念し、ダンスを踊る人たちはそれに専念出来るように、役割を二分化することによって、より高度なパフォーマンスを披露するという目的があってのことで、それがライブDVDを見たら一発で理解出来た。ダンスを踊る人たちが決して“脇役”なのではなく、彼女たちも歌を歌う人と並んで“主役”なのである。どちらかが影となってしまわないように、両方に光が当たるように、360度ステージを採用しているのはそういう意味が込められているのではないかと思った。正面を作ってしまうと必ず手前と奥という関係が出来てしまう。360度ステージはパフォーマー全員を主役にするのに適していた。またこのライブDVDは度々観客たちの顔が映っていた。観客の顔を映すライブDVDは、観客たちの興奮した表情を見ることによって、よりステージ上のパフォーマーたちの輝きが増すので好きなのだが、引きで映された時には男性も沢山いるのに、アップで映されたのは全員女性だった。E-girlsは女性に指示されているグループであるということを印象付ける為に、運営が敢えて女性ばかりを映し込んでいるのか、そもそも女性の方が撮りやすいからなのか、詳しいことは分からないが、なにも考えずにそれを見ていると、女性アイドルにしては珍しく女性人気が高いグループの様に映る。実際の男女比は会場に足を運んで見ないことには分からないなと思っているが、「スクールカースト高め」である方が女性人気が高いのだとしたら、それは面白い現象だなと思った。それはまた実際にE-girlsの現場に足を運ぶ機会が出てきたら改めて考えてみたい。
そんな訳で本来の目的としていた「EXILEグループを理解する」を飛び越えてE-girls沼に落ちてしまったが、自分がハマらないだろうと思っていたグループに落ちていくのはその意外性も後押しすることからとても楽しい。新しいことを知っていくこともやっぱり楽しい。2015年一発目の新規入門は「E-girls」と定め、暫くの間愉しみたい。