「AKB48全国ツアー2014『あなたがいてくれるから。~残り27都道府県で会いましょう~』高知公演」

「私AKB嫌いなんだよね」会社のランチルームで聞こえてくる自分の好きなアイドルに対するディス。そもそも大して彼女たちのことを知らないはずなのに、「興味がない」よりももっと濃厚な「嫌い」という感情を抱けるのもまた一種の才能なのかもしれない、と思いながら耳で受け流していた。周りにその対象を好きな人がいるかもしれないのに、大声で自分の嫌いを主張出来るのは、そこに賛同がついてくると確信しているからだ。「好き」という主張よりも「嫌い」という主張をした自分の方が優勢的に仲間を得られると知っているからこそ、人は「嫌い」でコミュニティを作りたがる。ならば、私の周りにはAKBを「好き」な人よりも「嫌い」な人の方が上回ってしまっている、という状態に気付いて唖然とした。

3年前にもAKB48の全国ツアーが行われ、今回と同じくチームKが高知にやって来た。3年前と言えば、AKB48知名度がグンと上がり、チームKには当時総選挙2位の大島優子さんらが在籍していたので、チケットの倍率が非常に高く、私はせっかくの高知公演を見ることが出来なかった。その代わりに普段からアイドルに対して特別こだわっている訳ではない地元の友人たちが、知らぬ間にチケットを取っていたりしてAKBが大衆に広く愛され始めていたことを実感した年だった。あの当時は圧倒的に「好き」という主張の方が周りで幅をきかせ「嫌い」という主張は隅の方で小さくしているしかなかった。

あれから3年が経過し、またしてもチームKが高知にやってきた。3年前にチームKの中では後輩組に位置付けていた横山由依さんが、今回はキャプテンとして高知に戻ってきた。3年の時が経過してAKBも姿かたちを変えたように、私も3年分の心の変動を感じるだろうかと思っていたが、「嫌い」という評を気にしていたことが馬鹿馬鹿しい程に何の躊躇いもなく「好き」だと思えた。伝説的に扱われたメンバーがその場所を去っていこうが、個人単位で夢を追いかけている少女たちの輝きは今も変わらない。出入りによる変化を区切りと捉えがちだが、AKBはいつまでも彼女たちの通過点として機能し続けている。