DVD「KOICHI DOMOTO Concert Tour 2012 “Gravity”」、「KOICHI DOMOTO CONCERT TOUR 2010 BPM」、「KOICHI DOMOTO CONCERT TOUR 2006 mirror」

「友達に借りたのに見てなかったDVDを年内に片付けようシリーズ」、前回のPLYZONE'13に続いて今回セレクトしたのは「KOICHI DOMOTO Concert Tour 2012 “Gravity”」だった。他のDVDを借りた際に「あややさんに見て欲しいので」と一緒について来たこのDVDを長らく手を付けないまま放置していた。何故すぐに手を付けなかったのかと言えば、私は堂本光一さんの作品に対する知識がほとんどなかったからだった。曲もシングルとなってリリースされたもののサビを聴いたことがある程度、そんなレベルでコンサートDVDを3時間見続けられる自信が正直なかった。しかしせっかく好意で貸して下さったものを見ないのも勿体無いなと思い、ようやくプレイヤーの中にディスクをセットした。

が、これがとても良い意味で大きな誤算だった。このDVDを見終わった直後の興奮した私のツイートがこちらである。
という訳で見終わった直後にブックオフに駆け込み買ってきたのが以下の2つのDVD。テレビの前で長時間じっとしてるのが苦手なのでDVDと向き合うことを得意としていない私が、ようやく重い腰を上げて見てないDVDを片付ける企画として始めたのに、その過程で新しいDVDが増えてしまうという不測の事態だった。けれども堂本光一さんのコンサートにはそれだけの魅力が詰まっていた。

堂本光一さんのコンサートが素晴らしい理由は、「自分を神格化する上手さ」だと思った。ジャニーズのコンサートでは一般的に、ステージの形として外周や花道が用意され、会場の真ん中にはセンターステージ、また奥にはバックステージが用意され、後ろの座席のお客さんとも距離を縮められるような構成になっていることが多い。それに伴い「ステージ間の移動の為に使われる曲」というものが生まれ、また「お客さんに手を振る時間の為に使われる曲」というものが生まれてくる。勿論、お客さんの中にはこれを楽しみに来ている人もいるので、一概にそれが悪と言う訳ではないが、私はこの時間に最もコンサート中「飽き」を感じていた。「魅せる」ということから一時的に解放された出演者もこの一瞬に気が緩んでリラックスした表情になっていたりする。けれども長いコンサート中出演者がずっと気を張った状態で居るのも気力と体力に限界があるだろうから、私はこれをコンサートの必要条件として飲み込むことにしていた。しかし、堂本光一さんのコンサートはこの「飽き」を感じさせる隙が一切なかった。ステージは基本的に外周がなく、ほとんどの楽曲のパフォーマンスをメインステージで行う。主役はたった一人の状態で、ずっとメインステージにいるのに「飽き」が来ない、それはそこで行われるパフォーマンスにひたすらに興味を持続させる巧さがあったからである。とは言え、光一さんのコンサートはジャニーズのコンサート特有の派手なステージセットはあまり武器として使用していないと感じる。どちらかと言えば、ダンサーを武器として、機械ではなく人間が生み出す演出で魅せられることが多い。あと、最も光一さんのコンサートの世界観を作りあげているのは照明である。後ろから光を当てれば、光一さんのシルエットだけが浮かび上がり、幻想的な世界を創り出す。また光で光一さんの周りを囲めば、ガラスの中に閉じ込められた人形のような切なさを生み出すことが出来る。光でいくらでも見え方を変えられる、ということを知っていて、また自分を商品として如何に素敵に飾るかということに余念がないということを思い知る。これが常々コンサートとは、物理的な距離を縮めるものではなく、ファンと一緒になって創りあげるものでもなく、主役の作る世界の中に酔いしれていくものであって欲しいと願い続けた私の理想郷、ユートピアだと思った。

「神格化」されたステージを見せつける一方で、MCには非常に現実的な姿を見せるのも光一さんのコンサートの魅力のひとつとして記しておきたい。自ら「現実を突きつけるアイドル」と自己紹介していたが、先ほどまでひたすらに幻想を演じていた人が突然我々と同じ世界に降りて来た、という感じがする。ファンに媚びるような発言はなく、どちらかと言えばファンを突き放すような発言が多い。しかしその後それを自分で回収するところまで含めて堂本光一流のトークの流れが出来上がっている。分かりやすい言葉で言えば「ツンデレ」をひとつのMC中に何度も繰り返し行うようなサイクルが出来上がっていて、それがまた自然に行われるので嫌なイメージを抱くことなく、むしろますます光一さんに貶められたいという願望まで出てきてしまう。そのトークの中に「みんなこういうの好きでしょ?」とか「こういう風に聴いてたでしょ?」という問いかけがある。それらは全て光一さんが一旦ファン目線に立って考えていたことであり、我々は彼の思い通りに心を動かされているに過ぎない。光一さんの掌の上で転がされていたことを思い知るが、「ファンがどう考えるか」という嗅覚センスの良さには舌を巻く。大抵「ファンが喜ぶことを考えた」というジャニーズタレントの発言に対しては「ソレジャナイ」「ちょっと違え」と首を傾げることが多いが、光一さんのステージセンスは直球で私たちの心に突き刺さってくる。それは「SHOCK」というショーを長きに渡って行っている舞台的な嗅覚が鍛えられているからかもしれないが、奇をてらった事に挑戦するよりもまず何よりもステージの上で自らの足で立った状態で何をするかを考えるブレなさはとても信頼出来る。

ここまで書いていても自分が堂本光一さんのステージを上手く説明出来ているか不安でしかないし、全ての事象は大体言葉で説明出来ると思っていた自分が自らそれを放棄して「考えるな、感じろ」と言いたくなっているが、とにかく私のような、コンサートではその世界観に溺れ死にたい系のファンにとっては快楽のステージでしかない。GravityのDVDで「ジャニーさんに初めて褒められた」と語っていたが、思わずジャニーズ事務所の社長が褒めたたえてしまう程のクオリティがそこにある。もう今後他のグループのコンサートを見に行っても「みんな堂本光一さんにプロデュースされろ」としか思えなくなる程の中毒性がある。うっかりジャニーズで一番好きなコンサートが変わってしまうようなSHOCKがある。上手いことを言った訳ではない。でも思い返してみれば、私がジャニヲタに転がり落ちたのも堂本光一さんプロデュースの「☆☆I★N★G★進行形」というグループを好きになったことが始まりであり、私をジャニヲタに引きずり込んだのも元はといえば堂本光一さんだと言っても過言ではない。その原点が素晴らしいのは当たり前の話なのに、何故ここまで一度も目を向けて来なかったのか、これまでのジャニヲタ人生を深く反省することにした。そして次回の堂本光一さんのソロコンサートを見に行くまではジャニヲタを辞めることが出来なくなってしまった。試合延長。絶対的に好きだ、というものを見つけてしまった幸せを今感じている。

さて、楽しくなってきた「友達に借りたのに見てなかったDVDを年内に片付けようシリーズ」。次回は何を見ようか。