もう既に“売れている”ものにはさほど興味がなかった。アイドルを好きになる時、人にはそれぞれ様々な基準があると思う。歌が上手い人が好き、ダンスが上手な人が好き、優しい人が好き、ワイルドな人が好き、その人自身が纏っている性質に惹かれて好きになる人が多いと思うのだが、私はその人が置かれている環境を見て好きになる場合が多くある。環境は、彼らが手放したいと思っても手放せるものでもない場合が多い。売れたい、と思ってもその思いだけではどうにもならない場合もある。そのどうにもならない環境から少しずつ脱出していく後押しをしたい、私なんかが何かをしたところで世界は一ミリも動かないかもしれないけれど、「応援する」「支える」という行為をしているつもりにさせてくれるアイドルを選びがちだ。だから本人たちには全く罪はないのだが、既に“売れている”ものにはさほど興味がなかった。
なので5年振りに嵐のコンサートを見た。5年前嵐は10周年を迎えていた。国立競技場の外にはチケットを入手することが出来なかったファンが溢れかえっていた。チケットを余らせている人がいないか「お譲り下さい」という紙を持った人が、会場に入る数と同じくらいいるのではないかと目を疑った。駅前から会場までの道のりはこれから会場に入る人たちの興奮と、会場に入れない人たちの嫉妬とで、今にも空気が破裂しそうだった。ここが世界で一番濃い場所だと思った。
5年前のコンサート中、私は涙を流し続けた。“売れているもの”には興味がなかったはずで、物語の何処にも私は加担して来なかったはずなのに、“売れているもの”には心を震わせるドラマがあり、知らず知らずの内に私はそれを共有させて欲しいと願っていた。10周年の今ここがもしかしたら彼らのピークに当たるのかもしれないし、このまままだ走り続けるかもしれない、今後どうなるか分からない未来のことを考えて、私の目からはこれまで触れてこなかった分のエネルギーが一気に溢れ出した。
あれから5年経ったが、彼らはまだ走り続けていた。その勢いは衰えることなく、国立競技場では受け止めきれなかったファンたちを今度はハワイという異国の地まで導き、15周年という節目を盛大に迎えようとしていた。映画館の中はまたしても現地にいるファンに対する嫉妬の空気が充満していたが、キャパオーバーの深刻度は5年前よりも増しているような気がした。けれどもそれは彼らがこの5年間気を抜くことなく更に加速した結果であり、敬意を表すべきことである。あの頃よりも更に売れた嵐は覇者としての風格を纏い始めた頃だろうか、そんな予測をしていた。
けれども嵐は謙虚だった。「地に足がついていない状態が今も続いている」とはリーダーの大野さんの言葉だっただろうか。コンサートの合間に流れるインタビュー映像の中で、各々が語る口調には、覇者となった自覚よりも無自覚の方が印象として残った。自分たちが人気を博してきた理由が分かっていれば、必然として今の環境を受け入れていると思われるが、そうではないからこれからもその答えを探す為に走り続ける、というスタンスが嵐に最も適したスタンスなんだろうなと思った。もしかしたら本当はもうどうすれば今の地位を保ち続けられるか、答えは見つかっているかもしれないけれど、そうではない振りをして分かっていない振りをして、自分たちですらも騙しながら走り続けていくつもりなのかもしれないと思った。
私はまた今回も泣いた。“売れているもの”の尊さに泣いた。冷静には見ていられなかった。海を超えて人々を巻き込んでいく嵐に素直に私も巻き込まれようと思った。最後にヘリに乗って空の彼方へ消えていく嵐を見て、次に私が嵐を見る時にはどんな風に泣けるだろうかと楽しみに思った。
以下、ライブビューイング後の感想ツイートを抜粋。
嵐のライブビューイング行って来た、また後でじっくり感想書く。
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
嵐のコンサートは10周年の時にお邪魔させてもらってきっとここが嵐のマックスだろうから見ておきたいと思って5年前に見に行った訳だが5年経っても彼らはマックスを更新し続けて国立からハワイの舞台へ世界を拡大してそれでもまだ走り続ける意志を感じてとても尊かった
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
ジャニーズのコンサートの「嘘でしょそんな演出想像の斜め上過ぎるわランキング」第1位は今までKAT-TUNの馬に乗っての登場だったんだけど今回の嵐のコンサートで首位強奪されたわ
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
嵐にとってライブとは?って質問の二宮さんの回答がすげえお気に入りで嵐に限らず他のグループもみんなこの質問の回答は自分たち主体でどう感じるかって話をすることが多いと思うんだけど二宮さんの「神格化する瞬間」って回答は俯瞰出来ないと出て来ない言葉だなと思ってすごく感銘を受けた
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
やっぱり櫻井さんという識者がいることは嵐の絶対的な強みだと思ってここまで嵐に人気が出たのは全て櫻井さんの思惑通りで我々は櫻井さんの手の中で転がされているのではないかと思ってるけどSMAPのコンサートでも中居さんに対して同じ様に思ったので卵鶏だけど人気と識者の有無は関係ある気がする
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
櫻井さんが最後の挨拶で「僕たちは仲が良いと言われるけどもしかしたらお互いに寄りかかりながらじゃないと立っていられなかったのかもしれない」って言っててその挨拶はズルいと思った。きっとそんなことはないだろうに自分たちの弱さがそうさせてたのかもって曝け出せる櫻井さんの強さ。
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
「誰かが君を惑わせ迷宮に迷い込んでも僕がきっとその手を強く引くよ」と嵐は言うけれど我々を迷宮に惑わせてるのは君たちなんだいい加減気付いてくれと思いながら迷宮ラブソングを聴いていた
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
最後の挨拶で大野さんが一番最初に泣いちゃってその次の挨拶だった相葉さんが貰い泣きした感じの声で喋り出してそれを見た端っこの末ズ二人がやっぱりなって爆笑してて櫻井さんはその光景を優しい表情で見てるっていう光景が今回のベストシーンでこのまま時間が止まればいいのにと思った
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
SMAPは自分たちがトップに立っていることを理解しているし自分たちがトップに立ち続けることが出来ている理由も自分たちの中に落とし込んでいる様な経験値が産んだ余裕が見えるけど嵐はまだ峠を越えていない不安を抱えていることが感じ取れて嵐に入り込める隙はここだったかと腑に落ちた
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
「地に足ついてない状態だった、今でもそうだけど」って誰かが言ってたけど、売れるって理由が分からないと怖いことなんだろうなと。でも俺たちは売れるだけのことをしてきたって思うよりも、何故自分たちが売れたのか分からないから答えを探す為に走り続ける、の方が嵐に向いてるんだろうなと思った。
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
映画館にいた人たちの反応を見ても大半ががっかりしていたので私も恐れることなく言うけれど、私が一番楽しみにしていた曲がダンスアレンジ曲となりそのあとに原曲でのパフォーマンス来るかと思いきや別の曲に切り替わってしまったのは本当に残念でならない。最近のコンサートで飽和状態だったのかな。
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
大サビで大野さんが出てくる曲ラスボス感あって本当良いよね。あそこでここまでの音を大野さんが全て回収していってまたその後綺麗に纏まった音をもう一度華やかに解き放っていく感じ。大野さんが後ろから歌いながら歩いて来る時のキターっていう快感。大野さんに世界のパワーが集中する感じ。
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
インタビュー映像で嵐が喋ってるのに対して現地の人用に英語の字幕が出てたんだけど我々は嵐の声に耳を傾けてりゃいいんだけど人間の本能なのかつい字幕の方追っちゃって松本さんが「少しずつ嵐になっていった」って言った時に「I became “ARASHI”」って出てて超かっこいいって痺れた
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
自分たちを取り巻く環境が変わり始めた時の話を松本さんが「2009年から2010年にかけて誰かがドラマに出ている状態が5クール続いている時があった」って言っててこれが人気者になるヒントかって思ったけどよく考えたらそれはもう人気者になった後に必然としてついてきた仕事だなと思い直した。
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
昨日の宮田じゃないけど嵐のコピー製造機は相葉さんだなと思って嵐にとってライブとは何かって質問に対して「リアルだけどファンタジー、リアルファンタジー」って回答してて二宮さんの「神格化した瞬間」とは別ベクトルですげえ良い名言だなと思った。ファイナルファンタジーみたいに言うなよ。
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
どう考えても我々がアイドルに楽しませて貰ってる立場でしかないのにアイドル側が「~してくれてありがとう」とか言うから本当困る。「最高の15年をありがとう」って今日も松本さんが捌けてったけどこの15年を最高にしたのはYOUの強さ所以だぞってハワイまで言葉を投げ返してやった。
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
5×10の歌詞にパワーがあるのは勿論なんだけどちょうど「5人でいる。ずっといる。」の時に歌詞が出てるモニターを背景に嵐が歌っている姿が映し出されてデビューの時と同じ人数で居続けることが出来なかった数々のグループが頭を過ぎってしまい咽び泣きそうになった。「ずっといる。」という奇跡。
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
今月立て続けに飯島班のトップとジュリー班のトップのコンサート見れて良かったなと思う。売れているグループのコンサートが必ずしも自分に合うかと言えばけしてそうではないけれど逆にその理由を突き詰めるのも楽しいし売れることの側面を考えていく作業はすごく頭を使うからわくわくする。
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
嵐の最年少が主体になって作っているコンサートを関ジャニ∞の最年少とKAT-TUNの最年少がわざわざ現地まで見に行ったと聞いてコンサートに対して熱心に取り組む最年少ズ最高だな
— あやや (@hraom) 2014年9月20日
2日間終わったからネタバレ混みで話すけど私は常々OPとEDを同じ世界観に統一したコンサートが好きだと言ってるけどOPヘリで登場した嵐は地上でどう魅力的にEDを締めてくれるのだろうと思ってたらヘリで帰って行ったのでEDとして正論過ぎて映画館の椅子からずり落ちそうになった
— あやや (@hraom) 2014年9月21日
コンサート会場にヘリで来てヘリで帰られたらもう本当に自分とは世界が違うことを認めるしかないよね。さぁコンサート終わったから私たちもヘリで帰ろうとはならないもんね。私たちの知らない空の彼方へ消えていく嵐、手を伸ばしても絶対に届かないことが物理的に証明された瞬間だった。
— あやや (@hraom) 2014年9月21日