<6>10年以上ジャニヲタの私が洗脳努力を続けても一切揺らぐことのなかった幼馴染みが、20代半ばにしてKis-My-Ft2を通して突然ジャニヲタになってしまった問題

キスマイ冬のコンサート「Kis-My-Ft2 SNOW DOMEの約束 IN 東京ドーム IN 大阪ドーム」のチケットの当落結果が出た。ジャニーズのチケット抽選結果は、向こうから教えてくれるものではない。こちらから抽選結果照会番号へ電話し、自分の耳で確認する必要がある。勿論その確認をしなかったとしても、当選していればチケットはコンサート2週間前になれば自宅に届くし、落選していれば後日返金書類が到着する。郵送されて来て初めて結果を知るという方法もあるが、恐らく9割以上のジャニヲタはその前に電話で当落の確認をしている。

満を持してファンクラブに加入し、今回初めてコンサートの申し込みを済ませた私の幼なじみも、例外なくこの抽選結果照会システムに挑もうとしていた。抽選結果の当日私は彼女と一緒にご飯を食べ、帰りの車中で電話をスピーカーホンに設定し、静まり返った車の中でその音声案内を聞いた。

「現在、大変混み合っております。しばらく待っておかけ直し下さい。」

私にとっては聞き慣れた女性の声だった。場合によってはこの声を100回以上聞いてからやっと繋がるということもある。高倍率が予想される今回のコンサート、簡単に電話が繋がる訳もなく、私は翌日以降に彼女の好きなタイミングで電話をかけるといいよ、翌日ならきっと繋がりやすくなってるでしょうと助言し、その日は別れた。しかし彼女は翌日になっても一向に電話をかける気配が無かった。落選を恐れるあまり「電話をかけようとすると吐き気がする」と連絡が入り、私が代理で電話をかけることになった。こんなヘビーな当落、かけたことがない。私はゆっくりとiPhoneのボタンを押し、その時を待った。

「ご希望のチケットを、お取りすることが出来ませんでした。」

………!!!その声は非常に淡々と残酷な事実を私に伝えた。しかも機械的な女性の声で、わざわざ2回もその残酷な事実を繰り返す。ちょっと待ってくれ!考え直してみないか!今あなたが伝えてる事実は本当にそれでいいのか考え直してみないか!と、電話の向こうには誰もいないのにすがり付くような思いで、私はその機械的な音を聞いていた。「チケットをお取りすることが出来ませんでした」広い世界を見渡せば何てことない事柄だけど、彼女にとっては初めて興味を示したジャニーズの、初めて申し込んだコンサートであり、私にとってもやっと彼女がベクトルの向きを私に合わせてくれた、奇跡的な出来事だったのに。例えこのシリーズの<1>の記事が220ブックマークされようとも、毎回このシリーズの記事に星を付けて応援して下さってる方がいたとしても、そんなことはチケットの抽選結果とは全くの無関係で、全ては運なのである。今回、彼女には、運がなかったのだ。

事実を伝えたら、彼女からはこう返ってきた。
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生きろ。

悲観的になった彼女は「こんな思いするならもうライブには行かない」と生の彼らを見ることを諦め始めた。相手がジャニヲタの友達であれば「そんなこと言わずに頑張って一緒にチケット探してみようよ!もしかしたら運が味方して譲ってくれる人が見つかるかもしれないしさ!」と慰めるところであるが、私は彼女にジャニーズの煌びやかな夢溢れる世界を見せたいと思う一方で、この世界に引きずり込んで彼女をこんなに落ち込ませてしまったことに責任を感じる部分もあり、これ以上先へ引きずり込めなかった。「やっぱりあなたはこっちの世界にハマるべきじゃなかったのよ…現実世界で十分幸せになれる可能性を秘めてるからジャニーズにハマってる場合じゃないってキスマイが言ってるのよ…きっとそうよ…キスマイがあなたを守ってくれたのよ…」という未だ嘗て誰にもしたことがない切り口で彼女を慰めていた。自分で引きずり込んでおいて何言ってるんだ過ぎるが、何故か彼女もそれで納得してくれた。

出鼻をくじかれたような、これで良かったのかもしれないような、何とも言えない結果となったが、それ以降傷心した彼女はキスマイの楽曲に触れることもしばらく封印してしまった。曲を聴くと、落選したことが思い出されて苦い気持ちになるらしい。これは、<1>の時とは逆の意味での重症だ。アイドルは日常の苦しみや悲しみや痛みを癒してくれる「現実逃避」の役割を果たしてくれるが、アイドルを好きになったことで生み出された苦しみや悲しみや痛みは、逆に現実に癒してもらうしか他ない。という訳で、私は、幼なじみを誘って、




街コンに行くことにしました\(^o^)/

これが「アイドル逃避」というやつである。もうこのシリーズは崩壊の道を辿っている。よって、この回がもしかしたら最終回になるかもしれない。キスマイにハマった幼なじみは、コンサートに落選したことでモチベーションが下がり、その傷を癒す為に街コンに行く、という誰も予期しなかった結末に落ち着きそうになっている。カオス。しかしこれが人間ドキュメントの醍醐味だ。みんなが予想するジャニヲタ大成物語にならなかったことをどうかお許し願いたい。しかし現実もさほど優しいものではないということも知っている。その時はまた戻ってくるかもしれない。今後も何か伝えられることがあれば報告する。では、また。

<もしかしたら、完>