7月26日からスタートし約1ヶ月に渡って行われたNEWSのコンサートツアー「NEWS LIVE TOUR 2013 NEWS MAKES YOU HAPPY! MAKES THE WORLD HAPPIER!」が終了した。昨年のツアー「NEWS LIVE TOUR 2012 ~美しい恋にするよ~」で見せたNEWSの表情とはまた一味違う“表現者”として進化したNEWSを目撃したのでそれについて今宵は記すことにする。
まず前年度のツアー「NEWS LIVE TOUR 2012 ~美しい恋にするよ~」は本人たちも言及している通り“NEWSとファンのエネルギー合戦”と呼べる特別な空気感が存在した。コンサートツアーとしては約2年ぶり、メンバーの脱退を経て4人となった新生NEWSが初めてファンと空間を共有する機会となった。彼らはステージの上で満開の笑顔を咲かせ、そして終盤には自分たちの気持ちを涙を流しながら吐露した。NEWSとファンが笑顔と涙の交換をし、あの夜、秩父宮ラグビー場は日本で最もエモーショナルな空間となった。NEWSの物語においても極めて重要な一夜になった。
そんなある種のレジェンド公演を経た後の今回のツアー。前年同様の空気感を作るのは不可能であり、あのエネルギー量を生み出すのは難しいということは本人たちも重々承知であったと思うが、「NEWSの真価が問われる」ツアーとして私も何処か意気込んでいた。「昨年はNEWSがそこに存在していることが最大の演出だった」という声もあり、私自身もそう感じる部分は多分にあった。アイドルなんてそこに存在しているだけで充分な演出力を持っているのに、欲張りに私は彼らの力量に期待した。“新生”という効果が薄まりつつある今、フラットな状態でどう勝負をしかけてくるか興味しかなかった。
「やっぱ僕らファンタスティック!」
青空の下NEWSはそう高らかに叫んでいた。今回のツアーが始まる直前に発売されたアルバム「NEWS」に収録されている「4+FAN」の歌詞の一部である。前回のコンサートでは感情的に人間味溢れる姿を魅せてくれていたNEWSが、やっぱり自分たちはファンタスティック(幻想的)な生き物であることを強調したのである。私はその様子に酷く興奮してしまった。アイドルは我々が想像もつかない苦悩や努力を全て隠して、何でもないような顔をしてステージに立つことで、いつも私たちから遠ざかっていくのだと思っている。どんなに苦しいことがあっても毅然とした表情でステージに立つことで、その存在はどんどん我々から遠のいていく。今回のNEWSのコンサートにはもう昨年の様な感情的エネルギーを発する様子を見ることはほとんどなかった。その代わりに、彼らはより幻想的なアイドルとしての存在感を高めていた。その証拠に、NEWSの中で最も彼らの物語に依存した楽曲である「フルスイング」や「エンドレス・サマー」、今回のアルバムに収録された「HIGHER GROUND」という楽曲たちは全てファンサ曲として消化されていった。これらの楽曲はパフォーマンスを行わないことで、敢えて特別な意味を見出さないことに成功していた。昨年のコンサートの中で最も感情的に歌い込んでいたはずの「フルスイング」もあっさりと歌いあげていた。
その一方で新たに“表現者”としての成長を魅せた楽曲が後半に行われた「2人/130000000の奇跡」や「Dance in the dark」だった。前者は原曲は軽快なポップナンバーであるが、今回はテンポを遅くしてアコースティックなアレンジでしっとりと歌い上げた。これはテゴマスのコンサートでも行われていた手法だが、元々この楽曲が持っていた切ない要素がアレンジを加えることにより全面に押し出されてきて、また安定した歌唱力を持つグループであることの説得力にもなっていた。その一方で成長したダンススキルを見せつけられたのが後者の「Dance~」である。NEWSのシングル曲の振付は誰でも覚えられる、一緒に踊りたくなるキャッチーさが重視されていることが多いが、「Dance~」では中央のステージをあらゆる角度から楽しめるようフォーメーションを目まぐるしく変化させて舞っていた。その迫力は凄まじく、これまで近づいていたと思わせていた客席との距離感を一気に引き離し、パフォーマーとして堂々と存在していた。私はそれまで必死になって書き殴っていたメモを取る手が止まり、ただただ彼らに圧倒されてしまった。その“圧倒される”ということが最高の幸せだと感じられた。
他にも今回のコンサートの演出について特筆しておきたい点は沢山ある。また彼らにはまだまだ伸びしろがあると感じられる点も沢山ある。ひとまず「真価が問われる」等と厳しい目を向けて期待していたコンサートにいとも簡単に圧倒されてしまったという事実をここに書き記しておきたい。まだまだここは通過点でしかなく、9月7日には4人で初めての東京ドーム公演を迎える。「やっぱ僕らファンタスティック!」と“アイドルNEWS”であることを再提示した今回のコンサートから、次はどんな展開を見せてくれるのか。10周年を迎える彼らに、今、夢中にならないと勿体無い。