
グループ結成から半年以上、ようやくKEY TO LITのお目覚めだ。阿鼻叫喚のジュニアグループ大組閣があったのは今年の2月。4月にACEes、6月にB&ZAI、がそれぞれ初めてのライブを行っていたが、KEY TO LIT(以下キテレツ)はメンバーの個人舞台や怪我の治療などによる調整も影響してか一番遅く9月20日にようやく初めてのライブの幕が開けた。組閣後即ライブの準備に入ったであろうACEes(あの短期間でチームビルディングしてまだ気持ちの整理がついていないファンの前に立ったこと本当にすごい)に比べると、彼らには十分な準備期間があり、グループとしての方向性を自分たちでしっかり話し合ったうえでこのライブを作り上げていることが分かる完成度でめちゃくちゃに良かった。まだツアーは始まったばかりだが、一旦初日を観た感想をここに記しておく。
「キテレツ」を定義するオープニング
グループ名発表時に「KEY TO LIT」と書いて「キテレツ」と読むだと?!?!と知った人全員が草を生やしインターネット上に大草原が広がったが、半年もするとその響きに慣れてしまうもので「キテレツ」と呼ぶことにほとんど違和感を感じなくなってしまっていた。しかし彼らはこのファーストコンサートにおいて改めて自分たちのグループ名の意味と向き合ったことがよく分かる登場シーンだった。彼らは「奇天烈」という漢字の「天」の字の上に乗っかって登場したのだ。「KEY TO LIT」も「キテレツ」も見慣れた文字列になってきていたが、「奇天烈」と漢字表記にすることによって、この言葉の持つ奇妙で不思議という意味合いをもう一度認識することができる。オレンジをベースにして紫赤水色などの色が差し込まれたゴージャスだけど風変わりな色の組み合わせの衣装を着て登場したとき、「かっこいい」とか「かわいい」の軸では語れない、何とも形容し難い凄まじいオーラを放って登場した。私はアイドルのライブでグループ名の文字の上に乗って登場するオープニングが大好物なのだが、まさにそんなスタートでこのライブはきっと良いものが観れるぞとオープニングで確信した。
STARTOにおける平成レトロなセットリスト
当たり前だがファーストコンサートを行う彼らにオリジナル楽曲だけでセットリストを組むことはできない。デビュー組は自分たちの楽曲(主にそのツアー前にリリースするアルバム曲と既存曲を組み合わせることが多いが選択肢は多くても数百曲)、ジュニアは先輩方の膨大な歴代楽曲の中からセットリストを組むことができる訳で、オリジナル楽曲がない寂しさの代わりに、無数にある選択肢の中から選曲でき無限の可能性が広がる。先輩たちの楽曲の持つ力を借りて、如何様にでも世界観を創り上げられる。自分だったらその選択肢の多さに頭を抱えてしまいそうなくらいだが、キテレツが選んだ楽曲には意図的にそうしているのではないかと思うような仕掛けがあった。それが「平成楽曲への選曲集中」である。今回キテレツが披露した楽曲は全部で34曲。その内8曲は令和以降に発表された先輩の楽曲で、残りの26曲は平成に発表された曲である。世の中が平成レトロブームの中、キテレツは「STARTOにおける平成レトロ」を体現しているのか?!と思うほど、平成楽曲が多かった。そんな中でも彼らが特に意識していると感じたのは、嵐とSMAPの楽曲の多さである。嵐が9曲、SMAPが5曲。嵐については「嵐メドレー」のコーナーがあり、来年活動終了する嵐へのリスペクトが込められていた。これは過去のHiHi Jetsのセットリストでも感じたことだが、やはりSMAP・嵐の超国民的スターの位置まで駆け上がりたいという意志を示しているように感じられるし、実際に初日の最後の挨拶で大昇くんがデビューは絶対にするとして国立競技場に行きたいという夢を語っていたところにも通ずる。5人組であること、それぞれ個性的なメンバーが揃っていること、ライブパフォーマンスでしっかり魅了すること、そんなスターになるための条件を彼らなりに分析してセットリストを組んだ結果、平成を駆け抜けた先輩方の楽曲にコミットしているのではないかと感じられた。
才能の多様性を感じられるメンバー構成
2月の組閣時は既存の3組のメンバーにプラスアルファをシャッフルさせたのみで、限られた選択肢の中でグループを組んだという印象があったのだが、改めてキテレツのライブパフォーマンスを見るとアイドルに必要な才能を持ったメンバーでバランス良く構成されているなと感じる。まずメインボーカルを任せられる人材が2人もいるところがアツい。大昇くんと瑞稀くんは年初のSHOWbizで何十人というジュニアの中でも歌唱メンバーとして中心にいた存在で、その二人がそのまま同じグループの中にいるボーカルの安心感。嵐で大野さんが歌っていたようなパートを大昇くんが歌っていて「上手い!」と感じたかと思えば、まだその後ろに瑞稀くんが控えていたり、またその逆も然りだし、二人のハモリも良くて、メインボーカルが厚い安心感がある。そこに自身でリリックもかけてしまうラッパー猪狩くんもいる訳で、言葉でキテレツが何たるかを表現することもできるし、グループの野心をラップに乗せて届けることもできる。またコンサート演出を考えるにあたってもグループのブレインとして動ける人である。そこにアーティストとして美的センスを持ちアイドルとしてのストイックさも兼ね備える嶺亜くんもいる。スキルの高さだけで勝負をし過ぎるとアイドルっぽさが失われていくが、嶺亜くんの存在がキテレツのアイドルらしさを守っている。そしてダンスとドラムができる大光くん。キテレツが結成されたとき、私は大光くんの解像度が一番低かったのでどんなアイドル性を持っているのだろうと思っていたけれど、現時点彼がこのグループにおけるキーパーソンなのではないかと思っている。見られ方を真面目に戦略的に考えるメンバーが多い中で、大光くんはピュアに今という時間を楽しんで生きている印象があり、その存在が予定調和を崩して他のメンバーの新たな表情を引き出してくれている気がする。昨今「アイドルグループの仲の良さ」は売れる条件の一つになってきていると感じるが、大光くんのメンバーへの愛情表現がそこに繋がってくるかもしれないと勝手に期待を寄せている。今回はソロを披露しなかったが、ソロパフォーマンスをやり始めるとまたメンバーの個性の豊かさを感じられそうで今から楽しみである。
という訳でひとまず初日に2公演を見た感想としてここまでを記しておく。オープニングのジョーカーの演出や、見せ場となるSMAP楽曲の演出、SNS拡散禁止楽曲の話など、細かい演出についても触れたいが、私自身もまだ解釈しきれていないところもあるし、ここからまた少しずつ演出の意味が明かされていく可能性もあるため、SNSでファンの考察と共にツアー期間中楽しみ続けたい。そして平成からのオタクはぜひキテレツのライブを見に行って、セットリストで青春を想い出すと共にメンバーの才能を浴びてみて欲しい。キテレツのファーストライブツアーを見逃すな!あなたも目撃者になってくれ!(迫真)