『バチェラー6』は“原点回帰”できたか 『バチェラー・ジャパン シーズン6』Episode8-9

※この記事は『バチェラー・ジャパン シーズン6』Episode8-9のネタバレを含みます

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遂に完結した。遂に、と書いたがバチェラーは3週間で配信しきるので、あっという間ではあるものの、8話分、時間にすると10時間以上の内容を観たことを思うと、「遂に」感はある。推していた辻本さんは前回落ちてしまっていたので、最後に選ばれるのがどちらでも大きな落胆はないと思っていたが、それでも石森さんが最後に選ばれたことを思うと、元々知り合いというカードはこの闘いにおいて強いカードだったのではないかと思う。どのような形で出会っていたかは詳細には語られていないが、バチェラーの実家飲みに参加したことがあるくらいなので、おそらく遊ぶ界隈が近く交友関係も似ていたのではないかと思う。普通に人と出会う場合も、どこの馬の骨か分からない人と歩みを進めるよりも、身元がはっきり分かっていて共通の知り合いがいる方が安心感が強く歩みを進めやすいというパターンは大いにある。そしてバチェラーのような立場のある人は、それ相応の家柄や経験の持ち主を選びたいという気持ちもきっとある。そういった肩書きや纏う生活感で優劣がつかないように、バチェラーの世界は全員が煌びやかな衣装を纏うよう仕組まれていたが、「バチェラーでしか出会わなかったであろう二人が結ばれる!」というドリームのある結末にならなかったのはやや残念であり、でもとてもリアルだとも思う。夢を見させるためにやっているんじゃない。これが紛れもない現実なんだ。

最後に選ばれたのは石森さんだったが、バチェラー6において人間的な成長を見せてくれた主人公は小田さんだったと思う。序盤では周りの女性陣をライバル視していたが、両親の前で「最初はみんなのことライバルだと思ってたけどみんながいたから頑張れた」「常に周りをライバル視してきたじゃん、みゆがそんな感情になるなんてすごい」とピュアな表情で語っている小田さんはとっても愛らしかった。韓国の練習生としてデビューを目指して闘ってきた中で周りの仲間は常にライバルだと思って過ごしてきたことが伺えるエピソードで、誰かを好きになることでその尖った感情が和らいでいく様を見ると、バチェラー6のヒロインは彼女だったなと思う。ファイナルローズの決断がくだる前に最後にバチェラーに伝えた言葉もとても良かった。「愛してる」から始まる愛のスピーチは、過去のバチェラーシリーズの中でも一番決まっていた。こういう場面で、まるでドラマや映画の世界を生きているかのようにバチっと決まる台詞が出せることも小田さんの強みだったので、大事な場面でいかに決められるかという能力においては、ぶっち切りの1位だったように思う。

一方で選ばれた石森さんは、他の女性陣に比べると戦略やキャラクター性がずっと見えづらかった。女性陣の中には、バチェラーと会える時間は短いので、ここでこのカードを切ろうと考えてきたんだろうなと思う戦略が垣間見えたが、石森さんは緩急がそこまでなくずっと凪を漂っているような人だなと思っていた。最後にバチェラーの好きなところを書いてきて伝えていたが、それもこれが会心の一撃だと思って繰り出しているような圧を感じさせず、ナチュラルトーンがブレなかった。結果、他の人と比較すると捉えどころのない女性のように映っていたが、選ぶ側からすると「これでどうだ!」と大きい球を投げられるよりも、ずっと軽いキャッチボールを続けている方が心地よいのかもしれないなどと思った。そして序盤と比較するとどんどん綺麗になっていったように感じられ、最後の白のドレス姿はその場に相応しい美しさだった。

何はともあれ今回の私の注目ポイントは、「バチェラー6はバチェラーを再定義できるか?」だったので、その点においては指原さんの言葉をお借りすると「ザ・バチェラー」を見られて目的達成のように個人的には感じている。参加女性たちが途中でバチェラーに対する恋心を抱けなくなり目が覚めてしまうような場面が発生せず、全員が前向きにバチェラーに恋をするという構図を作り出せていて原点回帰の回になったと思っている。そして女性陣がライバルでありながらも、女性同士で嫌なマウントを取り合うことがなく、焦燥感からトラブルを起こしたりすることもなく、そういった問題が起こらないようなメンバーで構成されていたこともとても良かった。バチェラーを巡ってバチバチに闘う場面があるのもエンタメとしては面白いのだけれど、それに視聴者が過剰反応してしまうことも考えられるので、今回の人選は令和的でスマートだった。それもこれもバチェラーである久次米さんを映し出した鏡でもあると思っているので、久次米さんのバチェラーとしての振る舞いもまたスマートだったと感じている。『バチェラー6』が後世に残る神回かというとそこまで視聴者を惹きつける物語が爆誕したとは思っていないが、これまでのシリーズが続いてきた中で、バチェラーをあるべき場所に戻してくれたという意味では、代表的な回になったのではないかと思っている。3週間、楽しい時間をありがとうございました!