『HiHi Jets Arena Tour 2024 BINGO』@ぴあアリーナMM


会社の後輩に誘ってもらってHiHi Jetsのライブを初めて見に行った。私はJr.を応援する気概が足りない人間で、デビューという安定を求めたいし、ある程度の年齢を重ねてアイドルとして生きていく覚悟の決まったアイドルを応援したい欲望があり、今まで積極的にJr.は見て来なかった。とは言え自分が最初に触れたSTARTOタレントは、当時Jr.の期間限定ユニットだった「☆☆I★N★G★進行形」で、Jr.だけが纏うことができる若さや儚さや煌めきがあることも知らない訳ではない。どこかにJr.を追いかけ始めたらもう後戻りできなくなるかもしれないと自分でブレーキをかけていた部分もあると思う。それに今からJr.を追いかける気力も体力ももう無いかもしれない、Jr.を追いかけ続けられる人はすごい、あれはプロのオタクだ、などと最近も友人と話していた。なので今回見るHiHi Jetsもちょっとお邪魔します、くらいの気持ちでいた。

HiHi Jetsについての私の知識レベルはどんなものだったかと言うと、橋本涼くんや井上瑞稀くんは2009年に結成された「スノープリンス合唱団」にいたこと、髙橋くん、作間くん、猪狩くんについても、顔と名前は認識していて、髙橋くんはドラマで何度か見たことがある。猪狩くんはYouTubeのJr.チャンネルでの発言が賢かった印象があり(Youtube『ジャニーズJr.チャンネル』初回動画感想 - それは恋とか愛とかの類ではなくて)HiHi Jetsの中では一番気になる存在だった。あとはHiHi Jetsと言えばオリジナル曲「HI HI JET」があり、「君とJETなDOするLIFEなう」というキャッチーなフレーズが当時の舞台で披露され、しばらくの間ファンの間で呪文のように唱えられていた記憶がある。私もその一人だった。ミュージックステーションでもその楽曲が披露され、当時のTwitterのタイムラインは大盛り上がりした記憶がある。(正真正銘13月、君とJETなDOするLIFEなう - それは恋とか愛とかの類ではなくて)当時はまだ10代だったHiHi Jetsが成人して今どんなパフォーマンスをしているのか純粋に楽しみだった。

蓋を開けてみたらそこには最高のエンターテイメントがあった。既に多数のオリジナル曲を持っていて、自分たちの曲だけでもライブはできるはずなのに、先輩の曲も良い塩梅で散りばめられている。SMAP、KinKi Kids、嵐、赤西仁など、選ばれる楽曲はどれもちょっと懐かしくて、そして一般層に届いていた楽曲というよりかは、どちらかと言うとファンに愛されてきた楽曲が選ばれている。30代半ばの私が懐かしいと感じるのだから20代前半の彼らの青春時代の曲ではないと思うのだが、それをセレクトしてくるあたり先輩のライブの楽曲についてある程度研究されていることがよく分かる。もしかしたら会場の若いファン層にはこの楽曲のヴィンテージ感は届いていなかったかもしれないが、私の前の席にいらっしゃった私より10歳くらい年上と思われるファンの方は、どのグループの楽曲が流れてもペンライトで適切なリズム取りがされていて、「プロだ…!」と勝手ながら感動していた。特に彼らのステージ上での振る舞いも、かつてのYou&J(NEWS、関ジャニ∞、KAT-TUN)を彷彿とさせる勢いがあり、その世代に対するリスペクトも感じられ、古(いにしえ)のファンが目を覚ましてしまうセットリストだと思った。

STARTOのエンターテイメントの特徴を形容する言葉として「トンチキ」があると思うのだが、これは前社長の絶妙なセンスによるもので、デビュー曲やユニット名が「何だこれはw」と思わせるものだったり、ライブの途中で「何が始まるのw」とファンがついついツッコミたくなってしまう余白が挿入されることがある。それは時を経て今の時代にマッチしなくなっているものもあるかもしれないが、これが出てきてこそSTARTOのエンターテイメントだ、と思ってしまうところがファンの中にはあると思う。その瞬間が今回のHiHi Jetsのライブにもあり、突如として始まるフラミンゴの紹介映像がまさにそれだった。そのあと、髙橋くんと作間くんと橋本くんで、フラミンゴの格好をした楽曲を披露するのだが、きっちりとトンチキDNAまで継承されていて胸が高鳴ってしまった。

昨今の事務所はデビューの高齢化が進んでいて、昔は10代〜20代前半でのデビューが一般的だったが、最近はJr.期間が長期化してデビューが遅くなっているケースが多い。彼らも当初は事務所の色濃いDNA(トンチキに限らない)が反映されたステージを踏んでいたとしても、やがてグループが多様化するあまり他グループとの差別化が求められ、少しずつそのDNAにいろんな色が混ざっていき、自分たちだけの色を作り上げていく。またデビューした後にそういった自分たちの色を作っていく過程で、違う世界を見たくなり事務所を離れたりグループを離れたりするタレントも多い。むしろそういうケースの方が今後一般的になっていくのでは無いかと思っていたところに、継承したDNAに忠実にステージを作り上げているHiHi Jetsを見て、久しぶりに源泉に辿り着けたような気持ちになったのだった。枝分かれしていく方にばかり目が向いていたけど、ここが源泉だったのかと聖域に戻って来られたような気持ちになった。やっぱり源泉の水は気持ち良い。

ここからは各メンバーの印象。髙橋優斗くんは前社長が最後に推したタレントと言われていて、家族葬で弔辞を読んだという話を聞いていたので、かなりしっかりしているタイプなのだと思っていたが、メンバーと戯れ合う姿を見ると意外といじられる側に立っていて、ライブのタイトルに「Time is Yeah Yeah」(Time is moneyを文字っている)を考案するなど抜けている部分があって可愛かった。ソロ曲はKinKi Kidsの『kissからはじまるミステリー』でハットを被りステッキを持って踊る姿は魔法使いのようで、とてもステージ映えしていた。

橋本涼くんのソロ曲は赤西仁さんの『care』をギターで弾き語り。その細い体格からは想像できない声量で力強く歌っていて意外だった。赤西仁さんの『care』は我々世代の青春ソングとも言える曲で、懐かしさでギュッと胸が締め付けられる感覚があった。橋本くんのこれまでのソロ曲も選曲がやばい、と聞いたので調べたら、知る人ぞ知る名曲ばかりが選ばれていた。ファンも一度や二度自分がJr.だったらソロ曲で何を歌いたいか妄想をしたことがあると思うが、そのファンが考えたものを現実化しているのが橋本くんのソロだった。

作間くんは美しい容姿のとおり、身ひとつで様になるソロ曲だった。選ばれた曲は大野智さんの『TWO』。私は失礼ながら基となる大野さんのステージは存じ上げないのだけれど、華美な装飾はなく表現力のみでこなさないといけないステージだったが、作間くんの長い手足と不思議な吸引力で艶めかしく彩られていた。

井上瑞稀くんは中性的な顔立ちが幼い頃から変わっていなくて、長い前髪がまたその童顔っぷりに拍車をかけていた。『PUPPET』というソロ曲は、手足が繋がれ捕らわれた人形のような状態で「僕は笑えてますか」と問いかける歌詞があり、誰かにコントロールされるアイドルという職業の悲壮感を表現しているようにも見え、ギュッと胸が詰まった。瑞稀くんの表情の作り方がプロだった。

猪狩蒼弥くんはライブを見る前のイメージと変わらず、5人の中で私が一番気になる存在となった。数年前に感じた賢そうという印象は変わることなく、MCでこのライブのタイトルを決めるための会議の一部始終について語っていたが、話もわかりやすく、またメンバーを上手にいじりながら回していた。もうその時点で猪狩くんのことは十分気になっていたのだが、ソロ曲でピアノを弾いている姿を見て、もう十分猪狩くんの魅力を受け止めているつもりだったのに、想定以上の魅力が押し寄せてきて溺れそうになった。帰宅して「猪狩 ピアノ」で検索して、10年以上のピアノ歴があることや、ピアノを用いて曲作りもできることを知って、魅力の大洪水だった。猪狩くんが最後の挨拶で自分たちが実施する公演数が増えていることについて「着実にBuild Upしている感じがたまらなくキモチ良いっす」と言ったのを聞いて、私もたまらなく気持ち良くなってしまった。以前ドリフェスで見たBE:FIRSTのみなさんの挨拶が魂がこもった激アツ挨拶で痺れたのだが、猪狩くんにも同じような要素を感じている。でもその熱さは今しっかりと自分の信じるエンターテイメントの方向に向いているので、5人の中でそれが悪目立ちしていることはなく、むしろ一つのピースとして自然に収まっているように見える。多才なあまりもしかしたらいつか自分のやりたいことをやる、と言い出すかもしれないが、だからこそ真っ直ぐ事務所のエンターテイメントをやっている今この瞬間が貴重で大切な時間のように思える。あぁ、Jr.を追いかけるってこういうことだったのか…!と今更その気持ちの解像度が上がる。

入る前に後輩が「団扇とか必要だったらグッズの整理券あるので買っておきますよ」とわざわざ声をかけてくれたのだが、その時はまだこんな気持ちになるとは思っていなかったので、大丈夫と遠慮していたのだけれど、結果的にライブを見た後は、こんな良いものを見せてもらったのであればお金を落とさなければという気持ちになり、グッズの整理券を取って、猪狩くんの団扇を購入した。会場最終日だったのでグッズ売り場はかなり縮小化されており、今更グッズを購入しに訪れているのは私たちくらいだった。とんだ誤算!でもこれは嬉しい誤算!帰宅してYouTubeで見られるHiHi Jetsのライブ映像をひたすら再生し、それだけでは飽き足らず今DVDを手に入れようとしている。入っては辞めてを繰り返しているJr.情報局にも数年振りに入った。勢いがCrazy Accel!それくらいHiHi Jetsのライブは最高のエンターテイメントだったということをここに記しておく。

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