ジャニーズWESTの1stツアーが楽しかった3つの理由

GW中日の5月4日、ジャニーズWESTの1stツアー“パリピポ”を観てきた。彼らがデビューする前、関西ジャニーズJr.時代のコンサートを見に行って、そのキャラクターの面白さに病み付きになり、何度か舞台には足を運んでいたものの、デビュー以降のコンサートと呼ばれるものに足を運ぶのは初めてだった。前回の「ジャニーズWEST 1stコンサート 一発めぇぇぇぇぇぇぇ!」ではその巧みな話術でファンを気持ちよくさせることに長けている、という評判を聞いていただけに、私もちゃっかり気持ちよくなりにいこうとほとんど下心で足を運んでいた。きっと私の様なファンも受け入れてくれる器の大きさをジャニーズWESTは持っているのだろうと、オアシスを求めるかの様に横浜アリーナという聖地へ足を踏み入れた。

ところが、このジャニーズWESTさん、デビュー2年目、ジャニーズデビュー組の中では一番最近デビューしたばかりの末っ子、最もフレッシュなコンサートを見せてくれるかと思いきや、非常に丹念に作られたステージを見せつけられて、私の下心もすぐに引っ込む事になった。その変わりに好奇心が前のめりに飛び出して来て、予期せぬ研究対象との遭遇に興奮するしかなかった。360度ステージという難易度の高いステージ構成に果敢に挑みながらも、それを巧みに操ってしまうジャニーズWESTにひたすらにブラボーと声を挙げたい。では、実際に何がそんなに良かったというのか、厳選して3点書き記しておきたいと思う。

パリピポ

パリピポ

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①几帳面につくられたセットリスト

コンサートの善し悪しはほとんどこれで決まると言っても過言ではない「セットリスト」。自分たちの持ち曲の中から披露する約30曲程を決める作業がまず大変なのではないかと思うが、何百曲とある曲の中から決めなければならないベテランデビュー組から比べると、まだそこまで持ち曲が多くないジャニーズWESTはその苦しみはあまり無かったかもしれない。逆に言えば、その少ない持ち曲の中で綺麗な“流れ”を作らなければならない事が難しかったのではないかと思う。しかし、このセットリストの組み方が抜群に上手かった。私はジャニーズWESTの楽曲を全て把握している訳ではなかったものの、系統の似ている曲を同じブロックに集合させ、一気に観客の熱を上げている事は肌でよく感じ取れた。そして大体ジャニーズのコンサートでは前半に盛り上がる曲を披露して、中盤にダンスナンバー等で見せ場を作り、そしてまた最後にシングル曲等で再び観客と一緒に盛り上がる曲をチョイスする。ジャニーズWESTは序盤も早い段階でシングル曲をあっという間に消化してしまい、そして続けて3曲程見せ場を設けていたので、私はこのまま後半失速してしまうのではないかと心配していた。しかしながら、後半にも見せ場を数箇所用意していて、失速するどころか更なる加速を見せたので、頭が上がらなかった。この曲のブロックでは一緒に盛り上がりたい、この曲のブロックではかっこいい自分たちを見てもらいたい、という切り替えと観客への誘導が上手く、終わって振り返ってみると「この時間は何の時間だろう」と疑問に思う時間が無かったなと感じる。長年自分たちが先輩のコンサートを後ろで見て来た経験があるからか、その辺りのバランス感覚に長けているのかもしれないと思った。

②「てっぺんを獲る」という具体的な夢が語られる

アイドルを応援していると、彼らが何処を目指しているのか、彼らと同じ方向を向いていたいと思い始めるのがファン心理。しかし具体的な夢を語ることは、カッコ悪いことでもあると捉えられがちで、あまり大声で大きな夢を語ろうとはせず、心の中で密かにもしくはあまり注目を浴びない場所でこっそり語るアイドルが多い気がする。特にグループ単位でメンバー全員が同じ方向性の夢を共有している状態は珍しいのではないかと思うが、ジャニーズWESTは堂々と「てっぺんを獲る」ことを夢に掲げている。それは思うにジャニーズ事務所からデビューしている人間の多くが、関東のジャニーズJr.から上がった者ばかりで、自分たちが少数派であるからこそ、燃え上がる野心があるのではないかと思うが、そういったグループの物語を追うことはやはり楽しそうだと感じてしまう。青春の延長戦、ジャニーズWESTで始めてみようか、と思わせてくれる熱さがある。

③「かっこいい」だけでは「ダサい」と自分たちで斬ってしまう

コンサートのナビゲーターとして「パリピポくん」というキャラクターが要所要所で登場していた。前半かっこいい曲が数曲続いた後、映像でパリピポくんとメンバーが会話するシーンが映し出される。そこでかっこいいアイドル像を目指してる、というメンバーに対して、パリピポくんが「ダサい」と斬ってしまうのである。「オーディエンスは君らにそんなかっこよさは求めていない」と言い放つ訳だが、このパリピポくんに「ダサい」と言わせる事が出来るバランス感覚こそが、ジャニーズWESTの味噌だなと思った。自分たちで投げた球を自分たちで打ち返していく、こういうアクションを起こすとこういうレスポンスが返ってくるというのを全て自分たちで先回りして読んで先手を打っていく。ネガティブな反応をキャラクターに言わせる事で均衡を保っていくこのやり方には、唸るしかなかった。そしてその後、オモシロ路線に切り替えろと指示されたものの、そのオモシロ路線もアイドル業から外れ過ぎることなく、あくまでアイドル業の範疇で音楽を使ったエンターテイメントを提供し続けたところに、またジャニーズWESTのバランス感覚の良さが光っていた。


正直なところ足を運ぶまでは、これまでにリリースされたシングルのイメージもあり、関ジャニ∞の様なコントコーナーを設けたり、関西ならではの楽しませ方でおもてなしされる気満々でいた。しかし蓋を開けてみたら、関西人であるということはあまり武器にしていなくて、「正統なアイドル」としてのパフォーマンスに従事している印象が強かった。ダンスナンバー等で見せ場を数箇所つくっていたことからも、本人たちのそういう意志が強そうだということが伺える。けして「色もの」を引き受けるつもりはなく、あくまで他と対等に勝負して「てっぺんを獲る」と語っているのかと思うと、ますますジャニーズWESTの姿勢に好意を抱くしかなかった。1stツアーでこのクオリティだと、この先どんな展開が見られるのか。また毎ツアー欠かさず見に行きたいグループが増えたことが、酷く嬉しい。