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「滝沢歌舞伎 10th Anniversary」

実は10年目にして滝沢歌舞伎を見るのは初めてだった。「SHOCK」も見たし「PLAYZONE」も見たし、あと残りジャニヲタとして見ておくべきものとして私の中で残っていたのが「滝沢歌舞伎」だった。私のジャニヲタ人生はメディア露出に重点を置くタレントを応援していた時間が長く、舞台にも目を向けるようになったのはここ数年の話である。堂本光一さんや今井翼さんや滝沢秀明さんという座長を置いて、他はゲスト出演者とジャニーズJr.で構成されている舞台を見に行く機会が巡って来なかったのは、やはりジャニーズ舞台班と呼ばれるタレントにこれまで興味のベクトルが向かなかったことが大きい。今回もゲスト出演者に薮宏太さんや北山宏光さんが選ばれていなかったら、もしかしたら見送っていたかもしれないが、それは非常に勿体無い機会損失だったと見終わった今思う。

初めて見に行くにあたって、タイトルに「歌舞伎」と入っているものを何の前情報も持たずに手ぶらで見に行くのは危険かもしれないと思い、前年の「滝沢歌舞伎2014」のDVDを購入して見た。

滝沢歌舞伎2014 [DVD]

滝沢歌舞伎2014 [DVD]

そもそも私は「歌舞伎」というものを見た事がなく、テレビで流れているような表面的な「歌舞伎」のイメージしか持っていない。「滝沢歌舞伎」の深度がどれほどのものであるか比較して語る程の知識はないが、前半部分においてはこれまでに見てきたジャニーズのショーの要素が強く、そこにはとても安心する事が出来た。その一方で二幕に大幅な時間をとって行われた「義経」についてはこれが「滝沢歌舞伎」の肝であり、ブロードウェイミュージカルの影響を受けることの多いジャニーズの舞台やミュージカルの中では唯一と言っても過言ではないくらい、日本の持つ歴史の美しさを追究された作品になっていた。これまでもミュージカルや舞台の途中に和の演出が入ったものを見た事はあるが、終始一貫して和の美しさにこだわった「滝沢歌舞伎」を見た時に、自分自身が日本人だからか、和の演出に対して他とは違う興奮を覚えているように感じた。

そんな予習も含めて挑んだ「滝沢歌舞伎 10th Anniversary」。今回は8月に行われるシンガポール公演を意識されてか、2幕の「義経」が大幅にカットされ、台詞を交わすお芝居のシーンはほとんど無くなり、音楽と演出と演者の表現力で物語の世界観を出す事に成功していた。私が今回の「滝沢歌舞伎」へ足を運ぶきっかけになったのは、Kis-My-Ft2北山宏光さんがゲスト出演するからであったが、誰か一人に焦点を当てて見るのが勿体無いと思える程、1つのシーンにボリュームがあり、永遠に新橋演舞場の座席に座って、来る日も来る日もこの公演を見ていたいと思った。

前年のDVDを見た時に「義経」において、SnowManの岩本照くんが景時という悪役を演じていて、義経の敵という大役でありながら迫力満点の悪役っぷりで絶品の演技力だった訳だが、私はこの岩本くんの演技を楽しみにしていた。しかしながら、今回は薮宏太さんと北山宏光さんというゲスト出演者が二人も居る状態。義経の次に重要な役割として存在する弁慶、そして敵である景時、をこの二人で分けるものだと思い込んでいた。そうなると岩本くんの配役は、昨年よりも格下になってしまうのではないかと思っていたところ、幕が明けてみたら岩本くんは弁慶の姿で舞台に立っていたのである。身長が高い為、動くと迫力の出る岩本くんは、殺陣のシーンでその大きな体格を生かして戦い、その度に弁慶の衣装が遅れて翻るのが何とも美しかった。ゲスト出演者二人を差し置いて、弁慶に抜擢される岩本くんの最期の演技がやはり絶品だった。

ダンスについては、メディアに出ているデビュー組よりも、先輩の後ろで舞台経験を積んできたジャニーズJr.の方が圧倒的に上手かったりする。「PLAY ZONE」なんかはそれを大いに堪能出来る舞台だと思うのだが、私はその中でも昔からThey武道の山本亮太さんのちょっと荒いながらも身体に備わっている筋肉を全部利用して踊る、力強いダンスが好きだった。そして昨年Kis-My-Ft2のコンサートで見つけたSnowMan佐久間大介さんの柔らかで表現力豊かな美しいダンスにも惚れていた。今回の「滝沢歌舞伎」にはその両者が出演しているということで、同じシーンに両方が出ている場合は視点が定まらず終始目が泳いでいた。山本さんのダンスは立ち位置が端っこであろうと自分を見てくれという気迫が十分に伝わってくるダンスで、普段の無邪気なキャラクターも合間って、個性が爆発している。佐久間さんはどんな振り付けに対しても丁寧で滑らかで、正面を向いた時に少し顎を上げるような首の角度がたまらない。この二人を見ている時に、強烈にJr.のファンをやりたくなってくる。彼らが舞う姿を忠実に捉えて書き記してみたくなってくる。芸術鑑賞をした後のような高揚感がある。

パンフレットでは日本公演のみの予定と書かれていたが、2幕には滝沢さんの遊び心が含まれたローラースケートを履いての歌と踊りの場面があった。ローラースケートと言えば、Kis-My-Ft2のイメージか昔で言えば光GENJIのイメージかと思うが、どちらも巧みにスケートを操っている為に、我々がその難しさに意識を持っていった事がなかった。私自身も小学生の頃ローラースケートを持っていたが、キスマイ程は巧みに操れないが、それなりに滑れていた気がする。しかし、運動神経抜群そうに見えるジャニーズの面々が、このローラースケートに苦戦している姿を見る事が出来たのも、この「滝沢歌舞伎」の良いお土産だった。滝沢さん自身も上手くバランスを取りながら滑っていたが、普段キスマイを見ている時程の安定感はなく、薮くんに至っては、曲始まりで早々に転んで滝沢さんに笑われ、その後も生まれたての小鹿の様に震えながら立っていて、最後に「人には向き不向きがあると思います」と言っていた。そんな面々の隣でスイスイと風を切って巧みに操るKis-My-Ft2北山宏光さんは、魔法使いか何かに見えるレベルで、普段安定した滑りを見せているキスマイのこれまでの努力の結晶を、相対的に知ることになった。

当初最も楽しみにしていた北山さんの印象はと言えば、普段グループの最年長だからということでまとめ役に入る事の多い北山さんだが、滝沢さんという先輩の隣で普段とは少し違う表情を見る事が出来た。最も好きだったシーンは、北山さんが大きな筆を持って巨大な半紙に文字を書いていく「書道」で、キスマイBUSAIKU!?等では「チャラい」というイメージが付いている北山さんの、実は硬派な特技としてある「書道」が私は好きである。小柄な北山さんが大きな筆を持って一生懸命墨を落としていく姿はとても愛らしく、しかし力のこもった腕には鍛えられた筋肉の筋が入り、集中した表情には緊張感が走る。平面に書き記している北山さんの様子を、客席からずっと眺めている事が出来るが、どのような文字が出来上がっているかについては、こちらは最後まで知る事が出来ない。普通の半紙に筆を乗せるのとは訳が違うパフォーマンスの中で、北山さんはどんな字を書き上げるのか、出来上がった「絆」という文字を見た時に、自分の顔よりも大きな筆を操っていたとは思えない美しさにハッと息を呑んだ。私も小学生の頃「書道」を習っていた身。筆で書いた文字には、人それぞれその人にしか出せないセンスが出て来る。北山さんの文字は、力強さの中に一画一画のバランスが緻密に計算されたセンスが光る。2幕の冒頭に行われたこの「書道」のパフォーマンスは、北山さんならではのパフォーマンスだった。

最後に滝沢さんについても記しておきたい。私は以前滝沢さんのソロコンサートに足を運んだ時に、その楽しさの虜になったことがある。自分自身を魅せることの上手さもさる事ながら、バックについているジャニーズJr.の使い方の上手さに定評がある。パンフレットに書いてあったが、来ているお客さん必ずしも全員が自分だけを見に来ている訳ではない、見に来ている方全員に満足して帰って欲しいから、という理由で滝沢さんはジャニーズJr.にも多くの見せ場を作る。それは自分自身が先輩にそうして貰ったからという思いもあるかと思うが、滝沢さんの作るステージを見て私がJr.のファンをやってみたいと思ってしまうのは、滝沢さんに自分のステージをJr.の成長の場に出来る寛大さがあるからだと思う。自分自身がやった方がより良いものを見せられるという事を分かっていながら、後輩の失敗のリスクを背負っても尚後輩にチャンスを与えられる滝沢さんは、敢えて私が取り上げるまでもなくジャニヲタにとっては周知の事実であるが、改めて噛み締めたい程かっこいい。相方の今井翼さんが、アメリカの振付師と共に「PLAYZONE」というショーをつくり、滝沢さんが日本の和の心を大切にした「滝沢歌舞伎」というショーをつくっている、このタッキー&翼のバランスの取れた状態が奇跡の様だなとも思う。

またジャニーズを好きになってしまった。これまで何故触れて来なかったのかという後悔も勿論あるが、「滝沢歌舞伎」の10周年に滑り込み、その魅力を知る事が出来て良かった。まだまだジャニーズにはきっと私の体験していない興奮がある。そう思わされた「滝沢歌舞伎」だった。