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第38回日本アカデミー賞 最優秀主演男優賞・最優秀助演男優賞

という栄えある賞を、昨夜岡田准一さんが受賞した。大河ドラマで主役を演じるにあたってとても綺麗に剃り落としていた髪の毛は、初の紅白歌合戦出場時ですら鬘を被って出場していたが、今宵ばかりは短いながらに久々の地毛で姿を見せた。今回のノミネート作品である「永遠の0」の撮影時にも特殊メイクに頼ることなく自身の髪の毛を剃り坊主頭で撮影に挑んでいたが、ここ数年で2度も頭を丸めてしまう俳優としての気概に我々は恐れ入るしかない。スクリーンに映し出される人物のリアリティを追究する為に、リアルな自分の姿を犠牲にする。“髪の毛を剃り落とす”という事にそんな残酷さを見出してしまうのは、岡田准一さんがアイドルとしての側面も持っていて、また私自身がその側面を愛しすぎているからかもしれない。短く伸びた髪の毛は、それだけで岡田さんのこの世界に懸けてきた想いを象徴している様だった。

こんなタイトルでブログを書いておきながら、私は映画についてとても明るいとは言えない。真剣に日本アカデミー賞を見たのは昨夜が初めてであり、今年のノミネート作品のほとんどを見ていなかった。日本におけるこのアカデミー賞の持つ意味がどれ程のものであるか、また岡田さんが出演した作品「永遠の0」「蜩ノ記」以外の作品にどんな感動が潜んでいたのかも知らず、ただ昨年「永遠の0」が高い評価を受けていたであろう事実だけを信じながら、岡田さんが最も栄えある賞を手に入れることを息を呑んで見守っていた。

岡田さんはまず「最優秀助演男優賞」で名前を呼ばれた。アカデミー賞に明るくない私なので、岡田さんが「最優秀主演男優賞」を取るならば、ここは他の方に譲られるものだとばかり考えていた。W受賞という発想は毛頭なかった。実際に今回のW受賞は男性初の快挙だったのでその読みはあながち間違っていなかったと言えるが、“助演”で名前を呼ばれた時、一瞬動揺した。テレビは岡田さんの姿を映し出し、壇上に上がってマイクの前に立った岡田さんは暫くそこで立ち尽くしていた。これから発する言葉を頭の中で絞り出している様で、頭に手を当てながら数秒間黙り込んだ。動揺していた私にはその間が永遠に続く様に感じられた。喋りだした岡田さんの声は、喉の奥の方で震えている様だった。普段の岡田さんの声は、低くしっとりと濡れていて優しくその空間を包み込んでいく様だが、壇上での岡田さんの声はこれまで聞いたことのない程不安定で壊れそうだった。しかしその声で発される言葉は、喜びに満ちていてこの振動はけして私の恐れていたものではないと悟った。これまでにも自分の実力が評価されて来た場面は沢山あっただろうけれど、改めて今日この場で名前の付いた評価を受けることは、岡田さんの声を震わす程大きな出来事だったことを実感したシーンだった。

そしてその後「最優秀主演男優賞」でも名前を呼ばれた。先程とは打って変わって「ありがとうございます」と力強い声でマイクに向かった。その瞬間に私はとんでもない人を好きになってしまったのだと気付く。アイドルが好きだから、アイドルになる為に生まれてきたアイドルを天職としたタレントにこれまで目を向けていたが、そちらを注視する一方で気になり始めたのが岡田さんだった。アイドルと俳優業をバランス良く両立させながらも、俳優一本で取り組んでいる人々と対等に闘っていく。ジャニーズであるということはハンデであると捉え、普通の人の何倍もの努力をしていかなければならないと岡田さんは以前に語っていた。私はそれまで世間一般的に他の俳優とほぼ同じカテゴリーに入れられ、ミーハーに群がられている岡田准一さんに対する興味がとても薄かった。何なら敢えて避けて来たと言っても過言ではない。これまで岡田さんの出演作品を驚く程見て来なかった。それは他の人と同じ温度でミーハーに群がるくらいならば敢えて群がらない選択をしたがった昔の私の天邪鬼な性質がそうしていたのだと思う。けれども大衆に認知されていく人ほど深く掘り下げる面白みがあるのではないか、と思ったことがきっかけで岡田さんに焦点を合わせることにしたのだった。自分が焦点を合わせたタイミングで、大河ドラマの主演・日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞&助演男優賞のW受賞を決める等、岡田さんの俳優人生での重要な節目に出くわす形となり、その度に私は自分が決断したことでありながら少し怯んでしまうのだった。私は今日本の頂点に立った俳優を好きになってしまったのだと。

嬉しい、等と何もしていない私が言うのはおかしく聞こえるかもしれないが、今自分が焦点を合わせて見ている人が嬉しいと感じた出来事は、私にとっても紛れもなく「嬉しい」ことであり、そこから勝手に勇気も希望も貰って行く。純粋に「明日から私も頑張ろう」と思えた。こんなに単純で良いのだろうかと思うほど、純粋に明日からの活力が湧いた。努力が認められた人の姿にはそれだけの説得力があり、私も私の場所で出来る何かをしていこうと、何処かのドラマの主人公が言ってそうなことを真面目に思った。岡田さんは次の映画の撮影で来月から命懸けのエベレスト登山に挑むらしい。今回受けた評価がそのまま次回作のハードルとなり、そこにエベレスト登山を持ってくる岡田さんは何処までもストイックな人だ。エベレストを制覇したらその内宇宙にでも行くのだろうか。岡田さんの終着点は何処なのか。まだまだ長く生きられるであろう岡田さんの俳優人生にこれからも勝手に勇気と希望を貰うつもりでいる。