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「Quick Japan vol.117 吉高由里子」が読み応え抜群だった話

休日に特に目的もなく化粧もせずにふらふらと本屋に向かうのが癖になっている。休日に限らずとも平日にも仕事帰りにふらふらと立ち寄るので、週に5日くらいは本屋に顔を出していることになる訳だが、並んでいる雑誌のコピーや文庫の帯を順番に眺めながらピンと来たものを手に取り、予定にない買い物をするのが好きだ。今日はその宝探し中に「Quick Japan」と目が合った。

クイック・ジャパン 117

クイック・ジャパン 117

今回の特集・表紙は吉高由里子さんだった。私が一番最近見た吉高さんと言えば、紅白歌合戦の司会者発表の場で、緊張しながらも独特の雰囲気を手放さない吉高さんだっただろうか。「吉高由里子 二人三脚の足跡」というサブタイトルの背後で愛らしい笑顔を浮かべる吉高さんは誰かと手を繋いでいる。相手は黒い服を着ているが唯一見えている手からは性別すら判断出来ない。吉高さんと「二人三脚」を組んでいる者の正体が気になり、その場でパラパラとページを捲ってみた。

「ゆりことくみこの卒業アルバム」というタイトルで始まる巻頭の写真ページでは、吉高さんと吉高さんよりも少し年上の可愛らしい女性が楽しそうに韓国旅行をしている写真が並んでいた。まるで姉妹の様に同じ笑顔で笑っている写真を見ると、その女性と吉高さんがとても親しい間柄であることが伺える。今や朝ドラのヒロインを演じあげ日本を代表する女優となった吉高さんに、こんな心の支えとなる親友が居たんだなとほっこりしながら数々の写真を眺めていたら、次のページでその女性が吉高さんのマネージャー・加藤久美子さんだということを知る。

吉高さんのマネージャーと言えば、私は3年前にもQuick Japan Vol.98を購入した時に、そのマネージャーの吉高さんを思う気持ちに感銘を受けた記憶があった。

クイック・ジャパン98

クイック・ジャパン98

(「Quick Japan vol.98 吉高由里子仲里依紗」、同じ事務所の先輩後輩の仲良し二人が、二人旅をする企画。これもとても面白かったのでオススメ。)

 この夏で「23歳」になって、少し意識は変わってきていると思います。私としては、朝ドラのヒロインとかやらせたいんですよ。イメージが違うかもしれないけど、たくさんの人に吉高のことを知ってもらいたい。おいしいものはみんなに教えてあげて、共有したいですよね?それと同じです(笑)。みんなにも、「吉高が好き」って言わせたい!!
※「Quick Japan vol.98 吉高由里子仲里依紗」 (2011年10月8日発売)加藤久美子(吉高由里子マネージャー)インタビューより

“みんなにも「吉高が好き」って言わせたい!!”このフレーズが強烈に頭に残っていた。アイドルやタレントの周りの人のインタビューはよく目にするが、それはプロデューサーであったり衣装さんやメイクさん、又は舞台やライブの演出家の言葉を受け取ることが多く、最も主役のそばにいる「マネージャー」の言葉って意外と目にする機会がない。勿論「マネージャー」が行う役割は各タレント事務所によってそれぞれだと思うが、あまり目にする機会がない分、彼らがタレントのイメージ作りの根幹を担っていることを、視る側は忘れていることが多い。

吉高さんのマネージャーは、「吉高由里子を売り出したのは、加藤久美子だ」と業界関係者が口を揃えて言う程の有能マネージャーだったそうだ。吉高さんの担当マネージャーになった加藤さんは、まず吉高さんのデビュー作品『紀子の食卓』を観て一発で「この人は売れる」と確信し、尋常じゃないプロモーションをした、と当誌で語っている。色んなプロデューサーに「絶対売れるから、今のうち仕事をしておきませんか」「騙されたと思って『紀子の食卓』観てください!」と自腹で購入したDVDを色んな人に渡し、新人で有名でなかった吉高さんに『蛇にピアス』のオーディションを受けさせ、その後はとにかくテレビに連続で出させて知名度を上げる挑戦を行い、『蛇にピアス』の次に吉高由里子の代表作を作りたいと思っていた時期に、朝ドラの話が舞い込んだ、と語っている。

吉高由里子さんという女優は誰が見てもはっきりと「他との差」を実感してしまう特別な雰囲気を醸し出す女優さんであるからに、その才能が数々の仕事を導いていた、という印象を勝手に抱いていたが、その隣には大きな愛情を持って吉高由里子のイメージづくりに励んできたマネージャーが居たのだ。“みんなにも「吉高が好き」って言わせたい!”という言葉に私が酷く感銘を受けたのは、その感情はファンが持つそれとリンクするからだった。私自身も私が好きなアイドルやタレントのことを広く知ってもらってみんなにも好きって言わせたい、という気持ちは多分にある。けれども我々はファンである以上、彼ら彼女たちの本当のイメージ操作をすることは出来ず、「商品を好きなように加工して出荷する」作業ではなく「加工されて出荷されてきた商品を如何にして受け入れ拡散するか」という作業をしている。私たちファンは彼らの仕事を取って来て充実させる能力はない。だからこそ、偶然担当になったタレントに対して、これほどの気概でタレントへの愛情を注ぐマネージャーの加藤さんが、頼もしくて羨ましかった。

しかしそんな加藤さんも来年から吉高さんのマネージャーを離れるのだという。仕事自体を辞めて実家に戻り、第二の人生を歩むことに決めたそうだ。その為、今回のQuick Japan吉高由里子さんのデビュー10周年特別企画ではあるものの、そのほとんどは吉高由里子さん本人をクローズアップしたものではなく、あくまで「吉高由里子さんと加藤久美子さんの関係性」に注目したものになっている。その量、およそ100ページに及ぶ。女優とマネージャー、という関係性を越えた絆がそこにあり、「仕事仲間」であり「親友」でもある二人の姿が堪能出来た。吉高さんはこれからまた新しいマネージャーと一緒に、新しい吉高由里子像を探しに行くことになる。2014年をひとつの区切りとして、吉高さんがどう変わっていくのか、未来が楽しみになる一冊だった。