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ミュージカル「BROADWAY MUSICAL ON THE TOWN」

V6 現場

初めてミュージカルを見たのは小学生の時だった。劇団四季の高知公演のチケットを母が取ってくれて見に行った記憶がある。母が特別ミュージカル好きだったという訳ではなく、幼い私に当時から色んなものを見せておこうという考えでチケットを取ったらしいが、私は一夜にしてミュージカルの虜になった。元々通っていたピアノ教室で歌も一緒に習ったり、ダンス教室に通っていたこともあって、歌とダンスとお芝居が融合された世界に当時の私は目を輝かせた。見終わった後、また行きたい、と母に強請ったらしく、次に劇団四季の高知公演があった時には一人で見に行った記憶がある。それが私とミュージカルとの出会いだった。

ジャニーズの舞台には歌を歌うものもありその形式はさながらミュージカルではあるが、チケットにきっちりと「MUSICAL」と記載されているものを見に行くのは初めてだった。しかも「MUSICAL」は「MUSICAL」であっても「BROADWAY MUSICAL」である。ジャニーさんが憧れて日本でもこんな舞台を魅せたいと思いジャニーズをつくったと言われる「BROADWAY MUSICAL」である。歴史あるブロードウェイミュージカルのリバイバル公演というハードルの高さと、トニセン3人でそれに挑むという夢の様な空間に、見る前から感情が昂ぶっていた。

幕が開けたらトニセン3人がお揃いの水兵さんの衣装を着て並んで立っているという事実にまず感動するしかなかった。コンサートやテレビ番組で全員集合することは当たり前だが、デビューからもう数十年、Jr.の時から数えるともっと一緒にいた人たちが、改めて同じ舞台に立つ為に、毎日顔を合わせて、毎日稽古をしてきて、公演期間中は毎日一緒にお芝居をする、そんな単純なことがどうしようもなく愛おしかった。坂本と長野と井ノ原として顔を合わすのではなく、ゲイビーとチップとオジーとして同じ3時間を生きる。私たちはトニセンという集合体を見せてもらうだけでも幸せなのに、その前提の上で芝居をするトニセンを見せてもらう、そんな儚い奇跡に2014年、遭遇してしまったのだ(ガッツポーズ)。

ミュージカルはアメリカナイズされていて、と書こうとしたがそもそもアメリカのものであり、どちらかと言えば日本で演るにあたってジャパナイズしなかった、と言った方が正しいか。年代も当時のまま、男女のスキンシップレベルもアメリカのまま、周りくどい言い方をしないのであれば、驚く程チューしてた、という感想が一番手前に出てきた。24時間だけニューヨークで遊ぶことを許された3人の水兵、その中で坂本さん演じるゲイビーが、ミスサブウェイの写真に一目惚れし、3人で彼女を探す旅に出る。長野さん演じるチップと、井ノ原さん演じるオジーは、その過程で出会った女性たちと恋に落ちるのだが、数え切れない程の唇コミュニケーションを繰り返すので、一瞬のまばたきすらも許されなかった。じっとりとその様子を双眼鏡越しに眺め、じっとりと胸の奥の方に何かを蓄えた。

この「ON THE TOWN」のサブタイトル的にタイトルの隣に並んだ文句が「この街と、君に恋した24時間」であったが、時間の儚さがこの物語の軸にある。彼らは24時間しかニューヨークに滞在することが出来ず、24時間の内に出会って恋に落ち別れを告げなければならない。また、ゲイビーが恋した相手、ミスサブウェイのアイビィ、彼女もまた1ヶ月限定でミスサブウェイに選ばれている。もしも3人がニューヨークを訪れたのが翌月だったら、電車に張り出されたミスサブウェイのポスターは彼女ではなかった。全ての出会いは偶然であり、その偶然に伴う切なさと偶然を必然に変えていく高揚感が愉しかった。私たちが青山劇場の座席に座る3時間もまた限られた時間であり、演者と時間を共有しているということを改めて感じさせられる作品だった。

V6の20周年イヤーが目の前に迫って来ているこのタイミングで、トニセン3人で一つの作品に取り組む姿を見ることが出来たのは至高だったなと思う。彼らの歴史の何十分の1、いや何百分の、何千分の1しか知り得ていないけれど、今も尚3人で同じ方向を向いた仕事が出来ることに痺れた。次は6人揃った空間に足を踏み入れることが出来るであろう未来に、今からわくわくしている。