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街コンへ行って来たのでジャニヲタらしくコンレポを書いた

婚活

「ご希望のチケットを、お取りすることが出来ませんでした」
きっかけはコンサートチケットの落選だった。会えると思っていた生のジャニーズアイドルに会えないことが分かって傷心した心の隙間と、行く予定で捻出していた時間とお金という物理的なものの隙間に、私たちは「街コン」という現場を入れ込むことにした。

以前からジャニーズを好きだと言うと彼らを恋愛対象として見ているのだろうと安易な発想で周りに誤解されることが多く、そうじゃないんだと否定しようにも事実上恋人がいないことにはその否定にはあまり説得力がなかった。ジャニーズと現実の恋愛を並列に並べて語ることは、食べ物と動物を同じ土俵にあげて「カレーライスと犬、どっちが好き?」という質問に答えるくらい性質の違うものを並べているような気もするし、でもその一方で私という人間から作り出される「好き」という感情の中では限りなく近い性質を持ち合わせているような気もして、自分の中でもすっきりしないところがあった。

男性と出会う機会は年々減少傾向にあったので、新しい場所に飛び込んでみたら何かが変わるかもしれないという冒険心で「街コン」に繰り出してみた。

1店目:『私は井ノ原快彦になるんだ』

「街コン」には様々な形式があるらしいが、今回私が参加した「街コン」は男女各250人が参加し全13店舗を好き好きに回る形式だった。パーティー形式であれば話しかけられたり話しかけたりというお互いに勇気のいる作業をしなければならないらしいが、今回の場合はお店に入ってしまえば、後はスタッフの指示に従って席に着き、その席にいた男性と話をして、自分たちの好きなタイミングでまた次の店舗に移っていいというものだった。だからある意味、「運」が一番物を言うパターンである。

学生の頃は誰とでも喋るタイプだったが、社会人になってから人見知りが発症した私は、まずトーク面で不安があった。書く作業であまり困ったことはないが、それを整理して喋るという作業は幾分苦手だった。就職活動でもエントリーシートや筆記は通過するが、面接では良く落ちた。「街コン」前日にはV6井ノ原快彦さんのようなトークスキルを身に付けるために、「あさイチ」を見て井ノ原さんのトーク力を目と耳に焼き付けて、私は井ノ原快彦だ、私は井ノ原快彦になれる、私は井ノ原快彦になるんだ、と念じながら当日を迎えた。

すると驚くことに、私は当日そのテーブルのMCを回していたのである。同行していた幼なじみは、私を遥かに超える人見知りであり、対面した男性2人も初めての街コン参加ということで緊張していた。これは、絶好のチャンス!私の中で眠っていた井ノ原性が開花し、私はその席で盛り上げ役MVPを獲得してもいいくらいの口数で喋ってきた。自分はコミュ障じゃなかったんだという自信が少しついた。男性側からも「話しやすかった」というお褒めの言葉を頂きながら、次の店舗へ移動した。

2店目:『エヴァを語る兄弟に出会う』

1店目を後にして2店目に向かうと、そこで待っていたのは風貌の違う男性2人だった。今回の街コンは男女どちらも2人1組で参加するという決まりがあり、どの組も大体似たようなキャラクターの友達同士で参加していた。「お二人はどういうご関係なんですか」等という質問は特別な質問ではなく、恐らくどこのテーブルでも繰り広げられていたであろう、街コンの会話定型文である。1店目で自分の井ノ原性に気づいた私は、2店目でも迷わず自分から質問を繰り出した。

「兄弟なんですよ」とひとりが答えた。「ええっ、本当ですか」と口に手をあてて疑うくらいビジュアルに限らず雰囲気も似ていなかった。兄は深く被っていた帽子を脱ぎ、弟はかけていた眼鏡を外して、「似てないですか」と二人で顔を寄せる様がなんだか可愛かった。兄弟で街コンだなんて自分に当てはめたら小っ恥ずかしくてしょうがないのだが、本当に仲が良いのだなぁと興味深く観察していた。

「休みの日とか何してるんですか」これも街コン会話の定型文であり、私は休みの日は基本的にHDDの整理や雑誌の切り抜きやDVD鑑賞というジャニヲタ活動がメインだが、この日は「映画鑑賞と読書」と答えることに決めていた。今年に入ってから映画は15回くらい見に行っているし、読書も普通の人よりはしていると思うので、ウソをついている訳ではない。

「僕も映画好きなんですよ、何回も見に行った映画とかありますか」と切り込まれたので、「図書館戦争を3回見ました」と回答した。こういう時複数回見に行った映画として名前を挙げても、全くジャニヲタ臭を嗅ぎつけられることのない、岡田准一というアイドルの、俳優としての一般層への浸透度の高さを実感する。

逆に相手に何回も見に行った映画はあるか問いかけたところ、エヴァ語りが始まってしまった。しまった、開けてはいけない鍵を開けてしまったらしい。正直私はエヴァには一度も触れたことがないので、出てくる単語の全てが分からなかったのだが、兄弟揃って「あそこがいいよね」なんて楽しそうに語っていて「あれは見たことない人でも見やすいのでオススメですよ」と最終的に見ることを勧められたのだが、正直それがどの作品だったのか今になっても全く思い出せない。ヲタクっぽいという意味では最も自分と同種の匂いを感じたが、残念ながらその兄弟とは早めに切り上げて次のお店に向かった。

3店目:『天使降臨』

今回の街コン、男女各250人ずつの募集ではあったが、当然ながら男女が同じ比率で集まる訳もなく、今回は男性の方が少し多かった。3店目はまさにその比率を調整するために用意されていた店舗で、机を挟んで対面に座った女性2人を、両側から男性4人が挟む、というスタイルで配置されていた。女性側から見れば一気に4人と出会えるラッキーな配置だが、男性側からしてみれば全然ラッキーではない。

しかしその席に天使は降臨したのである。私の斜め前につるつる卵肌の男性が座った。黒縁眼鏡をかけていたがその奥の瞳はとても澄んでいて私はすぐにそれに吸い込まれた。まるで芸能人みたい、とただならぬオーラを感じ取った瞬間、「でもジャニーズ事務所っぽくはないな、とは言えスターダストみたいな素朴感ともちょっと違うし、ナベプロっぽいなぁ」などと、勝手に所属芸能事務所はどこかゲームを脳内で始めてしまった。本人はただの一般人だが。

私はさっきまでの井ノ原性を70%オフに押さえて会話をした。これはけしてかわい子ぶりたかった訳ではなく、美しい者は私のような汚らわしい者と交わることなく、そのままの状態で堪能しようというジャニヲタの本能が働いたのである。しかしこういう時に限って逆側の男性から話しかけられたりするのである。すまん、今ちょっと取り込み中なんだ、と断る訳にもいかず、逆側の男性と話をしていたら、あっという間に天使は去ってしまった。

それはこの「街コン」の中で最も儚く切ない時間であった。と思うと共に、いざ天使が降臨すると言葉を失い、ただただ眺めることしか出来ない自分、それこそが最も普段の自分らしくて居心地が良かった等と思ってしまった。連絡先は聞けなかったけれども、それすらも悔しいという感情よりも、そうあるべきだったのだ、と納得してしまうくらいには、もう既に「ファン」という位置づけに落ち着いてしまっていた。私は誰かの「ファン」になる才能だけはある。

4店目:『喋る井ノ原より、喋らない岡田』

これが最後の店舗である。全部で3時間30分用意されていたが、各店舗に30分強滞在して店を移動していると、大体みんなこれぐらいの店舗数になるようだ。4店舗目の男性は、22歳の現役大学生だった。「街コン」と言えば自分たちより年上の人たちばかりが集うものだと思い込んでいたが、ここまで5組と対面してきて、25歳の自分より年上だったのは1組だけだった。「街コン」は意外と若い人たちが主体になっているイベントだったのだと実感する。

ここまで4店舗を渡り歩いてきたが、同行の幼なじみの人見知り症は全く治ることなく、むしろ悪化しているのではないかと言うほど彼女は全然男性陣に心を開くことがなかった。ここで私はまた井ノ原性の発揮である。先ほど天使との遭遇により、70%オフで節電していた分も含めてフル稼働にし、120%の井ノ原性を発揮した。しかし私が喋れば喋るほど、大学生の一人は幼なじみの方を深く掘り下げようとしていた。肉食男子という言葉が似合う程、彼はとてもガッツがあった。全然心を開く気がない幼なじみの心の鍵を無理やりにもこじ開けようとしていた。

なんだかその肉食男子が幼なじみに食いついているので、私はもう一人の大学生と残りの時間を楽しくおしゃべりし、最終的には「ええ子、見つかるとええなぁ」と声をかけそうになる程、祖母のような心で彼を見ていた。今日は井ノ原さんになったりお祖母ちゃんになったり、なかなか忙しい。しかしとても充実していた。まず、自分のコミュ障が解消されただけでも素晴らしい。

そして帰宅後、幼なじみから連絡が入る。「最後の子(肉食男子)に今度ご飯に誘われたんだけど…」アイツ、やりおるな…!と肉食男子の強引さに感動しながら、しかし朝から井ノ原性を身につけて会話を広げて来た私よりも、黙って座っている幼なじみの方が「街コン」の結果を残していて、「喋る井ノ原よりも、喋らない岡田」の法則を実感してしまい、とても切なくなってしまった。私は結婚するならイノッチがいいよ!イノッチはもう結婚してるけどな!

街コンを終えて

数字的な結果から並べると私は3人の男性と連絡先を交換して帰って来た。これは平均値と比較して多いのか少ないのか分からないが、目標は最低1人の男性と連絡先を交換する、だったので自分で定めていたラインはクリアされた。街コン自体は普段出会うことのない人たちと出会って喋れる、という点でとても楽しかった。これはジャニヲタのオフ会なんかと同じ感覚である。育った環境も年齢も違うけれど、あるひとつの共通項だけで集まって楽しく会話をする、普通の生活をしていたら絶対に出会うことの出来ないような職業の人に出会えるという点で、めちゃくちゃ楽しい。しかし街コンで出会った人たちとの共通項はあくまで「街コンに参加した」ということだけで、その後は自分で他の共通項を探して関係を維持もしくは発展していくしかない。それがとても厄介で難しい。そして3店舗目で天使に遭遇した時に実感したことだが、私は「誰かのファンになること」にとても向いているのだが、「誰かにファンになられること」はあまり向いてないらしい。連絡先を交換した男性の中に、積極的に私を知ろうとしてくれている方がありがたくいらっしゃったのだが、いまいちピンと来ず連絡を断ってしまった。これは今回に限らず昔から私の中にある性質で、「あんたそれ治さないと結婚出来ないよ」と友人によく言われることである。自分の方に向かって来た矢印を素直に受け入れることは出来ないけれど、自分の矢印はとても太く濃く発信してしまう、これが数年間ジャニヲタを続けて来た結果、私の中に生まれてしまった性質である。しかしこれがジャニヲタ全員に当てはまる訳ではないと思うので、一個人の性質として見て留めて置いて欲しい。矢印を発信し続ける人生を送りたいと考えると、私の理想の相手は「私には興味のない振りをして私のファンベクトルを受け止めてくれる人」になってしまうので、そんな奴いるかよともう一人の私が鼻で笑っている。今は鼻で笑ってられるけれど、そのうち笑うことすら出来なくなってくるので、どうしたもんかと頭を抱えている。改善方法を模索しながら、今日も“矢印を向けられるために”存在しているアイドルに、しつこく矢印を向け続けている。