NEWS結成10周年を記念してノンフィクションでお送りします

昔々あるところに9人の少年がいた。年齢も体格も性格も経験値もバラバラの9人。共通項は美しいということ、歌が歌えること、踊りが踊れること。一定条件を満たした彼らは、凸凹ながらにひとつのグループにまとめられた。各々が元々いたグループに後ろ髪を引かれながらも、彼らは全員で真っ白な衣装に身を包んで、眩い光を浴びた。未だ嘗てない程の数の視線に晒されながら、ここが自分がこれから生きる場所だと自覚した。そこには「希望」があった。それは彼らの明るい未来の象徴として、始まりの合図とされた。
目まぐるしい日々の中で、ある日1人の少年がグループを抜けた。9人は8人になった。彼は遺伝子レベルでとても歌が上手かった。グループの中でも歌唱力で先導する才能があったので、惜しまれながらグループを去った。後に彼の才能はロック界で発揮されることになろうとは、その時は知る由もなかった。8人になったグループは順調に足を進めた。歌唱力で欠けた部分を補うように、他の者の歌唱力がグンと伸びた。爽やかに人々の背中を押していく、応援ソングを歌う姿が彼らのパブリックイメージとして定着しつつあった。
一歩一歩着実に階段を昇り進めていたところに、突如2人の少年が続けてグループから離れることになった。どちらも抗うことの出来ない理由があった。1人は非常に美しい顔をしていてグループの看板となる者の中の1人だった。綺麗に型どられた容姿から繰り出される関西弁がチャーミングに輝いていた。もう1人は重要な歌唱メンバーの1人だった。陽気な性格からグループ内のスマイルメーカーとしても活躍していた。立て続けに2人のアクシデントが重なり、グループの連帯責任という名目の元に、彼らはそこで前代未聞の一時停止を余儀なくされた。一歩も前に進むことの出来ない状況は半年以上続いた。
やがて彼らは6人で再始動した。顔を上げ前を向き、星をめざした。積み上げては崩れを繰り返していた日々に終止符を打つように、6人での結束を固めた。グループが揺るぎないものとなるよう、これまで以上の経験を共有した。しかし途中で失速することになる。本人たちですらも違和感を覚える程のスピードの低下。めざした星は遠のいていく。決定打が打たれた。グループの中心にいた2人が外へ出ることになった。1人はこれまでその華やかさゆえにグループの顔として生きてきた。物語の主人公から降りて孤独な戦いを選択した。もう1人は重ねて活動を続けてきたもうひとつのグループへと旅立った。2人が去ったことにより、中心にとても大きなスペースが出来た。
残ったのは、パープルとイエローとグリーンとピンクだった。空いた大きなスペースに絶望を感じる者も多く、彼ら4人での続行は懸念された。解散という選択肢も彼らのすぐそばを通り過ぎた。それでも彼らは進み続けることを選択した。世界の端に立たされたことのある人間にしか分からない強さを抱えて、大きなスペースを埋めるように前へ進んだ。パープルは先導者に名乗り出た。ここからの道は自分が切り開いていく、頼もしい決意に他3人も賛同した。イエローはこれまでの自分たちの歴史を音楽を通して愛した。いつまでも色褪せることのないよう大切に歌を守った。グリーンは本を書いた。それが自分たちの新しい入口となるよう願いながら才能を惜しみなく発揮した。ピンクは新たにエースとなった。彼の負けず嫌いな性格はこのもたらされた試練により一層燃え上がった。彼らは大粒の涙を流した後、虹のような笑顔で笑った。あっという間に大きなスペースは消え、これまでの境遇を自分たちの付加価値として追加した。どこまでも正直で、どこまでも誠実な姿を魅せた。
つい先日4人での夢を更新した。白い衣装を着て眩い光を浴びて世界へ飛び出していった少年たちは、やがて儚く散り、それぞれ確かな青年となって東京ドームに帰ってきた。途中で幾人と夢を分けあい、最終的に4つの「希望」が残った。彼らはそれをまた器用に膨らませひとつずつ夢を更新していくのだろう。きっとこの世界の果てには見たことのない感動があると信じて。


NEWSが2013年9月15日をもって結成10周年を迎えた。彼らには嘘のような本当の物語がある。後にも先にも他のどのグループも持つことの出来ないドラマ性がある。私はこの台本でも書けない程のドラマティックな物語に酷く惚れ込んでいる。人の出入りがあることを基本的に前提としていないジャニーズグループの中で、ここまで感情が突き動かされる程の激動が今までにあっただろうか。彼らにとってこの10年はまさしく波乱万丈に違いなかっただろう。掴んでいたつもりだったものが、するすると手から滑り落ちていく、そんな経験を何度も重ねた今のメンバーは間違いなく強い。またどの時代も否定せず、「NEWS」というブランドを途中で投げ出すことなく真摯に「NEWS」と向き合い続ける姿は胸を打たれるものがある。アイドルは人々に勇気を与えるものとされ、それはアイドルの明るい表情や笑顔が織り成すものとされてきたが、彼らの場合は倒れても立ち続ける、その生き様こそが人々に勇気を与えていると感じる。手越さんは4人になってからの初めてのコンサートで泣くことを我慢していた。それは男としてステージに立つものの意地として涙を堪えていたのだった。けれども彼が涙を零す瞬間に、我々はグッと胸を掴まれていくのである。泣いてはいけないという自覚を飛び越えて溢れ出た涙は、何よりも正直な感情表現である。彼らが困難を飛び越えていく姿を見て、我々も自分を見つめ直し、同じように一歩前に進んでいけるのである。でもその一方で彼らはとてもアイドル然としているのである。こんなにも激動の現実を孕みながらパフォーマーとしては、ただひたすらに王道を進もうとしている。「やっぱ僕らファンタスティック!」等と自己言及をしながら自分たちの存在を幻想的に高めていく。対照的とも思える現実と幻想が絶妙なセンスで共存している、それが今の「NEWS」なんだと感じている。次の10年はどんな物語を刻んでいくのか、スマートな彼らが選択していくページを楽しく捲っていきたいと思う。