中土居宏宜というアイドル

まさか連続でLeadの記事を書くことになるとは思わなかった。

Leadの活動に関して大切なお知らせをさせていただきます。
メンバーの中土居宏宜ですが、本人の意向を受けて協議を重ねてまいりました結果、3月に開催いたしますファンクラブイベント「Leaders Party 10!」の最終公演をもちましてLeadを卒業することになりました。
【スタッフより】Leadの活動に関する大切なお知らせ | Leadオフィシャルブログ「Leadship」Powered by Ameba

中土居宏宜、卒業発表。前記事に「10年目に起こる奇跡もある」というタイトルを付けたが、10年目に発表される卒業もあった。私は中土居宏宜というアイドルが好きだった。Leadを“アイドル”というカテゴリーに分類するのは少し違うのかもしれない。ダンスヴォーカルグループと呼ぶのが正しいかもしれない。けれども彼だけは“アイドル”という呼び名が特別相応しかった。Leadのブログにアップされた中土居さんの文章は、画面いっぱいに文字が詰め込まれ、とても綺麗にまとまっていた。こちらが感情を述べようとしても彼の言葉に比べたら幾分軽薄なものになってしまう気がして、何も言葉が出て来なかった。彼の決意があまりに美しくて負けた気がした。

あるときからLeadというグループとしての成長に、僕だけついていくことができていないと感じるようになりました。誰もが不安を抱えながら、悩みながら、それでも踏ん張って生きている。だから自分も乗り越えなければいけないと思いながらも、才能や実力について自信を持てない日が続きました。
そんな心境としっかり向き合わなければと思い、何度も何度も自問自答を繰り返す中で、歌やダンスではなく、新たな世界でチャレンジしたいという気持ちが芽生えてきました。
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彼が抱えていた劣等感については、以前こんなインタビューがあった。

ダンスが嫌いで(笑)。ライブはもちろん好きなんですけど、みんなと制作していく過程が嫌いでした。その時期スタッフの方から、もっと練習しろよ、なんでもっとうまくならないんだってずっと言われていて。(中略)そういうこともあって、少しずつダンスが嫌いになっていったというか。その中でも、振りを作るっていうのが苦手で。でも、他のメンバーに負けてしまうようなことは言いたくなかったんですよね。
(「Lead 10th Anniversary」パンフレット)

勿論このインタビュー直後に現在はダンスが大好きだという気持ちを明かしているが、とにかく真面目な中土居さんにとって少しの劣等感ですらも自分を許すことが出来ず、今回異世界への挑戦という形でそれを昇華していくのかもしれない。

中土居さんを何故“アイドル”というカテゴリーに分類するかというと、彼の選ぶ言葉にスター性があったからである。前記事でも紹介した「僕たちを選んでくれてありがとう」に代表するように、中土居さんは人の意識を惹きつける言葉選びがとても上手い。しかもそれを狙って言ってる訳ではなく、至って真面目に語っているのだから、こちらも素直に受け止めることが出来る。私が一番好きな言葉はこれだった。メンバーの鍵本さんが怪我をしたキャストの代役で舞台に出演することになった時のブログである。

自分のことを心配してくれる存在はとてもありがたいです。
けど、不安を与えてしまうとわかっていながらも、
挑戦するのには理由があるんです。
前にも言ったことがありますが、
自分たちが苦しいことをすればするほど、
大きなレスポンスをもらうことができます。
感動やらを生み出すことができます。
それがさっき言った『その先』にあるもので、
それを生み出すことはステージに立つ人間のプライドなんです。
ひろきの爆弾発言 その152 | Leadオフィシャルブログ「Leadship」Powered by Ameba

怪我をするというリスクも含めてそれでもその先に挑戦するのがステージに立つ人間のプライドであるならば、今回は人生の方向転換というリスクも含めて挑戦するのが中土居さんのプライドなのかもしれない。私はもっとアイドルという世界の中で生きていく中土居さんの脳内から創り出される言葉を聞きたかった。Leadの持つ雰囲気の柔らかさや忍耐強さの象徴は中土居さんだと思っていた。Leadのリーダーは彼にとって天職だと思っていた。
こうしてアイドル界はまた一人逸材を失う。中土居イズムはLeadの中に強く刻まれているものと信じ、これまでの彼の功績と新たな挑戦の姿勢に賞賛の拍手で送り出したい。